"B"ORDERLESS





No
Title
Words
Music
Judgement
My Name is "TABOO"
TAKURO
氷室京介
★★★
PARACHUTE
TAKURO
氷室京介
★★
Rock'n'Roll Suicide
松井五郎
氷室京介
★★★★
Doppelganger
松井五郎
氷室京介
★★★
The Distance After Midnight
TAKURO
氷室京介
★★★
忘れゆくには美し過ぎる...
TAKURO
氷室京介
★★★
Sarracenia
松井五郎
氷室京介
★★★★
Time for Miracles
Johannes/Shneider
Johannes/Shneider
★★★
Never Cry Wolf
松井五郎
氷室京介
★★★★
10
Traumatic Erotics
松井五郎
氷室京介
★★★★
11
BANG THE BEAT
SPIN
氷室京介
★★★★★
12
Across The Time
松井五郎
氷室京介
★★★
13
Safe And Sound
Gerard Way
Gerard Way
★★★★








批評


3年9ヶ月ぶりのオリジナルアルバムです。その間は、ライブ・ベスト盤を出しておりましたが、ようやくの新作でございます。シングルは「BANG THE BEAT」と「Safe And Sound」の二曲しか出しておらず、珍しい事に未発表曲が多い・・・といいたいですが、カバー曲もあるのでいつもどおりの曲数ですな。


作詞だけを見てみると、新旧そろいぶみって感じです。森雪之丞さんがいなくなり、お馴染み松井さんがきて、GLAYのTAKUROさんやSPINさんがじわりと進出しております。個人的には森さんの歌詞も好きなのですが・・・特に雪之丞マジックがみれないのが残念です。彼の独特な言い回しは面白いので。


***


一曲目はとりあえずノッていこうぜといわんばかりの「TABOO」。サウンドが古きよき時代のロックンロールって感じがします。イントロもそうだし、ギターソロもよくあるフレーズでわかりやすかったです。氷室さんも歌い方をちょいと変えて、自由奔放にやってる感じがします。


この曲で一番気になるところは、歌詞の最後にある「我が名は○△■!%」とあるところです。歌詞は記号が書いてるだけで、意味不明です。んで、氷室さんが歌ってるのを聴いてみても、よく聞き取れません。個人的には「ぷわーしぇー」て聴こえるのですが、言葉になってないので自分の耳がおかしいだけだと思います。


二曲目の「PARACHUTE」は私があまり好きでない氷室さんの歌い方です。軽薄な感じの歌い方は昔からありますが、久々に来ました。ダルダルした曲調は悪くは無いのですが、この声色は自分とはあわないのです。色んな歌い方できる氷室さんはいいのですが、個人的な趣味もありまして、あんまし評価はしておりません。


この曲を聴いてると、今はなき忌野清志郎さんが歌ってても違和感がない気がします。あの味のある歌い方と似てるような気がするのです。なんとなくレベルではありますが(笑)。


三曲目の「Rock'n'Roll Suicide」は素直に格好良い。イントロから初めの歌詞あたりのギタープレイがが素敵。また氷室さんのダミ声っぽいので重量感がかかってる。プロモーションビデオでこの曲がかかってましたが、インパクト与えるには十分な力があります。完全にライブ向けの仕様ですね。


「どっぺるげんがー」。これまたご機嫌な疾走感ある曲です。たたみかけるような伸びのある氷室さんの声が特徴かな。サビは最初は抑えるように、ラストは転調して盛り上げるような仕様となっており、なかなか楽しめます。


「The Distance After Midnight」「忘れゆくには美し過ぎる...」はびっくりするくらい邦楽チック・・・というかGLAYぽい曲調。氷室さんをルーツの一つとするGLAYを考えると、似ていても仕方ないとはありますが、今回は歌詞もあってかGLAYから逆輸入された感じです。


「忘れゆくには美し過ぎる...」は歌詞のタイトルを見た瞬間、氷室さんらしからぬものだと思っており、またGLAYが噛んでるのかなあと推測したらビンゴ。そりゃ氷室さんはキザな歌詞を歌うことが多いですけど、GLAYが歌うキザな歌詞とは趣が異なっておりまして、このようなタイトルは無いのですよ(日本語表記では)。


「The Distance After Midnight」は本当にベタな歌詞です。「愛しているのさ...この想いは変わらない 離れていても 心はそばにいるから」という非常にわかりやすい、多用されてる表現。曲自体は悪くはありませんが、ちょっと歌詞が単調すぎる気がします。若い人には良いかも知れませんが、年季が入った大人なイメージがある(個人的に)氷室さんにはちょいとあってないような。


これが森雪之丞さんがやったなら、もっとくさくてキザな歌詞をかいてくるだろうに。松井さんでもいい。消費者はこんなわかりやすいのを求めてはいないんだ!(自分だけですか、そうですか)。でも、「忘れゆくには美し過ぎる...」の「じょにーびーくー♪」とサビで歌ってるのが、妙に好きです(笑)。ビクビクしてる感じが特に。ライブでやったら、大声で歌ってると思います。多分。いや絶対。


「Sarracenia」はこのアルバムの中で際立ってるものです。余計なサウンドをつけず、氷室ボイスを聴けといわんばかりのものです。たるい感じがなんともいえません。余談ですが、「Sarracenia」を調べたら花の一種みたいなのですが、これでいいのでしょうか。食虫花みたいなのだけど、あってるのかなあ・・・。


「Time for Miracles」はカバー曲。原曲も聴きましたが、そのイメージを壊さないまま、氷室さん風にうまく仕立ててあります。今までも氷室さんはカバー曲してますが、意外とバラードは初ではないでしょうか。ノリの良い曲はよくやってますけど、バラードはあんまし聴いた記憶がないもので。


「Never Cry Wolf」はミディアムテンポの落ち着いた曲。しっとりと聴いてみたい時にいいでしょう。サウンドもバリバリのロック音色を使用せず、クリーンな仕上がりとなっており、このアルバムにおいて一息つかせるような存在。腰を置いて聴いてみると吉。


「Traumatic Erotics」はやけにポップなギターから入ります。妙に可愛げを感じるのは自分だけでしょうか。そのせいか、氷室さんの声色も可愛く聴こえます。軽いノリが特徴のこの曲、実に自分好みで良い感じです。


「ばんぐざびー」(氷室さんが自分でこういう風にいってました)は、お家芸であるエイトビートなナンバーです。シングルで発表されておりますが、実に氷室さんらしい得意曲。長年こういうタイプの曲をしているにもかかわらず、決してワンパターンとならず、精度が上がってきてるのが素晴らしい。


歌詞もSPINさんが書いてますが、「愛」という言葉を使ってない曲でありながら、格好良いものになってます。サウンドも重厚なものになりながら、キレのあるサビを気合の入ったボイスで歌ってるのが良い。途中でスローテンポになる演出も不自然でなく、思わず聴き入ってしまいます。


「Across The Time」はミディアムな曲調です。バラードに近いような近くないような微妙な雰囲気を持ちます(どっちなんだ)。でも歌詞を見てみると、「お前だけでいい・・・」を切々と歌い上げてるので、バラードに近いのでしょうね。長年つれそった相手との感情をテーマにした曲は、本当に氷室さんとイメージがあってると感じるので、素敵な曲。


「Safe And Sound」は外タレ(死語)とのデュエット曲。My Chemical Romanceというバンドのボーカル、Gerard Wayさんとです。詞も曲も彼がやっております。骨太のロックてな感じの曲調になっており、サウンドもシンプルかつ重みのあるものとなっております。英語の歌詞ですが、こちらも「ラブ」という言葉を使わず、生き様って奴をテーマにしたものになっております。


***


このアルバムを総括すると、とってもイケイケな曲が多いです。本人もいっております。前半は激しく、後半はゆっくりになっております。私好みのバラード曲がないのが残念です。カバー曲はバラードですが、氷室作ではないのでそこまで入れ込めないのが現状でございます。


その中で異彩を放ってるのが「Sarracenia」です。ビート打つような曲ではなく、完成度の高いものになってますね。自分流でいうなら変則的な曲。聴いてると、まさしくアーティストって感じの音楽を感じられます。この点が結構気に入っております。


カバーやデュエット曲は面白いといえば面白いのですが、肝心要のバラードが欠けてるので、個人的には少し物足りない気が。「Across The Time」がはいってるので、まだしも助かりました。氷室さん本人は「普段作らないような曲をやってるし、面白い曲だと思う」とコメントしてました。その影響かな。


個人的にこのアルバムは、イケイケ曲が多めで、氷室さんらしいマニアックな曲が「Sarracenia」だけなので、構成上はちょっと物足りない気がします。イケイケも嫌いじゃないのですけどね。でも、これはこれでライブでは盛り上がりそうな曲ばかりなので、今後の氷室さんのライブにどう関わってくか楽しみです。