【12 柳生十兵衛・第一作】

 初めてアニメーションを作り、文化祭で上映した我ら映画制作班「ILM8(育英リトルムービー、それは8ミリだけどね、の略)」が朝礼で讃められた。それほどの事をやったわけじゃない。だってどこの高校の文化祭でもやってることだ。
 が、讃められた。
 讃められれば盛り上る。翌年も我々「ILM8」は新作を発表することになった。
 念願の実写作品を目論んでいた。題材は我が郷土の英雄「国定忠治」。
 だが、時代劇はホントに金がかかる。当時伝手でTBS衣装部からタダで忠治の衣装を借りたんだけど、それ一着だけだった。貧乏な学生さんにゃそれが精一杯。しかも役者がいない。一人カタブツ君な役者志望のクラスメイトを忠治に仕立てて、あこがれの時代劇カットは撮ったんだけど、作品自体は「国定忠治」の史跡を追うという当時のNHK「日本史探訪」風にまとめた堅い作品にした。忠治カットはその挿入イメージカットにした。
 「日本侠客史・上州国定忠治」。なんちゅうタイトルじゃ。
 「国定忠治」は講談上では「英雄」とされているが、実はバリバリ「やくざ」だったという内容。
 受けなかったね。そりゃ受けない。おまけに「高校生フィルムフェスティバル」みたいなコンテストに出したら「もっと高校生らしいものを作りましょう」というコメント付きで落選した。
 去年絶賛してくれた人たちから「またアニメーションを作ってくれ」という要望が出た。
 リクエストにお答えして、翌年3作目はアニメーションに戻した。
 しかも無謀にも人形アニメを計画。それはチームで作れるということもあったからだ。
 そして15分のストーリー作品。原案と脚本は大地が書いた。監督は毎年おなじみ大地である。
 タイトルは「しあわせの国」という歯が浮くようなお話。多分昔何かで読んだ童話が元になってるのだと思うけど……。
 『ある島に住む怠け者の男の子が伝説の「しあわせの国」という遊んで暮らせる島を見つけに出掛ける。なかなか見つけ出せず憔悴してる少年の前に神様が現れる。神様は「しあわせの国」を見つけ出すという少年の願いをかなえるのと引き換えに、今彼の持ってる一番大事なものを貰うという。少年は「しあわせの国」さえ見つかれば何も要らないと承諾。神様はそこで消える。そして少年は「しあわせの国」を見つけ出し、自分の島のみんなを呼びに戻る。が、島には誰もいなかった。少年にとって一番大事なものとは家族や友達、島の仲間のことだったのだ』
 個人的にはここで終らせたかった。が、文化祭に来るお客さんの大半が(まじめな系)生徒の父母だったので、その層の受けを考え『と、思ったら夢でした〜』という、今では禁じ手「夢落ち」に持って行った。
 案の定、受けた。
 それが高専4年生だった。
 ここで「ILM8」は解散した。来年は皆、受験や就職活動が控えているからだ。クラブ活動だって最高学年は後輩に運営を任せるではないか。
 ところが一人、「ILM8」ファンの国語教師がいた。
 「今年は何を作るんだ?」「いえ、今年は皆忙しいので作りません」「何? ダメだ作れ!」
 なんという横暴な。そのために就職出来なかったり受験に失敗しても「それはきみらの努力が足りなかったからだ」と平気で言いそうな教師だった。
 大地はその頃すでに「東京写真大学」へ推薦入学がほぼ決まっていた。
 動けるのは俺だけだ。一人で作るしかない。しかも国語教師がそれを言い出したのは文化祭2週間ほど前だった。
 手抜きアニメ。
 これしかないと思っていた。
 初作品よりも手を抜くんだ!
 自宅で3日間絵を描きまくった。一人で撮影をして出来たフィルムを前作「しあわせの国」で音楽を作ってくれた中学時代一緒にN君の牛乳を吹き出させていた友人宅に持ち込みその場でギター演奏。
 完成。
 この手抜きアニメが歴代の上映作品で一番受けた。世の中わからないものである。
 このときの作品が「柳生十兵衛」。1分13秒作品。
 これが大地の中では「柳生3部作」の「第1作」と勘定している。「十兵衛ちゃん」は「第2作」だ。
 こうしてこの育英高専時代に大地はたっぷり映画、アニメ作りの醍醐味に魅かれて行き、写真大学時代にさらにこの道を突き進むことになる。

 が、なんとここまで書いてきたけど、このコラム、今回で最終回。
 「やっぱり」編では2年間くらいで監督になるまでの人生を振り返ってみたかったけど、こんなところで終っちゃった。続きは機会があればどこかで書かせて貰います。
 なんと最終回は70回でした。毎回読んでくれた人、ホントに感謝します。
 長い間ありがとうございました。

 
その「柳生十兵衛」はこちら


「国定忠治」撮影中の大地

「しあわせの国」

「国定忠治1シーン」

つづく

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