神の舞=玉三郎の鷺娘
〜坂東 玉三郎舞踊公演〜
2006年3月5日PM1:00 開演
愛知県芸術劇場大ホール於

藤娘と鷺娘の公演のちらし

チラシの裏
| 不世出の歌舞伎役者、坂東 玉三郎が久しぶりに名古屋にやって来る。今回は 歌舞伎公演ではなく、華麗にして幽玄、神業ともいえる魅惑的な舞(舞踊2演目、藤娘と 鷺娘)の披露である。世界的チェリストのヨー・ヨー・マの演奏でバッハの 無伴奏チェロ組曲を舞ったことは記憶に新しい!歌舞伎ばかりでなく、多才な活動を 続け既に大御所となった玉三郎であるが、私は誠に残念ながら、まだ生の公演を 鑑賞したしたことがないのである。かの有名な写真家、篠山 紀信氏が彼をほって おく訳がない。彼の撮影による玉三郎を写真集ではよく見てはいるのだが・・・・・。 各種雑誌などでも、その妖艶な魅力はしばしば充分紹介されてきて、彼はあまりにも、 有名である。この女形(おんながた)の第一人者をTVや雑誌、写真ではなく、 やはり、この目でその舞姿をしっかり見たいものだ。その機会が、とうとうやってきた。 鷺娘とあらば、行かぬはずがない。あまりに遅すぎたが・・・・?! 特に今回の恋の妄執に苦しむ ”鷺娘”(さぎむすめ) は大変に楽しみだ。 どのように鷺の精が彼に乗り移り、いかなる精神性を表現するのか・・・・・ そしてはかなく消えていく様 等想像するだけでぞくぞくしてくる。 3月5日を一日千秋の思いで待っている!! 2006年2月5日 公演後の感想 3月5日やっと名古屋も春めいてきた。本当に今年の名古屋の冬は大変な寒さであった。 何十年ぶりかの大雪(23センチ)も降ったし、東北地方並の平均気温だったそうだ。 しかし今日などは、外出がそれ程おっくうではない暖かさになった。もう3月だもの。 さて、初めて観る、 玉三郎 の鷺娘と藤娘、名古屋都心、栄にあるオペラ劇場 (2500名収容)には、さすがに大勢の観客が集まった。ほぼ満席である。私はS席を買った にもかかわらず、入手が遅かった為、3Fの最後列の中央席(これでS席?)で大舞台が小さく 見え、オペラグラスで一生懸命みても、顔の繊細な表情までは残念ながらよく分からなかった。 だが、想像したとおり、本日の主役が舞台に出てきた瞬間、(天性なのであろう)、 品位のある美貌に大感激! そしてなにより、長身で面長、特に”鷺娘”での、恋の妄執に 狂う注目の踊りでは、所作がダイナミックで、やはり女性では、こうは舞えないだろうと思った。 何かに憑かれたように苦しみながら激しく舞う。そしてはかなく息絶える。 女性以上に女性らしいと彼はよく言われるが、間違いなく、世界に誇れる、数少ない役者だ! そういえば、”おやま”として、一世を風靡した、今は亡き六代目中村 歌右衛門という 名歌舞伎役者がいた。絶世の美女?で、私は確か、小学生の頃、彼の演技を見た ことがある。考えるに、音楽でもそうだが、実演は本当に素晴らしい!! 衣装の素早い 引き抜きや、美しい舞姿がきまると、そこここから拍手や、感激の溜息が聞こえてくる。 彼の魅力が、大劇場全体の空気を振動させ客席までしっかりと伝わってくる。 またこの舞踊独特の衣装の引き抜きも全く見事で、まるでパソコンのマウスを クリックすると画面がぱっと変わるように、白装束から赤の鮮やかな振袖に変わるところなど、 それこそ歌舞伎などでもよくあるが、大いに観客を沸かした。そして彼は、身体が 大変柔らかく、ちょっと先日のフィギャースケートの金メダリスト荒川選手のイナバウアーを 思い出してしまった。上方を見て身体を少々ねじり、後ろに反らせる振りが、よく出てきたが、これが 彼の最も美しいポーズに私には思えた。2003年、襲名公演で見た、市川 海老蔵の助六も、 素晴らしい色男であったが、玉三郎、御歳56才、円熟した美しい舞を見せてもらった。 藤娘の舞台装置は従来と変え、銀屏風に藤が振り注ぐように書かれたものを 使用していてこれも新鮮だった。長唄、囃し方の演奏もなかなか見事であった。 踊りが終わって、最後に舞台から落ちてしまいそうなほど端まで彼はやってきて 何度も丁寧にお辞儀をし、鳴り止まぬアンコールに応え、今度は舞台の中央に戻り またも正座して深々と挨拶をしたところなど、やはり役者と言うのはお客様あってのもの なのだなあと、つくづく思った。次回はなにか歌舞伎で彼のおやまをみたいものだ。 さらに、活躍の場をどんどん広げていってほしいものだと思いながら、幸せな気持ちで帰宅した。 両演目の上演時間:それぞれ約25分 2006年3月5日 |
ピアニスト 森 恵美子