雲と水面

フランス
2000年4月



サンテミリヨン
  有名なワインの産地ボルドーのワイン醸造家団体から展示会への招待状が届いた。忙しいことに加え新しいワインを入れる予定もなかったし、何より来月もヨーロッパ旅行を予定しているので、折角だが招待を断った。しかし再度にわたってなんとかこれないかと国際電話をかけてくるので、夫婦二人なら行ってもいいけど、と返事をしたところ、折り返し電話が来て、OKだという。二人も招待されるとちょっと気が重いかな、とは思ったが、喜んで招待を受けることに。
  出発まで日はない。展示会は2日間だけなので、その前後ボルドーのシャトー見学とパリ自由時間を1日入れて1週間の渡航予定をたてる。有名シャトーに見学のアポ取りの電話やファックスを入れたり、ホテル・レンタカーの手配をしている内にあっという間に出発の日がやってきた。飛行機の切符は空港のカウンターで受け取ることになった。ちょっと不安だったが、日本での事だ。問題はなかった。これが外国なら、どうなっていたか分からない。

  ボルドー空港に着いたらさっそくレンタカーを借りてサンテミリヨンのホテルへ。初めて泊まるホテル・ド・プレザーンスをなんとか探して着いたときはすでに夜もとっぷり暮れていて、ホテルのレストランではオーダーストップぎりぎりだった。顔だけ洗って軽い夕食にする。

  料理は美味しかったが、何を食べたのかは覚えていない。唯一覚えているのは、隣に座っていたおそらく中東から来たのだろうが新婚旅行中らしいお金持ち風の若いカップルだった。なにげなく新婦(勝手に決めてしまったが)の左手の薬指を見て息を呑んだ。ミキコに「チョット、隣のご婦人の指を見てご覧。」とまわりには聞こえない小さな声で言った。とたんに「エッ!!」と言って絶句。ミキコの目は点になっていた。10カラット以上はあろうかという大きなダイヤモンドの指輪だ。宝石屋でも見る事がない。博物館では見たことがあっても、実際にあんな大きなダイヤをつけている人は見たことがなかった。長旅の疲れもいっぺんで飛んでしまうほどだった。あまりビックリして、部屋へ帰ったら二人してなぜか大笑いしてしまった。


サンテミリヨンの街
赤瓦の建物が印象的だ

サンテミリヨン街角3

      



シャトー・オーゾンヌ
  二日目からはさっそくシャトー巡りだ。今日はサンテミリヨンとポムロール地区を見学。サンテミリヨンでまず最初に訪れたところが、岩盤をくり抜いた地下セラー(ワイン蔵)で有名なシャトー・オーゾンヌ。道に迷ってちょっと遅れて着いた私たちを暖かく迎えてくれたのはオーナーの娘さんだった。今工事中で散らかっていますが、と言いながらセラーを案内してくれた。

セラーと石柱


  それほど広くはないが、中は石室そのもの。ひんやりとしてワインの熟成には最適の環境だ。説明によると、ここは元々セラー用に作られたわけではなく、建築用の石材を切り出した跡で、セラーとして使われるようになったのは後のことだという。他に類を見ない珍しいセラーだった。

  セラー見学の後はテイスティング(試飲)だ。98年と99年のヴィンテージを比較試飲させて貰う。

98&99比較試飲


  いずれも素晴らしい香りだ。部屋中、果実や花のようなあまいかおりが充満している。98年は1年古いだけあって芳醇でタンニンも酸味も柔らかいが、99年も新しいにもかかわらず深い香り、豊満で堅さを感じない素晴らしい出来だ。さすがに一流のワインは違うなぁ、と感心することしきり。朝一番から一流のワインを試飲できる、幸せな一日が始まった。



シャトー・シュヴァル・ブラン

  ポムロールとの境に近いところにあるシャトー・シュヴァル・ブラン。シャトーの前に広がるぶどう畑がきれいだ。

          畑2

  まろやかでいて力強いシュヴァル・ブランのワインはポムロールに近いので、他のサンテミリヨンのワインとはひと味違うまろやかさがある。プロのワイン評論家達の評価も高い。ここでも99年のワインを試飲する。酸味や渋みは強いのだが、香りやこくともに素晴らしい。数年後が楽しみだ。



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