耐震強度偽装問題 審議 内容 を見やすくしてみました   home
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    164-衆-国土交通委員会-20号 平成18年05月16 
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遠藤(宣)委員 おはようございます。自由民主党の遠藤宣彦でございます。 お忙しい中、参考人の先生方には当委員会に来ていただきまして、本当にありがとうございます。 昨年発覚しましたこの耐震偽装の問題から、さまざまな議論、そして、その中からさまざまな問題点が提起され、議論をされてまいりました。当委員会を初め多くの方々にいろいろな議論をしていただいて、問題点もいっぱい出てきたと思いますが、私自身もいろいろな資料を読んでいろいろな勉強をさせていただいたんですが、どうしても素人の域を出ないということで、今回、あえて住民といいますか使う側の立場で、素朴な疑問をちょっと先生方にお伺いしたいなというふうに思っております。 また、今回のこの改正というものが恐らく最終形ではなくて、これからよりよい形に行くための一つの一里塚であるという認識で問題点を考えてみたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 私自身も、実は六年前に非常に無理をしまして小さい家を35年ローンで買いました。見てすぐに買ってしまったという非常に無謀な決断をしたんですが、今から考えれば大変恐ろしいことをしたなと思っているんですが、後で調べてみますと、多分うちは大丈夫そうだということで安心をしています。 言うまでもなく、住宅というものは一生の中で一回、二回買うのか、大体皆さん一回買うという非常に重要な買い物でありまして、よく言われますように、人生の大半 そのローンを背負ってやっていかなきゃいけない、そのくらい重大な人生においての出来事だと思います。

そしてまた、巷間言われておりますように、いつ地震が来るかわからない、関東の方になるのかどうなのかわかりませんけれども、私の地元の福岡でも、昨年の3月20日に滅多にない地域で大きな地震があって、すごく衝撃を受けておりまして、そういったものが相まって、今までになく、建築関係のこの問題というものが、すべての日本人と言っても過言ではないぐらい関心を持たれているというふうに思います。

 さて、今回の問題について、幾つか視点があると思います
一つは、まず、言うまでもなく原因を究明しなきゃいかぬ、何が本当に問題だったのか。これは、ここでも多く取り上げられておりますけれども。
二番目が、実際に再発防止をするにはどうすればいいのか。これが二番目の視点。
三番目が、被害者を実際にどうやって救済していくんだろう。この三つがあると思います。

 原因究明については、先ほどというか、ずっと議論がされておりますけれども、再発防止、罰則で縛るのか、あるいは、後ほど申し上げますように、建築関係者のモラルとかインセンティブをどういうふうに上げるのか、法令遵守の方向にどうやって持っていくのか、こういったことがあると思います。 また、被害者救済についても、後ほどこれも申し上げますけれども、知らなかったから全部その住民が悪いというのか、あるいは行政が全部責任を持つのか。後ほど弁護士の先生にお伺いしたいと思いますが、過失割合とか、そんな観念も出てくるんじゃないか、こんなことが今頭にあります。 以上、原因究明、再発防止、被害者救済という三つの視点を持ってちょっと御質問をさせていただきたいと思いますが、まず、再発防止、これについても幾つかの視点があると思います。

 まず、建築関係者の人の担保。建築士、建築家、建築に携わる方々のその信用、この人は信用できるんだという担保をどこでとるのかという問題が、どうしても私のような素人からすると頭から離れない。さらに申し上げますと、そもそも今日本にある資格というのはどのくらい信用できるのかなという気持ちがどうしてもぬぐい切れません。 最近は、医者にしても弁護士にしても、あるいは私も出身者ですが国家公務員にしても、本来その資格を持った人は、きっとこれだけ立派な人だろう、こんな能力があるんだろうというその信用がいろいろな分野でずるずると崩れてきている。そしてまた、資格の恐ろしさというのは、そのときに資格を得たからといってある時点においてその能力が保証されるわけではない、こういったことが言えると思います。  ある私どもの自民党の先生、弁護士出身の先生に、先生、弁護士出身ですか、じゃ、すぐに法廷に立てますね、こういうふうに言ったら、いや、それは何年もメスを握っていない医師の先生に手術をしてもらうぐらい怖いんだよというようなことがありました。

 つまり、何が言いたいかといいますと、資格を取った段階でいかに優秀であっても、常に腕を磨いていなければその資格というものはかえってその能力についての錯覚を引き起こすんじゃないかという思いが、どうしても私自身はぬぐい切れません。 また、こういったような地震についての不安が高まっている、そういった時代、あるいは環境の変化に応じて求められる資質というものを常に見直さなければならないということが言えると思います。 そして、そこでお伺いをしたいんですが、冒頭申し上げたように非常に素人感覚で御質問させていただきますが、例えば、私たちが持っております車の免許、この免許でさえ更新がある。常にその能力を、免許を持っている人に対してチェックをする機会というものが十分担保されているか。広く見れば、昨今言われているように、先生の教員免許にしたって資格をちゃんとチェックする場面が必要なんじゃないか。最高裁の国民審査でも、何を手がけてどういうようなことをやってきたかというチェックの段階がある。この免許更新というものについて、どういう形で考えればいいのか、特にこの建築という関係について、これをぜひお伺いしたいと思います。

 小倉参考人と宮本参考人に、ぜひ、免許の更新とか資格のあり方というものについて御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。


宮本参考人 ただいまの御質問につきましてお答えしたいと思います。 まず、我々建築士の資格というのは、設計監理等を行う者の資格という業務独占を与えているわけです。それから、士法二十一条で、建築士の資格はあるんですけれども、「その他の業務」という仕分けがございまして、実は、私ども今まで一番頭を悩ませてきましたのは、設計監理をやっている資格を業務独占でやっている人が有資格者の約30%ぐらいなんです。その他業務についておられる人が大体70%ぐらいという実態がございます。 そういう中でございまして、建築士会連合会としましては、ちょうど、約50年間この問題を、ずっと登録更新制度のことを、どうやったらできるかという問題を議論してきたり 考えてまいりましたし、それから、何としても実態を把握するにはどうしたらいいかということをやってきましたが、なかなかそれができませんでした。 それで、今回、私ども士会連合会では、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、その他業務についておられる人たちのことを無視して、設計監理という業務独占だけを持っている人に対することだけに焦点を合わせてきたのでは、やはり、このような偽造事件といいますか、そういうことがまた再発するだろうと。

 それからもう一つは、登録更新ということは私は非常に大事だと思いますし、私ども、専攻建築士制度をスタートさせて3年になるんですけれども、5年ごとにCPDといいますか、そういった研修をきちんとやって、それを認定して、そのときに登録更新をぜひやっていくというような制度を今やっておりまして、まだ経緯としては3年しかありませんが、これからも実はそれは全士会的に続けていきたいと思っております。 お手元の資料に、このブルーの、ちょっと私、このような専攻建築士制度、こういった資料を用意いたしましたけれども、また後ほどご覧になっていただきたいと思いますが、結局、我々は、その他業務の人も含めて、設計監理の業務独占を持っている人と同等に資格を扱っていかなければいけないのではないかという観点から、このような制度を、我々はちょうど職能制度とたまたま呼んでいますけれども、資格で縛るんじゃなくて、職業分類して我々は自主的にやっていこうではないかと。こういうことを、実は5年前から議論をしたんです。そして、この事件がまさか起きるとは思いませんでしたけれども、案外起きるのではないかと思いました。

 それからもう一つは、その他業務という70%の方が、何といいますか、名義貸しを一番し易い人たちではないか ということも内部で議論してきました。そして、30%の業務独占がある方は 自分でやっていらっしゃるから名義は貸せませんが、結局、70%の方を何とかして掌握して、そういうところから名義貸しも防ぎ、それから、自分の仕事に対して、社会に専門的なことを開示して、そして責任をとっていくというような自浄作用というんですか、そんなことを考えて、今このブルーのパンフレットをちょっと用意しました。また後ほどごらんになっていただきたいと思っています。


小倉参考人 再発防止に関してですけれども、現状、今までにも述べられていますように、建築士制度そのもの、建築士の例えば総数にしてもにしても、いろいろな役割を果たす人建築士というふうな一つの資格で定められているというところが、いろいろなことが起きる一番大きな理由になっていると思います。 私どもは、建築士の中から、それぞれの分野の一定レベルにある人たちに専門資格を与える、それで、その専門資格を与えた人たちに、重要と言ったらいいでしょうか、大切なもの、あるいは一定の、特定のものといいますか、一定規模あるいは特定の用途の建築については、その分野の設計と監理はその専門資格を持つ人だけしかできない、これは国家資格にしないと業務独占というのはできないわけですが、やはり建築士の中から、それぞれの分野できちっと仕事をする人たちを分けていくということがまず基本ではないかというふうに思っております。

 それから、登録更新でございますが、資格の登録更新というのは、国際的に見ますと多くの国でなされていまして、それの条件としては、やはり宮本会長が今おっしゃられているように、CPDでございます。常に研さんが必要で、現在でもいろいろ新しい材料、新しい法律ができている、そういう状況に対して、常に研さんをしていないと常に切れる刀が使えないというような状況にございます。 我々の協会もCPDというものを実行していまして、今、建築家の資格制度というのを独自につくりまして、これは建築士を取得してから五年以上の人に、今までの業務実績を審査しまして、よしと認めた者に関して資格を与えて情報公開をする。この情報公開をするという意味が、建築士が、この人がどういう人であるか、どういう経験をしているか、どういうCPDをとっているかということを判断する一つの根拠でございまして、日本建築家協会にアクセスすると、我々の認めた建築家というのがどういう人たちでということがわかるようになっています。

 その制度では、3年ごとに資格更新をしようと今しているところでございまして、必ずしも資格更新というのはたやすいことではございません。来年の三月に第一回の資格者1000人ばかりを更新審査しようとしていますけれども、CPDも年間36単位の勉強をしていないといけないというようなこともございます。そういうことはやはりいろいろな国の状況を見ても必要だと思いますし、そのためには、建築士が一人でいるといろいろな誘惑がございます。やはり団体に加盟して、多くの人と交わりながらともに切磋琢磨するということは、やはり人間、いずれも弱い部分がございますから、そういうことがないようにするにはやはり団体加入ということが必要かと思います。

 それから、先ほどからしつこく専門資格というふうに言っておりますけれども、建築家、アーキテクトエンジニアというような区分がない資格を持っている国は、あるいはアーキテクトとエンジニアを一緒にした資格の国というのはほとんど世界でございません。アジアの韓国、中国、シンガポール、マレーシア、タイ、どこでも、建築家技術者というのは分かれた資格になっていますし、もちろん欧米諸国もそうでございます。 これは、我が国は、士法をつくったときに、戦後の復興をいち早くなすためにこういう資格にしたんだという断り書きがございますけれども、もう今や先進国の仲間入りをしたわけですから、それぞれの役割がはっきり消費者に見える制度にすることも再発防止の重要な点であるというふうに考えます。 以上でございます。


遠藤(宣)委員 どうもありがとうございました。 今、先回りしてといいますか、言っていただいたんですが、この資格に関して見落としてはいけないことというのは、恐らくプロ意識だと思います。私は非常に俗っぽい人間テレビをよく見るんですが、昨年までやっていた、たしか日曜日の夜でしょうか、所ジョージが司会の「大改造!!劇的ビフォーアフター」という番組がありまして、こんな家をこんなに建築家が変えてしまうというので、私も毎週見ていたんですが、その中で、プロというものをと呼んでいたわけですね。 日本の社会の中でこのプロ意識というものが何で担保されているのかなというふうに私はいつも考えてしまいますけれども、これはやはり周りからの評判、その評判を落としたくないという緊張感、そして、その評判というものは何に支えられるかというと、自分が手がけたものについて世間で知られているということだと思います。

 となると、この前提は情報公開。例えば、ある建築士が手がけたもの、こんなものがいっぱいある、その建築士さんに頼むときに、心配な人は、前に手がけた物件に住んでいる人に、どうですか住み心地はと聞きに行けるような情報公開があれば、これもまた後ほど質問させていただきますけれども、自分の責任で、その情報をもとに確度の高い選択ができるということになっていくんじゃないかなというふうに思います。 そしてまた、今御指摘いただきましたように、この専門性をどこに見るかということについては、資格を多少細分化すること、あるいは試験を多段階化すること、あるいは経験と実績を加重すること、さらに報酬に反映することとか、こういった問題が恐らく出てくるんじゃないかなというふうに思います。

 今、世の中、例えば、彼は英語ができるんだよ、英検一級なんだよという時代がありました。ところが最近は、TOEICで何点、TOEFLが何点、ヒアリングではこのくらい彼は優秀だと。その分野ごとに何が得意なのかという、実は、私たちの身近においては判断基準がいろいろな細かいものが出てきて、自分の目で判断できる、自分でチョイスできる前提としての専門性の情報公開というものがこれから必要になってくるんじゃないか、この建築の分野においても例外ではないというふうに思います。

 人の担保に続きまして、私自身が思いますのは、対象物をどういうふうに担保するのか。これは、世の中いい人ばかりじゃない、今回の事件みたいなことも起きる中で、相互チェックのシステムをどうやってこの制度の中に組み込むか。政治の世界も、小学校で習ったときのように、三権分立というのがあって、チェック・アンド・バランスというのがある。悪い言い方をすれば、常に悪事を発見しようと思って虎視たんたんと見ている仕事が自分たちの業界の横にあると、いつ摘発されるかわからぬという緊張感を持つようなものを制度の中にビルトインしていけないかどうか。 あるいは、使用した材料、建築物の材料。これも非常に俗っぽい話なんですが、最近、レストランに行きますと、うちの材料は、食べ物の材料はどこの産地ですというものが出てきています。私の住んでいる家も、一体どこのどんなものを使ってやったのかというのは実は知らなかったということにはっと気がつきました。 何が言いたいかと申し上げますと、材料の、今使っているものが何なのかというものについても建築関係において情報公開ができないかどうか。こういった、使用した材料等のより多くの情報公開、あるいはチェックをする、緊張感を持つようなシステムをどういうふうにビルトインしていくかということについて、久保参考人にお伺いできればなというふうに思います。よろしくお願いします。


久保参考人 今の遠藤議員の御指摘でございますけれども、情報公開とか、一体、建築士が、自分が どういうものに携わって どういうものを作ったか という情報公開は今後どんどん進んでいくものだと思います。また、私ども建築に携わる人間も、自分たちの行った問題だとか、今ここで話題になっております継続教育で一体どういうような知識を、新しい知識を得て新しい技術についていったか というのも出していかないと、職業人というのかプロフェッショナルとしての地位を失うような体制になっていく、そういうふうに私は思っております。 後段の方の材料の使用云々ということに関しては、これから私どもがつくるものが一体どういうものでできていて、どういう性能のものかというのはやはり表示すべきだと思いますけれども、例えば非常な細部の点までいくとこれは設計図書並みの量になりますので、そのあたりはやはり職能団体というのか建設団体の方で、一体どういう表示をするかというのを前向きにずっと考えていくという方向ではないかと思います。


遠藤(宣)委員 ありがとうございました。 いずれにいたしましても、これから一生に一回の買い物をするときに、どこまで情報が公開されているのかということが非常に大きいというふうに思います。自分の、幸い今のところ被害がないんですが、一日で決めてしまった、それまでに情報もろくに知らなかった、こんなような無謀な人間の自省の念を込めて申し上げるんですが、建物それ自体についての情報をできる限り入手できるようなもの、そして、そこに、手がけた方々の能力そしてプロ意識というものを少しでもわかるような情報を得られるようなものを組み込んでいきたい、組み込んでいっていただきたいなというふうに思います。

 そして、今回の問題の中にいろいろ言われています規制緩和。規制緩和というものは、今、大きな流れの中で、事前の役所のチェックから、できれば事後チェックにというような流れとか、あるいは民間にできるものは民間にというこの基本は、私自身は決して間違っているとは思いません。しかしながら、自分たちの命にかかわるような建築の関係においては、言うなれば、安全性と迅速性のバランスをどうとるのか、そして、リスクを覚悟で購入した人間に、何か問題があったときにどのくらい責任を負わせるのかということがあります。 またまた俗っぽい話なんですが、私は、議員になる前はよく格安航空券を使って旅行に行きました。言うまでもなく、乗りおくれたらもう乗れません。リスクがあります、でも安い。こういったものが今社会にはいろいろな場面で出てきています。建築関係の人間とお話をしたときに、これを建築関係に当てはめるとどうなるのか。例えば、うちの家は震度四でつぶれちゃうかもしれないけれども、めったに地震が来ないから、普通の市価の半額の家があったらおれ買っちゃうかもしれないという人もいるかもしれない。しかし、その結果、道がふさがれてしまったらほかに迷惑かかるから、やはりそれは規制しなきゃいけない。いろいろなそういった話があります。

 極論すれば、自分のリスクでやるんだから、死のうが生きようが、おれは別に安全性の低い住宅に住んでもいいよという人がひょっとしたらいるかもしれない。そういった自分のリスクでやるということと、しかしながら、公共の安全というもののバランスをどういうふうにとっていくべきなのか、そこの線をどうやって引くべきなのかという話と、そして、仮に、安かろう危なかろうという物件を一定程度認めるとした場合、そして地震が来てそれが倒壊した場合、その危険性を事前に知っていたのか、情報公開がなされていたのかなされていないのかで随分これは違ってくる。

 日置先生にお伺いしたいなと思いますけれども、民法上も過失相殺とかそういった観念があります。例えば交通事故を起こしても、過失割合の認定、保険のときに必ず出てきます。そうしたときに、被害を受けた、地震でつぶれた側の方が、どのくらい実際それは過失として認められるのかというところは非常に大きな被害者救済の際の論点になってくると思うのですが、そのあたりについて、建築関係の特殊性を踏まえた上で、どういう御認識か、ぜひお伺いできればなと思います。よろしくお願いします。


日置参考人 まず、今震度四ぐらいで壊れてもいいというような話が出ましたが、建築基準法上は最低限の基準だというふうに決められていますから、最低限の基準を下回るというものについて、それを知らされないで買ったというところで過失を認めるというわけにはいかないかと思います。 性能評価等で基準法のレベルを上回るもの、1.5倍とか、そういうようなものがある。 それについて言うと、それぞれの選択肢で、おれは金を出してより安全なものに住むんだ、おれは ぎりぎりでいいんだという選択肢はあろうかと思いますが、最低限ですから、それを下回るというのは基本的にはあり得ないというふうに思います。 ただ、往々にして工務店や設計者から困った相談ということで持ち込まれるのは、基準法のいろいろな規定の中で、施主からも、ちょっとこれ何とかならないかと。建築士も悩んで、施主が了解しているなら目をつむるかみたいな話というのは時々聞きます。

そういった形で、施主も了解して一定の基準を守らなかったというような場合には過失相殺という問題はあり得るのかなと思います。 ただ、今回の耐震偽装に関して言うと、施主が知らされていたわけではないし、だから安いんですよと言われていたわけでもないですから、過失相殺という考え方は当たらないというふうに考えております。


遠藤(宣)委員 ありがとうございました。 いずれにせよ、こういった、それぞれの人にとって大きな買い物でありました、社会の安全にとって非常に重要な問題、この分野で、今の規制緩和の流れ、そして官から民へという流れの中で、不幸にしてこういうような出来事が起こりましたけれども、私自身は、むしろ災い転じて福となすというような形でいけばいいなというふうに切望しております。 冒頭に申し上げましたように、今回の原因究明再発防止、そして被害者救済という視点を常に持ちながらよりよい制度づくりをこれから考えていかなきゃいけない。冒頭申し上げましたように、今は過渡期だと思います。角を矯めて牛を殺すことなく、こういった流れの中でよりよい制度をつくるために、今後も、参考人の先生方のお知恵をかりながら、よりよい社会をつくっていく、よりよい安全な社会をつくっていくために私たちも努力をしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
 以上です。



○林委員長 森本哲生君。

○森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。 きょうは、参考人の皆さん方、大変お忙しい中御出席をいただきましてまことにありがとうございます。きょう、いろいろな面で御指導をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。 それでは早速質問に入らせていただきますが、まず第一といたしまして、確認検査機関の強化の実効性ということでお伺いを皆さんにお願いをさせていただきます。

 今もお話しいただいたところもあるわけでございますが、特定行政庁による指導監督、立入検査、業務停止命令の強化ということでは、民主案、政府案が同じ考え方でございます。中間検査の意義、義務づけについてどう考えられているかということでございますが、先ほど久保参考人からは一定の規模というようなことでお話もいただいておりますので、あと、皆さん方、この問題につきましては簡単にお答えいただけるかと思いますので、四人の方にそれぞれ御意見を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。


久保参考人 議員に対してお答えいたします。 一定の規模というのは、建物の大きさなんでございますけれども、建築物、地震だけではなくて、ほかの荷重にも設計しております。それとやはり、物をつくる段階において、幾ら何でも5センチ掛ける5センチの柱をつくるといったこともございませんので、一般論として申し上げて、規模の小さいものは耐力上の余裕は多いということと、それから、全建物を見たらという御意見もあるかもしれませんけれども、実効性から見て、ある程度の規模の大きいものというのが建築分科会での議論でございました。 あと、特定行政庁の話も今お答えした方がよろしゅうございますか。 特定行政庁の確認ということについては、民間開放という前回の基準法の改正時の問題が皆さん方の御指摘だと思いますけれども、私はやはり、なるべく新しい技術を取り入れて即対応できるといったことで、民間機関による確認申請というのは否定いたしておりません。 以上でございます。


宮本参考人 宮本です。 確認というのは、実際実務をやっております設計者の立場で言われていますことは、やはり相当大きな意味を持ちます。 例えば、実施設計と基本設計とございますが、実施設計が終わった段階で、それから例えば工事のための入札とか見積になるわけですけれども、その前に確認申請を出します。確認申請がおりるということは、実施設計業務が終わったということが一つの何か慣習みたいに認識されています。それほど大きな問題だと思います。そういったことが民間に移されるということは、私は大変いいことだと思っております。 ただ、問題は、民間でやるにしても、ピアチェックといいますか、チェック機能が十分働けばいいのではないかと思うんです。 と申しますのは、例えばマンションのようなものというのは、建築はどんな場合でもそうですが、同じ建物を幾つもつくっても、これは試作品と同じでございまして、自動車のように量産体制に入るものじゃありません。試作ですから、試作については、設計をやる人も工事をやる人も、お互いに中間で何回かピアチェックできるようなシステムが当然なくちゃいけないわけで、現にやっているところがたくさんありますが、私は、民間がそういったチェックをするという今の検査機関というのは、これはやはりとても大事なことではないかと思っております。 ただ、そこにいろいろ経済効率があったり、あるいは確認検査機関が、民間の機関が、サービスとかそういうことがあって今度のようなトラブルになっているわけですけれども、これは本当に、資質の問題と、それから、確認検査機関にいる人の自分自身に対するいわば自己責任というんですかね、そういうことが何か欠落していてこういう問題になっているのであります。
 一方で、我々建築士会等もそうなんですが、47士会の会長さんたちと議論したときも、いや、やはり民間はだめなんだからもうちょっと行政の方へお願いするのがいいのではないか、そういった意見の人もおりましたが、しかし、最終的には全員一致で、小さい政府という方針にのっとって民間にそれを委託されたんだから、やはりそれをきちんと民間の知恵でやるべきであるということになっております。 検査機関はそういうことでございます。


小倉参考人 中間検査の強化というのは、私は、今現状ではやむを得ないことであるというふうに考えています。 ただ、本来ならば、やはり資格者の責任として、工事のしかるべきプロセスの中で検査をする、自主的に検査をし、施主を伴って検査をするというのが本来、資格者の役割ですから、本来ならば、設計監理契約の中で、種々の段階での検査をするということをきちっとやるように指導していただければよろしいと思います。 それから、一番難しいのは、マンションのように、入居者が入って初めて欠陥がわかるというようなこともございます。 これは、海外の例でもそういうことは非常に多いんですけれども、やはり設計契約の中あるいはマンションの売買契約の中で、入居して一年目の検査というようなことは非常に大切で、これは法的に規制されないかもしれませんけれども、マンションの購入あるいは家の建設というときに なるべくそれが実行されるような御指導がしていただければ、それは非常にありがたい話じゃないかと思います。


日置参考人 まず、確認機関ですが、先ほども申し上げましたが、やはり民間でやった場合、申請者からの料金に依存して経営しているということがあるので、どうしても経済的に厳しいチェックがしづらいということがあって、民間でやる場合、そこの何らかの制度的手当てが必要ではないかというふうに思います。 それからもう一つは、やはり集団規定につきましては、民間ではなくて公的なコントロールが必要ではないかというふうに思います。 それから、検査ですけれども、私が建築紛争等にかかわっている経験から申しますと、むしろ戸建て住宅等において、小さな工務店が、名義貸しなんかで建築士も実質かかわらないような形で建ててしまうというようなケースにおいて、基礎等の手抜きが発覚するというようなケースを結構見ております。そういう意味では、小さいものであってもきっちりと、特に基礎のように後から見ることが困難な部分を実際に検査するということは重要であるというふうに思います。 それから、完了検査を全部するはずですけれども、実際にはやらないでも今使えてしまうということなので、やはり中間検査をやるということと完了検査を100%実施する、それを例えば登記などとリンクして実効性を担保するということを組み合わせてチェックするということが必要かなというふうに考えております。


森本委員 ありがとうございました。 私の方の意見は極めて少なくさせていただきたいというふうに考えておるんですが、確かに性善説性悪説、私はむしろ性善説でいって、いいものを安くというような、今の、だんだんだんだん規制を強めていくと、どうしてもその人件費とかいろいろな問題が高くなってくるというようなことを非常に残念に思いながらの質問をさせていただいておるんですが、そういう思いは実はあります。 その中で、次に移らせていただきますが、先ほど御意見をこちらの方にいただいた部分についてはもう省略をいただいて、私の方もメモしておりますのでダブルではもう結構でございますので、どうぞ簡潔で結構でございます。 次に、建築士法の改正でございまして、連合会への強制加入とか建築士会による監督、法人制度の創設、これは業務独占資格に比する内容となっておるわけでございます。 民主党案が採用された場合、その現場、今後のこの認識はいかにという思いでございますのですが、先ほど宮本参考人からは、建築士の、私どもは賠償保険ということも視野に入れながら、無限責任というようなことを提案させていただいておるんですけれども、そこにはかなりコメントもございましたし、その問題について、宮本参考人からはもう少しそこのところ、賠償保険と無限責任の関係を、この点に、私が申し上げたこと一点に絞っていただいて、あとのお三方につきましては、私の今申し上げた質問に全部お答えいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


宮本参考人 宮本です。 建築士会としましては、賠償責任ということは非常に大事だと思いまして、私ども、内部で制度委員会というものをつくりまして、一応ずっと長い間検討しております。 現在ありますのは、建築の賠償保険にできるだけ全員加入するようにというようなことで全国の都道府県士会にはお願いして、もちろんやっていらっしゃる人もいますけれども、問題は、まだまだそれは100%の会員が、義務づけていませんので、これからこの問題については相当積極的に取り組んでいかなければいけない、そのように思っております。 以上でございます。


久保参考人 森本議員の御質問内容について、私はちょっと門外漢に近いところでございますので、適切な御回答となるか……。 士会の、いわゆる職能団体としての加入義務というのは、これはやはりちょっと職業の問題で、加入義務というあたりの強さに対しては、少し全面賛成はいたしかねます。 あと、補償問題に関しては、これは、私がメンバーでございます基本制度部会において、保険とか絡む問題で、今後の審議事項ということで、今回の回答とさせていただきたいと思います。


小倉参考人 職能団体への加入でございますが、今までの建築士に対する団体の考え方と、それから私が先ほどからお話をしています専門別資格ができたときの団体への加入というのは、私はちょっと違ってくると思っております。 今までですと、建築士会あるいは建築士事務所協会への加入ということが視野に入っていると思いますが、もし専門別の資格ができた場合には、それぞれの専門別の職能団体というのが今でもございます。建築構造設備に対する職能団体がございまして、それも今でも非常に重要な役割を果たしておりますので、その資格者団体といいますか、建築士会というような資格者団体と我々のような専門別の職能団体、これのやはり加入ということも、特に専門別の能力を高める、切磋琢磨する、固有の問題を議論するというような意味では、職能団体としての加入としては大切であると考えます。 それから、保険の問題ですけれども、これはもう設計者責任賠償保険に入らずして設計はできないというふうに我々は考えておりまして、まだ建築家協会の会員は100%、保険には加入しておりませんけれども、これだけいろいろ自分たちのミスというものが、やはり想定する限りは、クライアントに迷惑をかけないためにも、これは施主にその事情を説明して、お互いの幸せのために、設計料の中に設計料以外に保険料を加算して設計契約を結ぶというようなことは、私はもう必須のことだというふうに理解しております。 以上です。


日置参考人 専門職として職能団体をつくるということは、一つの方策であろうと思います。 ただし、弁護士会はそういう職能団体をつくっておりますが、それが本当に機能していくためには、その中でやはりその専門職としての厳しい相互批判をやる必要がある。まあ、弁護士会がどこまでできているかという問題はありますが、そういうことをやった上で、問題があるときにはそこから除名してその業務ができないようにする。そういったみずから規律を保つ、そこまでの内部規律を持って職能団体を運営していくという覚悟が必要かというふうに思います。 それから、保険の問題ですけれども、基本的には賠償保険でカバーするというのは、消費者保護の視点からも必要かと思います。 ただし、これは私の経験からいきますと、建築家賠償責任保険というのは、建築家の設計ミスで事故が発生して、被害が発生して初めて賠償がおりるんですね。ミスが発覚した、まだ壊れていないというときには、被害が発生していないということで救済されないんですね。普通の損害賠償保険だと、賠償責任が認められれば大体カバーされるんですけれども、建築家の場合、どうもそうなっていない。保険会社の人に聞くと、そこまでカバーすると非常に料率が上がるという話をされました。

 この辺はきちっと調査をされる必要があろうかというふうに思いますけれども、事故が発覚して補修しなきゃいけないというような場合にもきっちりカバーされるということを含めて、賠償保険の必要性はあろうかというふうに思います。 それから、実際の話、小さな設計事務所の人の相談を受けますと、例えば、一億の物件を設計して、それで何百万とか報酬をもらったという場合に、やはり欠陥が見つかって建て直したりすると一億以上の損害が生じるということで、通常の設計者であれば、一つでもミスを出すと経済的にとても成り立たないという形がありますので、やはりその意味からも保険は必須ですけれども、きっちり保険の救済範囲が広がるということを御検討いただきたいというふうに思います。

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