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新聞投書欄


読売新聞 朝刊 2000年(平成12年)9月13日(水曜日)気流 
アトピー治療の研究深めて

会社役員 緒方康信 53才
○小学生になるころには治るといわれていたアトピー性皮膚炎が最近は治りにくくなり、そのまま成人型アトピー性皮膚炎に移行する症例が増えているようです。そして、成人型アトピー性皮膚炎の人は、アトピーの症状に加えて、ステロイド依存性皮膚症で苦しむ症例が多いとされています。
 日本皮膚科学会は最近、ステロイド外用剤の使用が現時点ではまず第一に選択するべき薬であると位置づける「治療ガイドライン」を作成しました。しかし、アトピー性皮膚炎は様々な因子が複雑に絡み合って発症するもので、治療法については、まだ決定的なものが確立されていないのが現状ではないでしょうか。
 アトピー性皮膚炎の患者が治りにくくなっているのは患者がステロイドを使わない様々な民間療法に頼るせいだという意見もありますが、その前になぜ患者がオーソドックスな医療を忌避し、民間療法に救いを求めていったのかということに関する検討を十分に行うべきでしょう。ステロイドを使っても症状が改善せず、副作用が出ることに悩んだ患者が次第にステロイドに頼りすぎた医療に対する不信感を募らせていったのだと思います。
 皮膚科の医師の方々には、まずステロイドありきではなく、ステロイドをいかに使わないで治すかということについての検討も併せて進めていただけないでしょうか。現状のままでは、アトピー患者の医療への不信が増大し、民間療法ばかりが興隆するというおそれもあるのです。これが杞憂に終わることを祈るばかりです。


読売新聞 朝刊 2000年(平成12年)9月27日(水曜日)気流 
民間療法選ばせる医療不信

皮膚科医 隅田さちえ 40(広島市)
 今年初め、二十代のアトピー性皮膚炎の患者が入院しました。自宅で「遠赤外線治療」を試み、症状が悪化しても我慢して治療を続け、二週間目に全身が真っ赤になり、食事もとれなくなったからです。
 遠赤外線治療を始める前に患者さんが通院していた病院に問い合わせたところ、ステロイドの外用剤を使っていたそうです。でも、患者さんが遠赤外線治療を始めるにあたって、知識不足からステロイドの使用を中止したために禁断症状が出たようです。結局、社会復帰するまでに三ヶ月間が必要でした。
患者さんが多額の費用がかかるにもかかわらず民間療法を選ぶ理由の一つには、現在の医療に対する不信があるのだと思います。病院を変えても、軟膏治療を受けるだけで症状も代わり映えせず、何か良い治療はないかと民間療法を試みるのでしょう。
 ステロイド外用剤は皮膚の発疹に一時的には最も効果のある薬ですが、長期使用後に突然中止すると著しい禁断症状を起こします。だから、治療に時間のかかる疾患に使用する際は、患者さんに薬の説明を十分に行う必要がありますが、実際はなかなか十分に行われていないのが現状のようです。
 まずは医療を提供する者が、患者さんが納得できるように時間をかけて話をしていくことが大切だと思いました。「アトピー治療の研究を深めて」(13日)の投書を読み、自戒の念を強くしました。


読売新聞 朝刊 2000年10月11日(水曜日)
アトピーの根本治療教えて 

派遣業 佐々木美佳 26才(横浜市)
 私は全身疾患の成人アトピー性皮膚炎です。やけどを負ったような状態で日常生活も大変です。
 こんなことになったのは、長年のステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の過剰投与によるものです。私たち患者は知識がないので、医者を信頼しています。ステロイド剤は、即効性はあっても、長年にわたる塗り薬や内服薬の使用、そして注射が、強い副作用も覚悟しなければならない治療法であるということを、医師はきちんと患者に説明してほしいのです。
 アトピーがなかなか治らないのは患者自身の生活習慣に原因があるようにも見られがちですが重症患者はステロイド剤の副作用によることが多いことを医師の方はもっと真剣に受け止めて下さい。
 私は外見のせいで、飲食業や接客業、受付などの職種に就くのを断られることもあります。精神的にも大変つらく、同じ病気の仲間には引きこもる方も大変多いのです。医療に携わる人たちには、患者の立場に立って根本治療を指導してほしいと強く希望します。


毎日新聞 朝刊5面、2000年(平成12年)11月14日(火曜日)
オピニオン ワイド
ステロイド剤は賢明な選択なのか

会社員 久保俊一 39(東京都目黒区)
 最近、日本皮膚科学会はアトピー性皮膚炎治療にステロイド剤使用を第一選択肢とすべきだ、と発表した。
 だが、ステロイドの副作用で辛酸をなめ、それを使わない治療の方が予後がよい実感から素朴な疑問が浮かぶ。
 発表は、ステロイド剤を10、20年と使用し続けた重症患者を辛抱強く継続フォローして出した結論なのだろうか。医師は、来院しなくなった患者は良くなったと、と勝手に解釈していないだろうか。
 このような患者の中にいつまでたっても改善しないステロイド治療に不信感を募らせたり、それによると思われる副作用に悩んで、ステロイドを使わない医師や民間療法に流れていくケースが多い。
 ステロイド剤に不信を募らせている患者との信頼関係回復や長期フォロー体制を怠ったまま一方的に、「ステロイド剤を第一選択肢とすべきだ」と発言し続けることは、患者の不信感を増幅するだけの結果に終わるのではないか、と危惧する。


毎日新聞 朝刊5面、2000年(平成12年)12月3日(日曜日)オピニオン ワイド
ステロイド剤をやめてよかった

主婦 末森久美子 43(福岡市 中央区)
11月14日本欄「ステロイド剤は賢明な選択なのか」に同感しました。
 4歳の娘は1歳ごろからアトピー性皮膚炎と診断され、小児科、皮膚科と病院を転々としました。どこでも出されるのはステロイドのぬり薬です。3歳の時、今の主治医の先生からステロイド剤をやめるように言われました。十分な説明と、「この先生なら」という信頼を感じ、きっぱりやめることにしたのです。
 しかし、それからが闘いでした。娘の悲惨な姿、かゆみとの闘いに疲れ果て「これでいいのだろうか」ともんもんと悩む日が続きました。ぎりぎりの状況の中で私たちを支えたのは医師への信頼感と周囲の励ましでした。
 一年半が過ぎ、あれほど手放せなかったステロイド剤なしに過ごせるようになりました。ステロイドは本当に必要な薬なのだろうか。アトピーの子供をもつ親は混乱しています。利害や利潤中心ではなく、患者の立場に立った検討がなれることを願います。


毎日新聞 朝刊、2001年(平成13年)1月18日
「みんなでやろうよ防アトピー」ステロイド・ワセリン110番を開設

江崎ひろこさん(42)
 アトピー性皮膚炎の治療に対するステロイド剤の使用をめぐっては、長年、論争が続いてるが、私も二十数年前、医療機関で顔に大量のステロイド剤を使用され、顔の皮膚は溶けて赤くただれ、一時は失明までする副作用に苦しんだ。
日常生活もままならい血汁と激しいかゆみに苦しみながら、1983年、医療機関を相手取った全国初のステロイド軟こう禍訴訟を京都地裁に起こした。裁判は5年後に和解。その後は「ステロイド・ワセリン110番」を開設し、アトピー性皮膚炎の患者さんたちの相談に応じている。
 昨年秋、5冊目の拙著となる「ステロイドは防アトピーでもう要らない!」(かもがわ出版)を出版した。「防アトピー」とは、アトピー症状が出た時すぐに薬を使わずに水溶性の保湿をしてやる方法で、数日から数ヶ月で普通の肌になる。
私は十数年前に知人から教わったが、電話相談でこの方法を伝えるのは年間2000人が
限度なので、この度、本にまとめたわけである。現在、医療機関の皮膚科ではステロイド剤の使用は一般的だが、「自分の子供にはステロイドを使わず、防アトピーをしたい」と電話してくる皮膚科医がこれまでに20人以上いた。
 私の所には防アトピーが終了した患者さんたちから、様々な喜びの声が寄せられている。「8年ぶりに顔に風邪を感じた」、「お正月に餅が食べられた」、「像皮症(ワセリン肌)が治り、お風呂のお湯の熱さを感じた」などなど。
「みんなでやろうよ防アトピー」。私はこれからもこう叫んで行きたい。
20年前、ステロイド剤の副作用に耐えられず自殺を図って、未遂に終わった私の一生の仕事だと思うからだ。
 しかし、患者さんの症状はさまざまで、それぞれに仕事や家庭など社会的事情もある。腰を据えて防アトピーに取り組める人ばかりではなく、薬の即効性を求めてステロイド剤の使用を選択することもあるだろう。それも否定はしない。要は患者の自己責任だ。医者任せではなく、主体性を持って治療法を選ぶことが大切だと思う。


朝日新聞朝刊、2001年(平成13年)6月30日 
アトピー児に心のケアの治療願う

パート 増井妙子(福島県42歳)
 先日、「母さん、僕を産んで欲しくなかった」と中学1年の次男から言われ、私は涙した。生後間もなく、アトピー性皮膚炎が発症してから今日まで、彼はどれだけ我慢してきたことか。「今日、死のうと思った」との言葉も聞いた。
 もちろん、通院して投薬を受けている。だが、私が時々困るのは、心のケアをしてくれるところがないことだ。アトピーの治療は、受ける子にも、その家族にも、さまざまな我慢と悩みが伴う。担当医は、症状の話は聞いてくれるが、心の整理や病気との向かい合い方などを、もっと相談できる病院があればと思う。
 最近、多くの分野で心のケアの必要性が言われるが、アトピー児と家族の心のケアの場も、制度として考えてもらえたらと思う。


読売新聞朝刊、2001年(平成13年)7月11日 
つらいアトピー優しく見守って


会社員 匿名24歳(千葉県)
 経済的に苦しい家庭の児童生徒が治療費を軽減される「学校病」にアトピー性皮膚炎を追加することが検討されていることを記事で知り、大変うれしく思いました。
 私も重症のアトピー性皮膚炎でした。当時は、一般には「たかがかぶれ」といった認識しかなく、幼稚園から高校まで、心身共に苦痛の連続でした。
 周りの子から、「汚い」「気持ち悪い」などと言われ、友達もあまりできませんでした。幼稚園の時は、隣の子のお母さんが「汚いのがうつるから、こっちへ来なさい」と、露骨に私からその子を離したことが一番ショックでした。
 小学校では、症状のひどい部分に包帯をしていくと、先生から「なぜわざわざ」包帯を巻くの?そんなに同情がかいたいの?」と言われました。ひざの裏がうんでいて、包帯なしでは長時間座っていられず、腕も、鉛筆を動かすたびに包帯がないとこすれて集中できなかったのです。
 プールも見学が許されず、全身がしびれるような痛みに耐えていました。同級生から「きたねえ、寄るんじゃねえよ」などと言われても、先生は何も言ってくれませんでした。
 アトピー性皮膚炎がどれほど日常生活に支障をきたすものか、社会的に認知していただき、苦しむ子供たちに対して寛容に接していただきたいと思います。


読売新聞朝刊、2001年(平成13年)8月7日 
医師への不信で治療法を探した


主婦 戸村清美 41(茨城県稲敷郡)
 生後六ヶ月目、ひどいアトピー性皮膚炎のあった娘は血液検査を受けました。卵、牛乳、大豆、米、小麦、魚、肉など、調べる食べ物がみな陽性で、母乳を与えている私も厳しい食事制限をしなければなりませんでした。毎晩、体がかゆくて眠れぬ娘を抱いたまま朝を迎えるという、二十四時間のケアに疲労困ぱいした私は、二度倒れました。
 そんなある日、医師に、強いステロイド投薬による副作用の不安を訴えると、強い口調でしっ責を受けました。「何か違う......」と感じました。そこで図書館通いをして、いろいろ調べてみると、ステロイドだけでなく様々な治療法があり、医師によって、治療への考え方も異なることがわかりました。
 我が子の状態を一番よく知っているのは、母親です。その母親が医師と話し合える環境がなかったら、よい治療は期待できません。娘は、台湾医師の処方する漢方と巡り会い、象の皮のようにごわごわしていた皮膚が、一年でつるつるになりました。
 悪徳なアトピー商法による被害もたくさんあると聞きますが、今の治療に迷いがあったら、勇気を出して一歩を踏み出してみることも必要だと思います。


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