今回は、視覚障害を持つ議員の方々の全国組織「視覚障害者議員ネットワーク」についてご紹介します。
1999年4月の統一地方選挙において、10名の視覚障害議員が当選し、全国の視覚障害議員は14名になりました。 そしてその年の5月、JBS(日本福祉放送)の主催で、障害者議員が集まる機会が設けられた際、視覚障害議員固有の問題として次のような物が挙げられました。
視覚障害議員がまず直面するのは、議案やその他の資料の処理の問題です。 点字ではなく墨字(普通文字)で渡される膨大な量の資料をいかにして迅速に、そして正確に処理するかが大きな課題となります。 ネットワーク結成前後は家族や支援ボランティアによる対面朗読によって解決していましたが、最近ではパソコンを利用して資料を処理している議員も増えています。
人間が得ている情報の8割から9割は視覚による物だといわれています。 情報障害と称されることの多い視覚障害を持つ議員にとって、情報収集の困難さも大きな課題です。
1999年当時の地方自治法では、地方議会の議長、副議長などの選挙において点字投票は認められておらず、視覚障害議員は代理投票を余儀なくされていました。
そのほかにも移動や議事録署名に関する問題が話し合われました。
その後、「これらの問題を視覚障害議員の共通認識とし、同じ立場にあるもの同士が情報や経験を共有できる場が必要ではないか」という声が高まり、1999年8月9日、堀利和参議院議員を代表とする「視覚障害者議員ネットワーク」が結成されました。 東京都千代田区永田町の参議院議員会館で開かれた設立総会には、全国から8名の視覚障害議員が出席し、このネットワークが互いの支えとなり、夢を語り合う場になるよう一緒に育てていく事を確認しました。
ネットワークの最初の大きな活動は、地方議会での議長、副議長、選挙管理委員などの選挙において点字投票が行えるように、当時の自治大臣に申し入れを行うことでした。 当時の地方自治法第118条第1項によると、これらの議会内選挙については公職選挙法の一部を準用することとされていますが、その準用する規定の中に公職選挙法第47条(点字投票)は含まれていませんでした。 このため視覚障害議員はこれらの議会内選挙において代理投票を余儀なくされていました。 そこでネットワークは当時の自治大臣に対し、これらの議会内選挙において点字投票が行えるよう、地方自治法の改正を求める申し入れをしたのです。 その後、2001年3月の第151回国会に改正案が提出され、現在も審議が続いています。
ネットワークは現在、現職議員15名、もとの議員2名の計17名で運営されています。 今後も、会報の製作と情報交換を柱に活動が進められる予定です。 また、イギリスなどへの視察も検討されている様です。