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長崎新聞掲載 2001年4月20日金曜日

対症療法に頼るな・何故病気になるのか 安保徹(新潟大学医学部教授・免疫学者)

生体のリズムを大切に

「胃潰瘍は胃酸が胃を消化するとか、ヘリコバクター・ピロリが原因とか様々な説がありますが、説明できないことが多すぎます。健康な人の胃は酸があってもびくともしないし、60歳以上は殆どの人がピロリ菌に感染しているのに、全員が潰瘍になるわけじゃない。もっと包括的な理論を探すべきだと私が提唱したいのが、顆粒球説です」「まず体にストレスがかかると自律神経の交感神経が緊張します。そして血流障害が起き白血球中の顆粒球が増加します。顆粒球は細菌を食べるいい細胞だが、寿命が2−3日と短く、死ぬときに活性酸素を大量に放出するのが問題です。活性酸素は粘膜を傷つけ潰瘍を起こします。胃の中にピロリ菌があると顆粒球の活動が盛んになり、潰瘍形成をたすけるが、ピロリ菌単独の犯人説はおかしい」
 (アメリカの「消化器疾患と科学」は昨年9月号に安保教授の論文を掲載した)「採用されるまでに4年かかりました。何しろい潰瘍「胃酸」説には百年の歴史がある。近年、制酸剤H2ブロッカーが有効とされてからは、いっそう胃酸説が強くなった。それを覆すのは容易ではない。ところがH2ブロッカーの開発者ブラックの論文を読むと「H2ブロッカーには骨髄の顆粒球生産を抑制する副作用がある」と書いてあった。H2ブロッカーは酸を抑えて効くのではなく、顆粒球を抑えて効いているんです」「新潟市の共同研究者、福田稔医師が長引く胃潰瘍の患者さんに制酸剤をやめさせ、心の悩みを聞き出して鍼をしたら、あっという間に治りだした。制酸剤を飲んですぐ治ればいいが、治らずに薬を続けると酸がでなくなり、ピロリ菌が暴れ出して難治化するんです。もともとストレスで発症しているんだから、気晴らしをさせ、鍼などで交感神経の緊張を取ってやれば、胃潰瘍は良くなります。人は何故病気になるか、何故治癒するかを自律神経の乱れと白血球のアンバランスから解明するこの理論を、私たちは「福田−安保の法則」と名付けました。」(制酸剤だけではない。痛み止めやステロイド剤の常用なども病気を難治化させると警告する)「ステロイド剤は潰瘍性大腸炎やアトピー性皮膚炎、リウマチ、気管支喘息などに処方されています。始めは劇的に効くが、使い続けると薬害が生じる。体内に蓄積し、酸化したステロイドは交感神経を刺激し、顆粒球が増加して活性酸素が組織を破壊し、患者さんの体は冷え、炎症は悪化します。その治療のためさらにステロイドを使うという悪循環に陥り、悲惨な結果につながります」(昨年の日本皮膚科学会総会で三百人の医師を前に、アトピー治療にステロイドを使うのを止めようと講演した)「事実を知ってしまった限りは言わざるを得ない。ステロイド剤で多臓器不全になり死んでいる患者さんさえいるのに、黙っているのは犯罪です。袋だたきを覚悟して言ったら、割れるような拍手。皮膚科医の中にも自分たちがやってきた治療に疑問を感じている人は少なくないんです」「今は対照療法全盛時代で、どんどん一時しのぎの薬が開発されている。しかし、働き過ぎや心の悩み、運動不足を避け、日中は働き夜は休息をとるというリズムを守れば、病院にも薬にも頼らずに健康な生活と送れるはずです。人間の生きるべき姿で生きれば破綻しないのです」


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