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ステロイドを使わないアトピー治療をめざして

編者 アトピー・ステロイド情報センター 代表 住吉純子

アトピー・ステロイド情報センターの10年間の活動から重症アトピー患者が増えてきた背景やその対策を示します。患者22名の体験談も併せて掲載。アトピーやステロイド離脱で苦しむ人たちに大きな勇気をくれるそんな本です!! ぜひお手元に一冊。

はじめに
 お互いに情報交換をすることでより良いアトピー治療を模索する場として発足したアトピー・ステロイド情報センターは、今年で10年目を迎えます。設立当時は、アトピーが大きく社会問題となり、また、それまでアトピー性皮膚炎の治療として使われてきたステロイド剤をめぐっての議論が噴出し始めた頃でもありました。
 アトピー性皮膚炎にステロイド治療が行われるようになって40年あまりが経ちます。アトピー性皮膚炎と診断された患者達は、「これを塗っていればそのうち治ります」という医者の言葉をひたすら信じて、長年ステロイド剤を使い続けてきました。その結果が、ステロイド依存という新たな被害を受けた難治化、慢性化した重症アトピー患者達の増加でした。
 塗っても治らない、そればかりかどんどん悪くなっていく症状にさえステロイド時を塗り続けるだけの治療に対し、患者達の医療不信はどんどん募っていったのです。医療に絶望した患者達は、わらをもすがる思いで、「○○でアトピーが治る」と次々に現れる民間療法を模索し始めたのです。アトピー患者達が、ステロイド剤で治らないアトピー性皮膚炎に、ステロイド剤という武器しかもたなかった医療から離れていったのは、その頃の流れとして当然といえば当然すぎる結果でした。
 「皮膚科の進める治療法(特に、ステロイド剤を使用する治療)に対してアトピー性皮膚炎患者が疑問を抱き、民間療法を含め様々な治療法を求め歩き、結果として患者が悲惨な状況に陥っている」という「アトピービジネス論」なるものが今日盛んに展開されていますが、そういった「アトピービジネス論」の前提にあるのは、患者達の「医療不信」であることは、疑うべくもありません。アトピービジネス論を糾弾するなら、それ以前に、苦渋する患者達の声に耳を傾けることもなく、臨床経験を踏まえた中での正しい分析と事実に基づいた治療法の研究がなされてこなかった医療こそが、まず問いたださなければならないはずです。
 しかし今もなお、ここのアトピー性皮膚炎に対しての反省はなく、重症、難治化したアトピー性皮膚炎の真の原因究明も行われないまま、医療現場では相変わらず「ステロイドはうまく使えば問題ない」といった机上の空論が繰り広げられています。また、2000年5月には、この間のアトピー性皮膚炎の治療の混乱を打破する目的として、日本皮膚科学会より「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」が発表されました。が、その内容とて、「アトピー性皮膚炎治療にはステロイド外用剤を第一選択とする」というステロイド治療を正当化しようとするものでした。
 アトピー治療の混乱を、まやかしの「アトピービジネス論」や患者実態を無視した「ガイドライン」で糊塗することはできません。アトピービジネスにしろ、常識では考えられないような高額なお金を使ったり、ステロイド剤を使っていないといいながら実際には使っていたりと決して問題のない治療がないわけではありません。けれども、アトピー患者達がそれらの情報に翻弄されたと時代は既に終着を迎えようとしています。そういった数ある民間療法が決して自分たちを救ってはくれないことに、アトピー患者達は気づいています。
 それでもなおアトピー患者たちが、ステロイドを使わないアトピー治療を探ろうとするのは、ステロイドでアトピーが治せないことを知っているからです。リバウンドという大きな代償を払う脱ステロイド療法や、精神、経済的にも大きな負担を強いられる民間療法も、決して患者たちが望んだものではなく、他から強いられたものでもありません。医療を信じ医者を信じた患者たちが最後に選択せざるを得なかったのが「ステロイドを使わないアトピー治療」だったのです。
 長い間、アトピーやステロイドで苦しんできた人たち、そして今この時からアトピー性皮膚炎との長いつきあいが始まるこどもたちのためにも、真に患者のためになるアトピー性皮膚炎の治療が一日も早く確立されることを願って止みません。
 1994年に、情報センターとして初めて、患者達の体験も含めた書「私たちはこうしてアトピーを治した」を出して7年近い時が流れました。この間に、アトピーを巡る状況はずいぶん変化してきたように思います。そういった情報の数々を改めて伝えたいと思いながら3年あまりが経ってしまいました。この本には、「アトピー性皮膚炎が治る」夢物語は書かれていません。けれども、長い間アトピーやステロイドで苦しんだ患者達の体験や、10年近い情報センターの活動の中で得られたアトピー治療の実態を知ることで、今後、アトピー患者達がより良いアトピー性皮膚炎の治療を模索する一助となってくれることを信じます。
アトピー・ステロイド情報センター 住吉純子

第一章  ステロイドを使わないアトピー治療をめざして−12人の体験談
第二章  ステロイドは魔法の薬ではなかった−10人の体験談
第三章  ステロイド剤とはどんな薬
第四章  アトピーとはどんな病気
第五章  なぜアトピーが激増しているのか
第六章  アトピー性皮膚炎を促進する環境化学物質
第七章  ステロイド剤を使わずにアトピー性皮膚炎とつき合う
別添資料 アトピーケアー病院一覧表:ステロイドを頼らずにアトピー性皮膚炎を治療する医師たち58人

アトピー・ステロイド情報センター編
柘植書房新社
東京都文京区小石川1-14-1
TEL 03-3818-9270 1800円+税

お申し込みはアトピー・ステロイド情報センターまで
Tel 06-6364-0275/Fax 06-6364-0311

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