プロローグ

 立派な墓の前で女の子が泣いていた。少女の母親は死の直前に少女に言った。
「私はもうすぐ天に召されるでしょう。それでもあなたは神様を恨んだりしてはいけませんよ。毎日神様に感謝していなさい。そうしたらきっと神様はお前を幸せに導いて下さるでしょう。」

その少女を遠くの木の影からこっそり見る者があった。
「ねえさん、あの子があの海運商の娘シンデレラだよ。母親が死んでからというもの毎日墓に来ては、ああやって泣いているのさ。」
女は言った。
「もうすぐ異国に行ってる旦那も帰ってくるころだし、そしたらねえさん寝取っちゃいなよ。そうしたらあの大きなお屋敷はねえさんの物さ。」
もうひとりの女は、それには応えずにいやらしくほくそ笑むと、墓の前で泣いている少女に近付いていった。






前書き

この話『灰かぶり姫』は、グリム童話の『灰かぶり』や、フランスの作家シャルル・ペローの『シンデレラ』などを元に、世界中にある類型の話も折り込みながら書いていきます。ただトリビアで有名になった話は厄介なので取り入れませんでした。(笑)

もともと“シンデレラ”という言葉はグリム童話の“灰かぶり”と同じ意味なのですが、すでにディ○ニーのアニメーションなどで“シンデレラ”=美しい名前というイメージができていると思うので、この話では少女の本名を“シンデレラ”あだ名を“灰かぶり”としました。すでに有名すぎるストーリーですので、かなり自由に書いていこうと思っています。

これまで書いた童話にはあまり残酷なものはありませんでしたが、今回のはかなり残酷になる予定です。(もともとが結構残酷ですから)そういうのが苦手な方には、まったくお勧めできません。