バナナマン単独ライブ「ペポカボチャ」@シアタートップス/2002.8.3
初バナナ単。フリートークとか人柄(?)とかは本当に好きだけれど、実はネタについてはイマイチ感が拭えないワタシ。
面白くないわけじゃないんだけど、なんだか肌に合わないというか。
だから今回の単独も実はそんなにやる気があったわけじゃなく、やってるから行っとくか程度のものだった。
場所はトップス。こちらも初。キャパは…うーん、200くらいか?後方の席はほとんど関係者席だった。
舞台には真っ白な壁に出口が3つ。真ん中には灯りのついた台の上にオレンジ色のカボチャが1個。
壁の右上に照明で「pepo punpkin」…うーん。オシャレだ。座席に置いてあった小冊子にはスペシャルサンクスの欄に
ニイルセンの文字が。道理で。このセットとこの雰囲気はよい。よいよー。(至極ご満悦)
客席は麺のときに勝るとも劣らないほどぎゅうぎゅうのぎゅう。桟敷も階段もいっぱいいっぱい。消防法にひっかかっとるな。
<pumpkin>
日村の部屋でカボチャをはさんで座っているふたり。突然設楽が日村に「何でもいうこときく俺の奴隷になってくれ」と言い出す。
断る日村に「このカボチャあげるから」とさらに言うがやはり断られる。
設楽「じゃあこのカボチャ1個分の価値ってどのくらいだと思う?俺がカボチャ1個あげることに対してお前は何をしてくれる?」
そこから展開されるめくるめく設楽理論…そして丸め込まれる日村…その屁理屈の応酬が回りくどくて面白い。
カボチャ1個でいつでもどこでも犬のマネ…殴られるのもタダ…あまりの理論の展開に詳細は一切憶えてません(笑)
結局はタダで日村「あ、俺何でもいうこときく奴隷になるわ」ということに。物語のはじまりを予感させる小品。
確かここでオープニングVだったと思う。相変わらずオークラさんのセンスの良い映像世界。かっこいいが目まぐるしくて目が疲れた。
<オフィスのオバケ>
会社にて。設楽が忘れ物を取りに戻ると、日村がひとりでクロスワードパズルをやっていた。帰ろうとする設楽に、「部屋のクーラーが壊れて
家に帰れない。誰もいないオフィスにひとりでいるのも怖い。だから帰るな」と言う。
日村「なんかいそうで怖いじゃん」
設楽「俺、霊感めちゃめちゃ強いですけど今はいませんよ」
「嘘!じゃあその霊感使って俺のことわからない?」という日村に、渋々設楽は話を始める。
設楽「じゃあちょっとだけ…霊感が強いからわかるんですけど、日村さんはエロいです」
日村「え?」
設楽「あとワキガです」
日村「そうなの!?ていうかそれ霊感関係ないじゃん!」
…これ…この前の宇田川のお悩み相談室でやってた話だ…(笑)
「霊感強いなら恐怖体験とかあるだろ?そういう怖い話が聞きたいの俺は」という日村に再び話し始めるが、どれも怖くならない。
コロボックルの話が非常にウケました。日村「お前ホントは霊感なんて全然ねえんじゃねえの?」
ラスト、話し終えて帰ろうとする設楽に日村「お前ホントに霊感強いんだな。だって俺が見えるんだから」
…というシックス・センスなお話でございました。
ネタ中、あまりにも語気荒く日村さんが喋るから、勢いでツバが飛びまくってました(笑)
SEネタ。外人コーチの運動部の話。設楽さんの外人口調が絶品!これどっかに収録されてないのかなあ?もう1度聞きたい。
ネタ終わりには「バナナマン、ペポカボチャ」とふたりが言うジングルが。これがまたよくできてる。
<ブルーフォーブラッフォー ガングリフォン>
バスローブ姿で日村登場。台詞は一切なしで、録音された台詞に合わせてジェスチャー。
彼はブルーフォーブラッフォー ガングリフォンという競技(?)のプロ。
そこに通りすがりの一般人・設楽が現れて、日村は彼に向かってその秘技を披露する。それだけ(笑)
でもそのブルーフォーブラッフォー ガングリフォンていう技がもうめちゃくちゃもいいとこで、しかも日村さんの動きがおかしくて
始終笑ってました。ホントおかしかった。閑話休題みたいなコント。
<secretive person>
暇そうなふたり。
日村「車でもあればどっか行けるのにな。ぱーっと海外にでも行きたいなあ。彼女がいればなあ」
設楽も「そうだなあ」とうなずく。しばらくした後に、設楽「じゃあ、俺車出そうか?」
日村「車?家の?」
設楽「ううん、俺の」
日村「なーに言ってんだよ。お前車持ってねえだろ」
設楽「持ってるよ」
日村「ウソ!?買ったの?」
設楽「懸賞で当たった」
日村「えーーーっっ!お前何でそういうことを俺に言わねえんだよ!」
設楽「…訊かれなかったから…」
そんな感じの応酬が延々と続き、日村初耳の設楽情報が次々と飛び出してくるという、決して派手さはないんだけど
どこか日常的な匂いがある秀逸なコント。「訊かれなかったから…」とひょうひょうとした表情で衝撃の事実を語る設楽さんと
「普通そういうこと言いたくなるだろ!」と的確なツッコミを入れ続ける日村さん…ホントに、ホントに面白かった。
これが今回のナンバー1。ありそうなシチュエーションがなんとも言えずよかった。
ただ座って話してるだけなのに、会話劇がこれほどまでに面白いとは。バナナマンの力量を思い知った。
スウェーデン人の女軍曹はあり得ないかもしれないけど(笑)、ワタシも「訊かれなかったから…」っていうことあるなって思ったりして。
<mountain>
舞台中央に箱1つ。ジャーンという銅鑼の音を合図に、赤い服を着てアタマに1本角を生やした日村と、青い服を着て2本角の設楽が
走り込んでくる。椅子に座れたのは日村。設楽は椅子取りゲームで勝てないのが悔しくて、何度も勝負を挑むが1回も日村に勝てない。
ゲームを変えようと自ら提案して押し合いをしても負けてしまう。
設楽「弱くなんかないですー。たまたまお前の得意分野だから勝てたんだろ」
次はひとりが腕を前で交互に振って、もうひとりがその間にどのくらい連続で手を通せるかというゲーム。
やっている間にふたりの手がぶつかってふたりともものすごく痛がる…バチッって音したもん…(笑)
何やってもダメな設楽に日村「俺たちは決まりでひとつの山にはひとりしか住めないことになっている。だから最後にもう1回勝負して、
お前が負けたら俺がこの山を出ていく。お前みたいに弱いやつは、他の山でやっていけるわけないからな」
設楽「…最後…」
そして最後の勝負の銅鑼が鳴る。駆け込んできたのは日村ひとり。
日村「あいつ…」
赤鬼と青鬼だったんですねー。そうだろうとは思ったけど、あの角はどっから見ても鬼の角じゃなくてユニコーンとかの角だよ(笑)
ちょっといい話…みたいな。昔読んで大泣きした「泣いた赤鬼」を思い出しちゃったりして。
<赤えんぴつ>
チューリップハットをかぶったおーちゃん(設楽)と赤いタンクトップでギターを抱えたひーとん(日村)のフォークデュオ。
本日も非常にローテンションのぼそぼそ喋りと一昔前にあったようなパンキッシュな歌詞を乗せた四畳半フォークで
今夜もワタシたちを魅了します。
いつものテイストの歌の後に、披露された「自転車」という曲は普通に爽やかな曲で、コーラスまでもキラキラした感じの
赤えんぴつっぽくない曲。曲の途中でひーとんがいきなりおーちゃんを突き飛ばす。ごちんって音がして後ろに倒れたまま
動かないおーちゃん。
ひーとん「ご覧の通り、うちのボーカルが歌えるような状態ではなくなったので帰ります」
そう言っておーちゃんを抱き起こすひーとん。「なんで?なんで倒した?」と抱き起こされながらも抵抗するおーちゃん。
そのままつかみ合いになってふたりとも倒れる。ひーとん立ち上がって泣きじゃくりながら、
「お前変わったよ!何だよこの曲、売れるぞ!こんな売れ線の曲書いて…赤えんぴつは四畳半フォークを目指してるんでしょ
!?」
おーちゃん、マイクのところまで這って行き「ごめんなさい。確かにひーとんの言うとおりです。僕は、売れるためにこの曲を書きました。
なんでかっていうと、僕に子供ができて、それでお金が必要になって…」
この台詞のとき、ちょっとどきっとした(笑)
ひーとん「え、そうなの!ごめんね、知らなかったから…赤えんぴつが歌えばそれはもう赤えんぴつの音楽だよね」
仲直り。大団円。
おーちゃん「ここ出たとこで、赤えんぴつのテープが売ってますんで、よかったら買ってください。。1本300円です」
…このテープ、ホントに売ってたらしい。終演後は物販ブースに一瞥もくれず帰ってきてしまったのでさっぱり気づかなかった。
うっそーん。買ったら聴くのかと問われても微妙だけど誰かに買わせて聴きたかった(ひどい)
<puke>
設楽の部屋に帰ってくるふたり。日村は酔っぱらっており、設楽の部屋に泊めてもらうことに。
「シャワーは?」という設楽の問いに「気を遣うでないぞ。タオル1枚あれば十分じゃ」とおどける日村。
タオルを借りて設楽がシャワーに消えた後も独り言をぶつぶつ呟いたりふらついたりして酔っぱらいの日村の演技が秀逸。
と、突然気持ち悪くなる日村。我慢しきれなくなって部屋の中に吐いてしまう。あーすっきりした、というのも束の間、
一気に酔いが吹き飛んで正気に返る。ここから彼のゲロ隠し大奮闘が始まるのでありました。
お香を焚いたりタオルで隠したり、設楽にばれないように必死で振る舞う可笑しさが大爆発。
オチもまあ見事で…正真正銘の下ネタではありますが、その演技力に脱帽そして大爆笑。
このとき会場にはうっすらとお香の香りが漂っておりました。ちなみにタイトルのpukeというのは異国語で(何語か忘れた)「吐瀉物」という
意味だそうで。しかも「ピューク」と読むそうです。ずっと「プケ」だと思ってた…
<rain>
ふたりともスーツ姿。手には透明のビニール傘。バスを待っているふたり。
洒落た会話劇。日常のちょっとしたペーソスのきいたやりとりの末に、ふたりで軽くダンス、そして暗転…。
上手く説明できないけど、なんだかエスプリが効いていてオシャレで本当にステキな作品。
「ネタ」とも「コント」とも呼ぶのをためらうような、まさに「作品」。バナナマンってこういうのやるんだっけか?新たな試みか?
そしてやっぱりスーツ姿のふたりはとっても凛々しくてかっこよいのでした。スーツは男の戦闘服。
暗転した後もあまりの衝撃と自分内のボルテージの上がりっぷりに若干興奮気味でありました。
<思い出の価値>
中央に机。机の上にはカボチャ。
コピーライターの設楽は、部屋でカボチャのコピーについて頭を悩ませている。時折入る仕事の催促電話。
そこに友人の日村が駆け込んでくる。慌ただしく部屋をチェックして回る日村。どうやらケンカをして一緒に住んでいる恋人のカオリに
逃げられてしまったらしい。設楽はカオリの元彼なので来てやしないかとここまでやってきたという。
「カオリは来てねえよ。仕事の邪魔になるから帰ってくれ」と再三設楽が言うも、日村は居座って動かない。
なんとケンカの原因はカボチャらしい。カオリはカボチャ料理が得意で毎日毎日食卓にカボチャの煮付けが上るので、
お腹が空いていた日村はつい怒鳴ってしまったらしい。
「電話かかってきたりしてない?」という日村に「してねえよ」と答える設楽だが、設楽がちょっと席を外したときにかかってきた
見知らぬ電話番号をめざとく見つける日村。「これカオリの番号じゃん」半泣き日村。そこで日村は設楽に電話して俺のことを褒め称えろと頼む。
設楽「あ、もしもしカオリ?俺。わかる?あのさー、日村超いいヤツだよー」明らかに不自然でおかしい。
設楽「あ、さっき電話くれた?うん。俺がカオリの声忘れるわけねえだろ」…ぎゃー。非常にかっこいいんですけど。鳥肌立ちましたワタシ。
ほどなくするとカオリは電話口で泣いちゃったらしい。
日村「お前ダメだよ!優しくされたら女は落ちちゃうパターンだよ!」
電話口でうるさくしてるのでカオリが「誰がいるの?」と訊いたらしい。
設楽「あ?誰もいないよ。犬かな。犬飼ってんの」慌てて犬の鳴き真似をする日村。「もしよかったら犬見に来る?」
日村「ダメだよ!犬が俺ってばれちゃうじゃん!断って断って!」
その後も仕事の電話とカオリの電話が入り乱れたりして大混乱。
最後はついに観念して日村がカオリの電話に出ることに。カオリは設楽の家の傍まで来ているらしい。
「俺と設楽とどっちが大事なんだ!そして俺と設楽、カボチャに似てるのはどっちだ!あ、切れちった」
落ち込む日村。
設楽「好きでもねえヤツと2年もつき合うかよ。それがお前らふたりの思い出の重さだって。思い出の重さだって」
フレーズを繰り返しながら書き留める設楽。日村「何してんだよ」設楽「いい言葉だから何かに使えねえかなと思って」
設楽の携帯にカオリからメールが届く。それは「カボチャ料理は本当に好きな人にしか食べさせない、設楽君には相談に乗ってもらいたかっただけ、
これからうちの犬を連れ戻しに行きます」というカオリからの仲直りメールだった。
日村「二年間のカボチャの重さは、ふたりの思い出の重さなんだね」
仕事の邪魔になるから早く帰れ、という設楽に日村はありがとうと言って出ていく。仕事先に電話をかける設楽。
「コピーできましたよ。『カボチャの重さは、ふたりの思い出の重さ』。いいでしょう?」
…なんともハートウォーミングなお話でした。最初と最後がリンクしているところも小気味よく。タイトルからして期待させるじゃありませんか。
この手の話のリアリティは、このふたりにしか出せないだろうなとつくづく実感。演じ手としての、そして作家としての彼らの力量に
改めて感心させられることしきりでした。優しさと愛に溢れた秀作。
〜エンディング〜
設楽「今日はよかったですね。客席と舞台の呼吸がぴったり合った感じで」
日村「汲み取ってくれた感じですよね」
設楽「俺途中でホントに脳震盪起こしてさあ」
日村「大丈夫?」
赤えんぴつで日村さんにどつかれたとき、ごちんって音がしたのは本当にやばかったらしく。
設楽「一瞬記憶飛んだもん」
日村「俺は吹っ飛ばないんだよね」
設楽「それは重さがあるからでしょう。楽屋でもこの人だけ暑い暑い言ってて、冷房がんがんかけてみんなが寒がっても
ひとりで暑がってんの。『俺だけ暑いのなんで?』ってそれはデブだからでしょう」
シャツを脱いで日村「なんかさー、どんどん裸の大将みたくなってってるの(笑)」
満身創痍なふたり。体を張ったネタが多いっすからね。
腕を見せると痛々しいアザの跡が…mountainのナイフ的ゲームで相当腕がやばいことになってます。
設楽「だからグッズ買ってください(笑)」
<総評>
もう1回と言わず何度も観たい!というのがストレートな感想。
バナナマンってこんなんだっけ?Mちゃんに借りた「Monkey time」のDVDをまだ観てないので(汗)なんとも言えませんが、
ワタシの知っているバナナマンはもっと違うテイストだったはず。
何から何までワタシ好みの展開じゃありませんか。冒頭で「バナナマンのネタは苦手」とかほざいてましたが、
エンディングが終わって客電がついた途端「早くDVDにならないかな!」と叫んでおりました。
カボチャというモチーフ、さまざまなテイストのコント、心温まるラスト、そして循環する話。
某コンビを彷彿とさせる要因もありましたが、それを差し引いても含めてもまるごと抱きしめて頬ずりしてしまいたくなるほど
愛しくて、笑えて、満足できる作品群でした。
不思議な名前のカボチャはとってもミラクルな味で、あっという間にワタシを至福の時間に連れて行ってくれました。
なんて素晴らしい。でも相変わらずテレビでは日村さんの身体的特徴を活かしたネタとかやっていて苦笑してしまうのです。
だけどもう大丈夫。バナナマンはこんなに才能があるんだから。もう、まるごと好きになれるような気がします。