参政権は日本国憲法において国民の権利として保障されていて、公職選挙法はこれを円滑に行われるようにするための法律です。
しかし障害者や高齢者などは選挙に行きたくても行けない、また投票所に行けない、候補者の情報が入手できないなど様々な問題を抱えていて十分な参政権が保障されているとはいえないのが現状です。
高齢化が進む現在においてこれらの問題点を解決しないことには、仮に現在不自由を感じていない人たちも将来的に参政権が阻害される恐れが十分にあります。
※資料は1998年実施の参議院通常選挙を中心に自治省が調査した結果などを元にしています。
なおより詳しいデータをご希望の方は参考文献をお求めください。
入り口に段差などがある投票所33,721ヶ所(全体の63.1%)のうち
投票所が入り口とは違うフロアにある投票所1,468ヶ所(全体の2.7%)のうち
1,233箇所の投票所においては車椅子使用者は介助等がなければ投票できないと言うことになります。
調整費を要求していない自治体もありますが独自財源で対応したところもあるようです。
手話通訳者や案内板がないために入り口から投票までの手順などがわかりにくい状態にあります。
また投票所が2階にあるにもかかわらずエレベータがない、段差解消ができていなく手すりすらないなど安全性の確保がなされていません。
したがって
などが課題になります。
・点字による投票数
投票数 | 有効投票数 | 有効投票率 | |
---|---|---|---|
比例代表 | 10,506 | 10,241 | 97.48% |
選挙区 | 10,530 | 10,244 | 97.28% |
平成8年身体障害者実態調査によると20歳以上の視覚障害者は30.4万人で、そのうち点字ができるのは2.8万人。
・代理投票
投票数 | 比率 | |
---|---|---|
比例代表 | 129,070 | 0.2% |
選挙区 | 128,440 | 0.2% |
候補者の氏名や政党を記載できない選挙人については投票を記載する場所での投票が認められています。
・郵便投票
投票数 | 比率 | |
---|---|---|
比例代表 | 31,411 | 0.7% |
選挙区 | 31,365 | 0.7% |
身体に重度の障害がある選挙人については本人の申請により自宅などから郵便で投票することが認められています。
・病院・施設などからの不在者投票
病院などから投票 | 不在者投票数に対しての比率 | |
---|---|---|
比例代表 | 549,824 | 12.4% |
選挙区 | 550,136 | 12.4% |
都道府県選挙管理委員会が指定する病院・老人ホーム・施設などに入院・入所等をしている選挙人の投票には、病院・施設等の長による申請により、記載場所を設置して投票することが認められています。
原則としてベッド上からの投票は出来ませんが、歩行困難な選挙人においては不在者投票管理者の管理下で投票立会人の立会いのもとで投票することができます。
在宅の寝たきりになっている高齢者や障害者、ALS患者で自分で文字を書くことができない場合は投票できません。また施設などで不在者投票をする場合、投票する候補者を強要されたり、プライバシーが守られないという実態があります。
などが課題になっています。
○都道府県知事選挙
手話通訳をつける事は制度上規定されていません。
○参議院
○衆議院
公職選挙法上の「選挙公報」は、候補者から申請された掲載文を原文のまま掲載しなければならない事から点字による選挙公報の場合、選挙管理委員会が限られた期間内に誤りなく調整することができるか、または調整したものを視覚障害者に対して公平に配布できるかどうかなどの技術上の問題点があるため、選挙公報としては制度化されていません。
しかし視覚障害者の便宜を図るために啓発事業の一環としてほとんどの都道府県で候補者の氏名や経歴などを掲載した点字による選挙の「お知らせ版」(ヘレンケラー協会などより買い上げ)が配布されています。1998年の参院選では全国でおよそ54,000部発行され関係団体を通じて配布されました。
聴覚障害者にとって音声を情報源としたものは一切はいってこない状況にあります。たとえば演説や政見放送の音声部分、選挙カーによるマイク宣伝などがこれに当たります。しかも視覚(文書、チラシ、ポスター、ビデオなど)による選挙は原則として禁止されているので選挙ポスターや選挙公報くらいしか候補者の情報を得ることが出来ません。
視覚障害者についても点字や音訳による選挙公報などの情報がなく同じく情報不足になっているのが現状です。
このような情報の差別から自分の意思で候補者を選び自分で投票すると言うことができない状況にあるのです。
したがって
などが必要になります。