耐震強度偽装問題 審議 内容 を見やすくしてみました   home
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      164-衆-本会議-27号 平成18年04月28日  

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国務大臣(北側一雄君) 馬淵議員にお答えを申し上げます。 耐震偽装問題に対処する決意についてお尋ねがございました。 今回の問題は、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が構造計算書の偽装を行い、その偽装を指定確認検査機関のみならず地方公共団体でも見逃してしまったものであり、まことに遺憾でございます。

 今回の事件は、一部の建築士が偽装を行ったことに起因するものではございますが、それにとどまらず、建築物の設計、施工を行う側に課された課題、さらには偽装を見逃した建築行政側の問題としてとらえるべきであり、建築士制度や建築確認検査制度等の抜本的な見直しによる再発防止策が必要であると考えております。 このため、早急に対応すべきものについて、このたび建築基準法等の改正案を提出させていただいたところでございまして、さらに見直しが必要な課題につきまして引き続き検討を進め、今回のような事件が二度と起こらないよう全力で取り組んでまいります。

 制度構築にかかわる国土交通省及び政府・与党の責任についてお尋ねがございました。 建築基準法に照らした場合、回の事件の責任は一義的には、適法な建築計画を立案し、実行する責めを負う建築主側にあると考えております。しかしながら、建築確認事務の遂行に際し、指定確認検査機関のみならず一部の特定行政庁において偽装の見過ごしがあったことはまことに遺憾でございます。

 国土交通省としては、建築確認事務の総点検の結果も踏まえ、建築確認検査制度について徹底的に見直しを行い、責任を持って再発防止のための改善措置を講じることにより、建築確認検査制度の信頼回復に努めてまいります。 現在の確認検査制度についての認識についてお尋ねがございました。

 今回の事案は、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が偽装を行ったことに起因するものであり、指定確認検査機関のみならず地方公共団体でも見逃しが生じております。偽装の態様が多岐にわたっておりまして、これを見抜くためには、再計算や構造計算の過程についての詳細な審査が必要なものも多数見られたところでございます。 したがいまして、平成10年の建築基準法改正が偽装を見抜けなかった直接の原因とは考えておりませんが、今回の法案は、今回のような偽装を確実に見抜くことができるよう、構造審査の厳格化を図り、現在の確認検査制度を抜本的に見直すこととしたものでございます。

 今回の問題に対する解決についてお尋ねがございました。 今回の改正案につきましては、再発防止を図るため、一定規模以上の建築物についての第三者機関による構造計算適合性判定の義務づけ、民間検査機関に対する指導監督の強化、建築士等に対する罰則の大幅な強化等の措置を講ずることとしておりまして、これにより、今回のような耐震偽装は防止できると考えております。 なお、専門分野別の建築士制度の導入など建築士制度の抜本的見直し等の課題につきましては、夏ごろまでには方針を取りまとめ、所要の改正措置を講ずる方針でございます。

 設計と施工の分離についてお尋ねがございました。 建設会社が設計と施工を一貫して行うことについては、設計意図を十分理解した施工が可能となる、あるいは、施工方法も含めて検討された適切な建築の設計が可能となるといったメリットも指摘をされているところでございます。

 設計、施工を一貫して発注する方式、分離して発注する方式のいずれの方式におきましても、適切な建築活動を担保するため、設計図書どおりに施工が行われているかどうかを監理する工事監理が適正に行えることが重要であると考えております。 このため、国土交通省といたしましては、社会資本整備審議会建築分科会において夏ごろまでに方針を取りまとめていただき、これを踏まえて所要の見直しを行ってまいりたいと考えております。

 議員の方から、手を加えることによって長期の資産としての住宅の価値を維持し、それが正当に評価される仕組みが必要という御認識をちょうだいいたしました。私も全く同感でございます。 市場重視、ストック重視の住宅政策への本格的な転換を図る上では、適切に維持管理されていることが適正に評価され、古くても質のよい住宅が円滑に流通する市場の形成が不可欠でございます。こうした観点から、中古住宅の質についての情報を提供する既存住宅性能表示制度を設けるとともに、住宅ローン減税制度等において、古くても新耐震基準に適合する中古住宅については、築後経過年数要件を撤廃するなどの措置を講じてまいりました。 これらの取り組みはまだ緒についたばかりではありますが、中古住宅の質や価格が適正に評価される市場の環境整備に向けて、施策の推進に努めてまいります

 政官業の癒着構造についてお尋ねがございました。 御指摘のようなことによって、これまで行政の判断が影響を受けたということは一切ございません。今回のような問題が二度と起こらぬよう、建築士制度や建築確認検査制度等の抜本的な見直しによる再発防止策を講じていくことが、何よりも重要であると考えております。(拍手)
 
   〔下条みつ君登壇〕

下条みつ君 民主党・無所属クラブの下条みつであります。 馬淵議員の質問にお答え申し上げます。

 現在までに、姉歯元建築士による偽造から始まって、姉歯氏以外の建築士による偽造によっても、耐震強度が不足している建物が多数存在する上、施工業者のいわゆる手抜き工事も存在することが明らかになっています。これらの耐震偽装や手抜き工事などの瑕疵は、建物を購入された住民の皆さんが最大の被害を背負うことになります。 民主党は、業界の利益を優先するのではなく、居住者、利用者、購入者の立場を最優先して法案作成を行いました。その意味では、御指摘のとおり、政府案とは立ち位置が全く違うのであります。また、国会での原因究明のみならず、私も現地に赴き、調査を重ね、皆さんの声も直接お聞きしました。

 家を購入することは、多分一生に一度の大きな買い物であります。皆さんは、何度も何件も建てる場所やモデルハウスを下見し、多くの人は、住宅ローンを組み、購入します。新居に引っ越し、これから楽しく暮らそうというやさき、天災が起きたように、自分の住んでいるマンションが、耐震強度が足りないから退去しなさい、修理しなければいけない、大変お金がかかると言われます。住民の皆さんの気持ちは察するに余りあります。

 私は、現場の実際のコンクリートのひび割れなどや、構造図と施工図に違いのある部分、また、姉歯元建築士でさえ望ましくないと言っている、柱と柱の間にあるはりの柱の間近に穴ぽこがあいていることを実際目の当たりにして、この手抜き工事は、怒りよりむしろ寒気さえ覚えました。手抜きをすればするほど業者がもうかる仕組みが続く限り、罰則だけ強化しても、問題の解決は難しいと痛感しております。

 では、どのような方策が考えられるんでしょうか。業者に対して保険に強制加入させると、悪徳業者も保険加入が容易になり、モラルハザードが起きかねません。また、強制加入の保険となると再保険などの仕組みも必要になり、制度が肥大化することになります。そこで、私どもは、保険加入の有無をきちっと表示させ、購入者の選択を促す方法を考えました。 ただし、契約時に説明させる方式では不十分で、効果がほとんど見込めないと考えております。住宅の購入というのは、いきなり契約に至るというケースは余りなく、何度も打ち合わせをして話を聞いた上で、購入を決意して契約に至るというのが通例だからです。

購入を決意した段階で保険加入の有無を説明されてもなかなか後戻りできないですし、契約書にサインする段階では、新居に夢が膨らんでほとんど上のそらだったりします。冷静な判断ができない状態で説明を受けたとしても、ほとんど意味がないのです。つまり、冷静な判断ができる状態のとき、それは極めて初期の段階でなければならないことになります。

 民主党の改正案では、この初期の段階、つまり広告の段階で、住宅の品質確保の促進等に関する法律第六条一項及び三項に規定する設計住宅性能評価書及び建設住宅性能評価書の有無、同法に基づく瑕疵担保責任の履行に関する保険の有無について記載させることとしております。広告に、ない場合もないと表示させるのです。
 広告の段階であれば、見ている人も冷静ですから、性能評価書がないとか、保険に入っていないという意味を十分に考えた上で、資料請求するかどうか、現地を見るかどうかを判断できると考えました。しかも、保険加入は任意ですから、悪徳業者は保険加入を断られるとか、加入できても保険料が極めて高額になるということが期待できます。 重要事項の説明でこれらの項目を書面にて交付し説明を行うこと、及び売買契約等にも書面で交付することを義務づけています。手抜きをすればもうかる仕組みに歯どめをかけることができ、保険に加入した場合は、保険会社などもその建築物が十分な性能を持っているかについてチェックすることが期待できます。これにより、現在、共同住宅のわずか1.1%しか利用していない住宅性能保証制度の活用が促進され、安全、安心な住宅が供給されることになります。

 また、民主党はこれまでも、危険情報公表法案を提出しております。これは、生命身体に危害を及ぼすおそれがある情報の公表を義務づけるもので、建築物も対象とした法案を今国会に提出する予定にしております。耐震強度が著しく欠けた建築物であることを知った時点で行政に対して報告する義務がかかり、違反に対しては罰則がかかることとなります。

 以上のように、民主党は、居住者、利用者、購入者の立場に立ち、広告規制を行い、危険情報の公表を義務づけることとしており、その効果も十分に期待できるものになります。 さらに、今後の課題として、ローンが返済できなくなった場合、その物件を差し出せばほかの物件や資産には被害が及ばないノンリコースローンの導入や、業者が保険に入らない場合、現場での手抜き工事に対する第三者機関等による施工中の検査等を強化して、監理を担保すべき体制などを課題と考えております。

 私がグランドステージ藤沢に伺った際、まだ残っていた老夫婦に、このお部屋はどうですかと聞きました。にこにこして、すばらしい、今でもここに住みたいですと話されました。そのときの私は、現場の工事も手抜きがあり、建物の鉄筋が半分しかありません、構造計算上、非常に危険な物件ですと言おうと思いましたが、口からは一言も言葉が出ませんでした。一度住んだ人は、その住みかに愛情を持ち、ついの住みかとして強い思いを持っております。この人たちの最後の人生のひとときを傷つけた今回の事件は、非常に罪が重いと思います。

 そして、このとき、現場の最後まで手抜きをさせないぞという強い思いを心に刻みました。これからも、この気持ちを忘れず、本法案の審議をしてまいりたいと思います。
 以上で答弁を終わらせていただきます。残余の質問については、同僚議員から答弁させていただきます。 ありがとうございました。(拍手)

    〔小宮山泰子君登壇〕

小宮山泰子君 馬淵議員の質問の二点目について答弁させていただきます。 一昨日、耐震強度偽装事件に関係した姉歯元建築士などの関係者が逮捕されました。経済的理由があったにせよ、法律違反を起こし、社会を混乱させた本人の責任は極めて重いと言わざるを得ません。また、違法行為を行うことを事実上強制するようなことを行った建設会社や販売会社、それを見逃した指定確認検査機関、特定行政庁の責任は重大であります。 さらに、建築基準法が法律の趣旨にのっとり十分に機能していたかと言われれば、そうでもありません。建築確認は形だけ、法令違反を十分に審査する能力もない状態が放置され、今回の事態を招いた国の責任を見逃すわけにはいきません

 建築確認行為は行政の行為です。昨年の最高裁判決でも、建築基準法は、「建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認に関する事務を地方公共団体の事務とする前提に立った上で、指定確認検査機関をして、上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下において行わせることとしたということができる。そうすると、指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。」とされています。

 ところが、実態は、民間確認検査機関の確認が特定行政庁の確認とみなされることから、特定行政庁の民間確認検査機関へのチェック機能は働かず、責任まで民間丸投げの状態になっていたのであります。政府案では、この部分が全くこれまでとは変わっておりません。民間確認検査機関が行った建築確認も特定行政庁の責任となるにもかかわらず、それをとめる手段がないという状態が続くのであります。

 民主党案では、責任の丸投げを認めず、確認済み証や検査済み証の発行権限を特定行政庁に限定することとしております。民間の指定確認検査機関が建築確認業務を行った場合でも、特定行政庁が確認済み証や検査済み証を出すことになります。民間確認検査機関が不自然なチェックを行っていた場合や、民主党案で特定行政庁に設置が求められている苦情受付窓口に情報が入った場合、特定行政庁が再度精査することになり、法令違反に歯どめをかけることができるようになります。 さらに、民主党案では、特定行政庁の審査能力を高めるために、建築主事の登録に設計、工事監理等に一定期間以上の実務経験を要することとしております。

これは、今回の耐震強度偽装事件でも明らかになったように、設計図面を簡単に見ただけでも耐震強度偽装が疑われる物件についても建築確認が出されていた反省を踏まえ、複雑な構造計算書を見るまでもなく的確な判断ができるようにしたものであります。これにより、行政のチェック能力も大幅にアップすることとなります。 また、民間の指定確認検査機関については毎年業務報告を義務づけ、特定行政庁については毎年業務内容の公表を義務づけることとしております。これによって外部のチェックが働くことにもなります。

 さらに、すべての建物について中間検査を義務づけ建物完成二年後の検査制度も創設するなど、居住者、利用者、購入者の立場に立った措置を講じてまいります。
 一方で、特定行政庁には過大な負担がかからないように、中間検査などの検査に際しては、検査項目をチェックリスト化し、チェックの有無がわかりやすく残るようにすることや、確認検査に際して、一定の項目について行政の確認項目から除外することにより、業務の合理化を図っているところでございます。

 多くの国民が人生の希望を託し、一生に一度の大きな買い物をする、家を購入する。だからこそ、民主党は、居住者、利用者、購入者の立場に立ち、責任の丸投げを許さず、チェック体制を強化してまいります。どうぞ、御審査のほどよろしくお願いいたします。 なお、残余の質問に対しましては、同僚議員から答えさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
 
   〔森本哲生君登壇〕

森本哲生君 馬淵議員の質問の三点目についてお答えをさせていただきます。 今回の事件で明らかになった大事な課題の一つに、建築士の地位の向上があります。建築士の皆さんが責任と誇りを持って仕事ができる体制づくりこそ、再発防止の要でなければならないと考えます。ところが、政府案は、違反に対する罰則を強化するばかりで、建築士制度の改善は先送りされようといたしております。これでは、建築士の皆さんがますます肩身の狭い思いをすることになってしまいます。 民主党は、多くのまじめな建築士の皆さんが肩身の狭い思いをすることがないよう、建築士の独立性を高め、地位を向上させなければならないと考え、建築士法を大改正いたします。

 まず、建築士の使命として、「建築士は、建築物の設計及び工事監理の知識技能の豊かな専門家として独立した立場において、工事の実施を行う建設業者との適切な役割分担を踏まえて、建築物の災害等に対する安全の確保及び質の向上を図り、もつて個人の生命財産の保護と社会公共福祉の増進に寄与することを使命とする。」と規定し、建築士が高い使命感を持って仕事を行うとともに、設計監理と施工の分離をうたっているところであります。設計監理と施工が分離されてこそ、偽装や手抜き工事を防ぐことが可能になりますが、先ほどの大臣の御答弁では、そのことが不明確であります。まさに、物事の本質から目を背けた改正であると言わざるを得ないのであります。

 次に、建築士の国土交通大臣または都道府県知事による免許制度及び建築士会及びその連合会の任意加入制度を改め、建築士会及びその連合会を建築士法上の特別の法人として設立し、建築士の資格を有する者は、その登録を受けて会員とならなければ建築士となれないものといたしております。つまり、すべての建築士に建築士会への強制加入を義務づけることにより、建築士の品位の保持、業務の改善、適正化が期待できるものと考えております。

 また、建築士事務所制度の改善として、建築士事務所の開設は建築士のみ行うことができることといたしております。これまではだれでも建築士事務所を設置することができましたが、建築士事務所の主要な任務である建築物の設計については、基本的に建築士しか行い得ないものであり、建築士しか行い得ない仕事の責任は建築士が負うものであります。

 一般の方から見た場合、開設者イコール責任者イコール建築士ということを明確にするためにも、開設者を建築士に限ることといたしました。開設者や経営者が建築士でない場合、開設者や経営者から不当な圧力を受ける危険性が大きいことは今回の件でも明らかであり、特にコストダウンの圧力が加わった場合、法令違反を誘発する危険性はかなり高いのであります。したがって、建築関係の法律を熟知し、規範意識の高い建築士を開設者とすべきであると判断をいたしました。

 政府案は、この点について何ら改善が見られません建築士事務所の開設者を建築士に限定すれば、結果的に建築士の地位も向上することになり、遵法意識も向上し、自浄作用も働くことになります。また、地位が向上すれば、ハード偏重で極めて安いと言われる設計料も業務に見合ったものが期待され、不当な経済的圧力に屈することもなくなるわけでございます。 もちろん、地位が向上すれば、その分責任も重くなります。これまで株式会社のサラリーマンで有限責任しか負わなくて済むような立場から、無限責任を負う立場へと変わるわけであります。民主党案では、建築士法人という特別の法人格を設けることといたしております。この建築士法人の社員は建築士しかなることができず、社員たる建築士は無限責任を負うことになります

 建築士事務所の改善と建築士法人の制度の創設により、設計監理と施工が分離され、建築士が居住者、利用者、購入者の立場に立つことができるようになります。 このように、民主党案は、三者の立場に立ち、安全、安心な建物に住み、利用し、購入することができるようにするため、どのような制度が望ましいかを真剣に考えたものであります。ややもすると、供給側の論理がまかり通り、小手先の改革にすぎない政府案とは全く異なるものであります。

 本来であれば、建築士、施工主など、それぞれの職業倫理にのっとって適正なサービスが行われるのが理想であり、さらにつけ加えるならば、あくまでもこれは私見でありますが、人は、信じ合い、信じ合ってこそ人としての価値が生まれてくるものであり、そこにこれまでの我が国のすばらしい姿があったはずであります。 そういった意味では、今まで述べてきたように、業法上の規定を設けることは後ろ髪を引かれる思いでございます。今政治が行うべきことは、現実を十二分に踏まえて、党派の利害を超えて、どちらの案が本当に居住者、利用者、購入者に安心を与えられ、安全を守られるか、このことを真剣に議論し、判断することであります。 党派を超えた賛同がいただけることを期待し、私の答弁を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    

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