試合開始。
第1試合。
海外の人どうしの闘いは、劣勢のシウバがカカトを固めて逆転勝ち。
試合が始まると、モニターからは解説者の音声が切れ、
肉弾の音とレフェリーの声だけ(これらはマイクで拾ってる)が響く、なかなかストイックな雰囲気。
俺の席は2階席だったので、寝技になるとさすがに何やってるか分からん。
でも大丈夫マイフレンド。
周りの席の野郎どもは残らずマニアで、細かい解説が自動的に入る。
やつらが皆、「太っている」のはなぜかは知らん。
第2試合。
イズマイウと北野監督推薦大山。
が、これがジャパン惨敗。
大山選手は柔道の期待の星だったらしく、
すぐ自ら寝転がって寝技志望。
なのに、あいてに常に馬乗りになられ、逆に寝技をキメられる始末。
俺の前方に大山選手の大ファンとおぼしき一団がいたが、
無念にも彼の攻勢の瞬間はゼロであった…。
第3試合。
ブラガVS松井。
これがヤバい。
すでに前の試合で観客のフラストレーションが右肩上がりだったが、
ここで高度成長期に突入。
松井選手も寝っころがったまま、立ち上がってこない。
作戦かもしれんが、打撃戦をさけてる、としか映らなかった。
周りのマニアの解説によると、ブラガも打撃戦をかましたく、
あえて松井が立ち上がるのを待ってる様子だと言う…。
結果は余裕の判定負け。
ゴングが鳴った瞬間、会場のほとんどがトイレや売店に席を立った。
(つまり判定の結果を待つ気なし)
俺は格闘技の門外漢であり、あくまで印象でしかない、とお断りして言うが、
「とてもいさぎ悪い負けっぷりだった」
という感じですタイ。
ここで逆の意味にも気付きました。
真剣勝負、勝つのが至上とは言え、
「プロ」である以上、勝つにも負けるにもファンの納得を共感を得る選手が、
一流であり、人気があるのだな…と。
この間俺も放尿に行ったのだが、
皆さんやっぱり、トイレットで、「松井の屁たれっぷりが…」と、口々におかんむりだった。
場内最悪の雰囲気の中、
第4試合、ボブチャンチンVS佐竹。
俺みたいな門外漢でも、佐竹が格闘ファンに「なめられた存在」なのは知ってる。
たとえばK-1とかで、負けても、
「まぁ、佐竹にしてはよくやったほうじゃない?」
とかゆわれてんでしょ?
しかし、佐竹はかましてくれました!
俺試合観てて思ったのは、
「クラスのお祭り男が、皆の期待に応えて奮闘する様」
で、
「クラスの皆も『あいつまた空回りしてるよー』とかいいつつ、見守ってしまう様」
という、中学高校での淡いシチュエーション。
佐竹は完全な打撃戦に出たのだ。
で、逆にボブチャンチンに強烈にボコられるんだれど、退かない。
佐竹はローキックをちょこちょこと繰り出すんだけど、
俺が観ても「全く効いてない」(音がすでにしょぼい)。
でも退かない倒れない。
観客はいつしか、へなちょこローキックが、
「ぺしゃ」
と当たるたびに、
「うおい!うおい!」
と盛り上げる。佐竹応援モードか。
佐竹さすがに2Rラスト1分には耐えきれず、転がされマウントをとられるが、
(その時場内、ため息と共になぜか笑い声も交じる)
ボコられながらゴングまで耐え抜く。
なんと。
客は大喝采だ。
最終3R、やっぱり打撃の応酬ののち、佐竹はマウントを取られる。
その瞬間、客の一人が、
「佐竹、ありがとうぅ!!」
と叫んだのは、俺も大笑いしたが、半分は賞賛、と受け取ってもイイだろう。
またもボコられたままゴングを迎え込む佐竹。
文句無しの判定負けだが、佐竹には大歓声だ。
クラスの空回りお祭り男は、教室の雰囲気を読み、自分の力量をさておき、期待に応えようとした。
佐竹が強い、と思える瞬間はマジ1秒もなかったが、
試合後、佐竹のことを屁たれよばわりしている奴は、誰もいない。
じつにやんちゃな36才だと思った。
第5試合。
この試合後、休憩が入る。
つまり前半のトリ。
22才の新鋭ヒーリングと「霊長類ヒト科最強の男」という肩書きを持つ、マーク・ケアー。
ケアーは肩書きに相応しい戦歴を残して来ているのだが、
ここ連敗中で、今回負けたら、「霊長類ヒト科最強の男」を返上するそうです。
あらら。
この試合から、なんか入場に時間をかけ出す。
入場の音楽も今まで適当な曲がかかってたが、このあたりから、
「御本人の希望」が反映された選曲っぽい。
いままで、「戦場のメリークリスマス」をトランスにしたのとか、かかってたから!
凄いヨな。
で、このふたりは70sロック合戦。
まず青コーナーが、超印象的なBPM遅めのパワードラムで姿を見せる。
ドラムにあわせ、ようやくエスニックなリフが聞こえてくれば…。
ほらほらフィンズドラマー、クロ氏も納得!
「カシミール」の始まりだ!!
やっぱこの曲かっちょいいー。
ハコがでかいだけに気分はMSG?
対して赤コーナー。
は、イントロでいやでも分かり過ぎる、
クイーンのアレだ。
これさー、色んな人がやってるんじゃないのぉ?
ありがたいことに、ドラムの
「ドンドンパッ!ドンドンパッ!」
に合わせて、選手本人は勿論、セコンド達までも、
腕をまっすぐ振り上げる。
これ、軍服姿だったら、「ハイル、ヒットラー!!」だぜ?
不安になってきました。
と、いうのはフレディの雄叫びがおわり、ギターソロが始まってしまったというのに、
選手はまだ、リングから遠く。
曲、おわるぞ?
続けて次の曲に入るつもりか?
「おれたちはチャンピオンさ〜」って?
あれは試合後向きだよなぁ。
って取越し苦労。
ループしました…。
で、試合。
これが大変。
ケアーがボクシングでいう、クリンチ(打ち合わずに抱きつく)しっぱなし。
ヒト科やばし。
レフェリーの、
「アクション!!」
という声もむなしく、静まり返るリング上。
ほんとに無音。
観客もいよいよ騒ぎ出す。
「(レフェリーに対し)てめーが、アクションなんだよ!!」
と、まずは膠着状態をさばかないレフェリーにヤジの嵐。
そっからはもうブーイング一直線。
まずい。
かなーり、いただけない雰囲気。
モニターに高田がちらりと映るや、
「たかだぁ、お前がやれ」
とか、もう気の抜けたヤジに移項。
試合中、席立つ人が続々。
3Rの終盤、ようやく、膠着がとかれたすきをヒーリングが狙い、
ケアーに膝蹴りの連打。ケアー抵抗できずで、レフェリーストップ。
さすがにそこは大いに湧いたが、なんだかなぁ…つー読後感。
第4試合のふたりの頑張りが帳消し。
とりあえず、ケアーは肩書き返上、というより、
もう呼ばれないんじゃないの?
俺が主催ならもう呼ばないよ。
強い弱いじゃなくて、シャバいから。
興行が台無しになりかかったからね!!
(つづけ)
註/「シャバい」…80sフリークである、キャプ徳蔵が復活させようと実践中の罵倒語。
『湘南爆走族』参照だ!!