槻橋修さん 最初の建築 体験記       home  

  AM 8:30〜   AM10:30〜 AM 11:00〜  AM11:15〜  まとめ 

          槻橋修さん設計仙台建築体験する  

 AM10:30〜

そんな 心構えをしてでかけていったけど そこまでの道程の体験に比べ緑ヶ丘の終点は あんまりにも平ら。山の天辺だから平らに見えるのかもしれないが、ホッとした。あとは下るだけから。。安心するのはまだ早いかもしれない無事目的地にたどり着けるともかぎらないからな。お天道様を定規に「東を目指せばやがて転がり落ちるような斜面の際に出ルンだろうな〜」と思いつつ 愛想のいい運チャンに郵便局の位置などたずね 挨拶し別れ 歩きだす。

郵便局はすぐみつかった。「おぉ・・ここをチョイ南に折れ道を東に転がれば槻橋建築だな」予想してたように進みいで〜 現れたのは「なんだ〜なんだ・・単なる住宅じないか〜 見に来ちゃまずかったかな〜・・ブツブツ」「でもな〜案内の立面とも全く異なるよな〜」。フムフム・・門に近づき住所を読めばあんれま〜「緑ヶ丘◎×」か〜「道を間違えたな〜ようだな」鹿野とは接してはいるが異なる 似たような地形か。、もとの太い道に戻り、北へ進む。ダラダラ坂道に戻り途中からは 進むというよりは徐々に前つんのめり気配に抵抗しつつ下るから 太ももとつま先が緊張する。

コロコロ・・頃、U字をした道に沿い転がり進むと 次にそれらしき!!わかれ道が見えてきたよ・・道の入り口は電話線を張り替え中。工事車両が通せんぼしてる。交通整理のガードマンが2人見える。入って行きにくそうだ。工事車両の陰あたりから槻橋建築の臭いがするような〜気がするんだけど。 「はい、歩行者さん1人〜・・ツピーガガー・・」拡声器がなる。誘導され進むも 目の前に広がるは海らしき空らしき青きもの木々の天辺ばかり。

「また道間違えたかな〜」「今日は導かれネーな・・縁がないのかな〜」。 急な坂道に頼りなげにある俺の靴。コロコロ転げ落ちそうな激しい坂道。スキーで経験した感覚によると勾配は30度超〜だろう。これより勾配キツカったら道とは言わないな〜崖だな。 崖なら後ろ向きになって降りるしかないよ。ユカタン半島の遺跡や富士登山の下山じゃあるめー・・に後ろ向き降りか・・。

急な坂道を登るのは楽だが下りは緊張するな。 数歩進むとキランと光る水切りの角が目に入る。「おぉ」縦長なの四角い立面に片流の屋根。薄緑のサイディングの縦ばりの外壁。アンリャ色が違うしゃないかな〜。外壁は原広司さんのお弟子の大方がそうしてるようにまたはグレーだろ。そう決めこんで来たし案内メールに添付された立面だとな〜ラインにみえたしな〜「違う違うぞ〜」 意外な感じがしたがこの抜かれ・すかされ具合は案外いい〜・・「この建築にまちがいない」と思った。

この世に最初現れた槻橋さん建築との対面はとても変な格好になっちゃたようだ。 myつま先と槻橋建築の天辺が接続され、対面ではなく積み重ねられちゃうような塩梅で出会ったんだな。仰ぎ見るでもなく 徐々に近づき対面するでもなく、突然視界がひらけ全面が現れるでもなく、いきなりつま先と建築の頂上とがつながる 重ね餅ふうお飾り的 対面なのだ。


転がり気味の道に 初建築の敷地が接するのは、お天道様の位置からすると、南西の角のようだ。南角が敷地では一番高い場所か。だからつま先から挨拶をといった感じになちゃうんだ。

北の方には八木山のテレビ塔がみえ、その廻りをフン〜ワリ フワ〜フワと飛行船が泳いでいく。穏やかな初秋の空模様なのだが、足下は不安。

道の柵をこえて見下ろすと 真っ白で深〜い井戸のようだ。うっかり気でも許そうものなら吸い込まれそう。見下ろしている 敷地南の半壺状に囲われた庭は 擁壁を真っ白く塗り込め、存在の意味を変容させている。その意図をあれこれ想像することが出来る。

壺状で真っ白く抽象化し整備された庭の擁壁の頂上が東へと下りながら回り込みアプローチの前庭に連なっている。 

建物は西と北の境界から1mほど離し配置されているようだ。敷地の西から南へ ひらがなの「」の字のように擁壁が回り込み境界となっている。東側の敷地形状は坂道に合わせるように踊ったような変形をしている。 「し」が湾曲しはじめる当たりが一番高く この部分に坂道が接しはじめている。 「」の先へ、つまり東側に進むほど低くなる道が 南から東へ下りながら敷地を取り囲んでいる。

南面から東面の外壁を眺めながら下ると玄関のためのニッチが見えてくる。コロコロ転がり込んだら玄関、というのが体感としては相応しいように思える。敷地は水平に造成されているので 坂道と玄関の前庭は捻れながら接続することになる。そこを目指し道はくだり 敷地に僅かに数ーメートル接し その先を急ぎドンドンと下って行く。 転がり込みに失敗すると山の麓に落ちていってしまいそう。 だから、玄関先に立つと転がり込み感が強まり「ほっ・・転がり込んじゃった〜」と一安心するのである。今までにあまり体験のない建物前に到着した時の気分。


槻橋さんは 外灯設置の工事をしている 金物屋さんと穏やかに打ち合わせ中です。昨夜の電話によると「残工事の打ち合わせで9時から12時ぐらいまで現場にいますので10時頃に来て頂けるなら・・」ということだったが、工事は長引いているようだ。坂道の途中で 挨拶をすませ、見学の後に30分から1時間のインタビューをお願いする。

「どうぞ」と招かれても コロコロ転がちゃうような坂道の力を感じ つづけている。逆らうように建物に入り込まなければならない。、無理矢理申し込んだ初インタビューにかかる力 と この場にある引力の存在は似ている。建築家への希望のありかを確かめる為には この緊張をのり越えて どちらも体験せねばならないのだな。


まだ打ち合わせが残っているようなので、建物を また 見上げる。

南面の外観は縦長に2の窓と1枚のドアがあり、上部は真四角に薄緑がかったクリーム色のサイディングで 残りの下部が真っ白のペンキ仕上げであるから、白く化粧された擁壁に囲まれた庭に踏み込むと真っ白な壺の中に入ったかのような静かな体験を得ることになるのだろうと思う。

東面の道の状況は 水平な敷地に少し接しつた瞬間に枝分かれし ズーット山裾まで下りきるような道の力と、枝分かれし敷地北奥の宅地へと下り入る道の力とが 互いに引っぱり合うというか 強く斜めに交叉分解している様なので どちらへ行っても 奈落へでも引き込まれるかのような 強い不安定な力、動きの激しい道の 存在たちが、白い壺状の庭の静けさを、一層 引きたてしまう。

緊張を孕んだ場にそこしかない敷地の接続口が設けてあるので、何か越え渡るとか 飛び込むとか 転がり込むとか、運動をしつつ止める・・止めちゃわなきゃ〜というような 意志を働かせて 敷地内に飛び込む。周囲が騒がしくも水平に保たれ続ける 敷地の存在のありかた を強く意識してしまう。

敷地の内から 槻橋初建築の東立面をみるためには見上げる格好になるのだが、その前に 暴力的な量で周辺状況のアレコレが押しよせて来るので目は泳ぐ。  乱雑な道の形状と雛段状の宅地。それらを支える風雨にさらされ黒く汚れた擁壁。あまたの面・面。人や車が転がり込まないよに防御するガードレールの数々。電源や電話の多数の線が蜘蛛の糸のように 秋の空を泳いで行く。雪が積もり落ちたら谷底まで下るかのような民家の無配慮な屋根向き。

そのような 騒乱の中に東面は静かに書き込まれている。水勾配をなぞる台形と手前に一階部分が分離した横長のシンプルな形。北面を見ると 逆L字型になっている。

槻橋修さんの建築の先生は原広司さんである。原先生の最初の建築平面は空気を吹き出し機械のような形状だったと思う。槻橋初建築の平面は横長台形とシンプル。 先生のプランから立ち上ちゃった 外観は異形だろうから、自然に 主張してしまっていただろう。それを押さえ隠す為には 真っ黒に化粧しなければ成らなかったような気がする。 色彩すればどこかの 新教の寺院風味になっただろう。 槻橋初建築の外観は 先生と対極を示すかのような シンプルの台形。色彩の明暗だって対極の白に限りなく近い。

子供が最初に書くような「お家」の屋根 よりもっとシンプル。同じカタチに整えたような窓。 敷地を取り囲む周辺の賑やかな状況の中にあって静かな立ち姿。仙台の町の状況の賑やかさと比べても とも静謐な姿。静かであるが なにもしていないのではない 静けさ が心地よい。 案内のメールに添付されたような黒と白の縦縞文様ではなくって ホットしてもいる。 


 ★● AM11:00〜へ 続く