山口カブトガニ研究懇話会の活動

 かつては、私の生まれ育った山口県厚狭郡山陽町の沿岸でも夏になると泳ぐことができた。その頃はカブトガニは、普通にみられたものである。しかし、日本のカブトガニが減少しており、特に瀬戸内のものは絶滅寸前であること、また山口産のカブトガニが流通経路にのり、関東地方で売られていたことが指摘、批判されていたことを知った。そこで、山口県西部のカブトガニの状況を把握するため、1992年の夏から、産卵調査や砂の中に産まれた卵の一部を採取し、発生の観察、幼生の飼育に取り組んできた。さらに繁殖状況を明らかにするため、干潟での幼生の生息調査も始めた。その後県中部、東部の海岸の調査も始めた。これらの結果は、確かに山口県のカブトガニも絶滅の危機に瀕している、と実感させるものであった。保護活動の必要性を実感し、'97年11月に「山口カブトガニ研究懇話会」を結成し、以後調査・保護・啓蒙活動をしている。
 2000年までに「カブ研」で山口県の周防灘の広い範囲を調査し、カブトガニのおおまかな生息状況を明らかにすることができた。
 環境庁は'00年4月レッドデータブックの絶滅危惧種にカブトガニを加えた。山口県でも’02年に公表される県版レッドデータブックで登録される見通しである。

山口県の課題

 このままでは、あと10年以内にも山口県のカブトガニはほとんどいなくなるのではないかと思われる。現在の瀬戸内海の海岸で、自然の海岸線が残っている割合は非常に少ない。干拓や護岸工事によって、カブトガニの産卵に適した砂浜はほとんど消滅してしまっている。また、幼生が育つ干潟も変化してきている。さらに海水の汚染などにより餌となる小動物も減少し、また食物連鎖による有害物質の高濃度の蓄積(生物濃縮)の影響が、幼生の生育や成体に大きな悪影響を与えていると考えられる。山陽町埴生で捕獲された成体の多くが、卵も作れず内臓も死の直前の状態であることが、明らかにされている(静岡大学 伊藤富夫教授)。さらに、環境ホルモンの一種である有機スズが高濃度に蓄積されていることも明らかになっている(愛媛大学 田辺信介教授)。
 また、今では、漁網に入ったカブトガニが殺されたり、取り除かれていることも原因の一つになっていると思われる。下関市水族館は'94年から'97年までの5年間に何と526匹も動物交換として他県へ移出していたことが明らかになった。これ以外に、ある保護(?)団体により'95,6年に計200匹以上が持ち去られた。つまりこの間に800匹近くが人為的に県西部の海から失われていたのである。これは、山口のカブトガニを絶滅へと加速した大変な問題と考えられる。
 山口のカブトガニを絶滅から守るためには、成体の生息、産卵、幼生の生息などを調査し状況を正しく把握するとともに、干潟、水質、他の生物などの環境を調査しデータを蓄積しつつ、関係諸機関に保護を働きかけていくことが必要である。また、多くの人たちに関心をもってもらうことも大切である。カブトガニが生きていくためには、他の生物も含めた海の生態系が健全に保たれることが必要で、川や山までも総合的に考えることが要求される。
 わずかここ20〜30年の山口県人の活動が、2億年も生き続けてきたカブトガニをこのまま絶滅させることになってしまっていい訳はない。人類からみればはるかに地球の先輩であるカブトガニを守っていくことは、人類が生き延びることにつながっているはずである。

☆カブトガニのペーパークラフト

改訂版をやっと作りました。原型は、秋穂中学校国際科学部のモデル(これがすごい!)です。画用紙かもう少ししっかりした用紙で作るとよいと思います。もっとも、小さな齢では厚い用紙では不都合です。私は、超厚口の上質紙でこの図面を配布しています。図面をPDFファイルにしました。A4版です。1ページは作り方、2ページが型紙になりますので、2ページをA4に印刷すれば11齢のほぼ実物大の模型となります。また、幼生は1回の脱皮で約1.3倍大きくなります。したがって、10齢を作ろうと思えばこの図を1.3分の1に縮小すればいいことになります。私は3齢まで遡りました。ぜひ作ってみてください。


◎2001年の活動について

☆観察会を行ないました。

 ’01年もカブトガニについて広く理解していただくため、産卵と幼生の観察会を行ないました。参加された方はお疲れさまでした。

◎7月8日(日)
  産卵と幼生の観察会を行いました。
  産卵にきたつがいはわずか1つがいでした。写真のように雌雄とも泥をのせていますが、昨夜産卵に来て沖まで帰らず干潟にもぐっていたと思われます。ギャラリーが多かったせいか、落ち着かず結局産卵はしないで帰ってしまったようです。
 午後は幼生の観察会で、幅9mmの2齢から52mmの8齢までわりと多くの幼生を観察できました。


◎7月22日(日)
 産卵に来たつがいは、今年も指定場所には現れませんでした。ただ、河に面した堤防の下では4つがいほどが産卵しており、その姿を見ていただきました。


 午後の幼生観察会を行った干潟は、’00年に引き続き砂質化が進行しており、幼生の生息域は狭くなっていました。しかし、参加者の皆さんには5〜10齢までを見てもらえたのではないかと思います。なかなか見つけにくかったようですが。

 ’01年の観察会はこれで終了となります。干潟の調査は、春4月から始める予定ですので、ぜひ幼生を見てみたいといわれる方は調査に参加してみてください。お待ちしています。 

☆「きらら博」終わる
 会場北東部の隅っこ(山口ゾーンの「いきいきエコパーク」内)の、“ふしぎなカブトガニハウス”。六角形の小さな会場で、秋穂中学校科学部と一緒にカブトガニの展示をしました(大部分は秋穂中です)。会期中本当にたくさんの方々に来ていただきました。スタッフの方々には熱心にお世話いただき、来場者に気持ちよく見ていただけたことと感謝します。ありがとうございました。



◎2002年の活動について

観察会のようすを報告します。

◆7月13日(土)
  ・産卵観察会 下関市千鳥浜の王喜海岸(排水場そば)
      天候が心配されたが、波・風もあまりひどくなく、3つがいを確認できた。海水の濁りがひどく、姿が見えたのは少しの間だけであった。
      参加者は8名だったか、報道関係も同数くらいと少なかった。
      午後、産卵していた砂場を掘ってみると、下の写真のように確かに卵塊があった。 

砂に産まれた卵塊 卵の大きさは2〜3mm

  ・幼生観察会 下関市千鳥浜(乃木浜)
      3齢から8齢までかなりの個体を確認できた。

◆7月27日(土)
 台風9号の影響が心配されたが、風、波とも収まり、産卵・幼生の観察会を予定通り実施することができた。
 ・産卵観察会 山口湾
     今年も観察予定場所には来なくて、河に向かう堤防下の狭い砂場に2つがいが姿を見せた。写真のように間近で見ることができた。
 ・幼生観察会 山口湾
     塩田跡地前の干潟に入った。砂質化が進んでいるためか、例年になく大きい幼生(9齢)が澪筋でたくさん活動していたので、初めての参加者にも容易に見つけることができたものと思う。

産卵中のつがい すぐそばで産卵 大きい幼生がたくさんいた

◆8月24日(土)
 産卵期はほとんど終わりなので、幼生だけの観察会。
 今回は、「佐山里山たんけん隊」の参加もあり、40名となった。幸崎公園に集合し、干潟へ移動、初めに堤防したの砂場で卵を観察した。一ヶ月前の大潮に産まれたもので、5oほどに大きくなっており中の胚も見えた。干潟では、7〜9齢の幼生が活動中であった。脱皮時期であり、脱皮中の幼生や、脱皮直後で殻がすぐそばにあり体が柔らかい幼生も数個体いた。1時間半を十分体験してもらえたものと思う。 

幼生を探す子供たち 幼生発見! 脱皮直後の殻と幼生

◎2003年の活動について

 今年の観察会は、産卵に適した大潮の時期がウィークデイになり、産卵の観察会は行いませんでした。幼生の観察会については、下関と山口湾で次のように行いました。カブトガニを身近に感じていただけたものと思います。

◆7月27日(日) 12時〜14時
 幼生の観察会です。下関市千鳥浜(乃木浜)で行いました。
 参加者は残念ながらわずかではありましたが、2齢(幅9mm)〜9齢(幅68mm)までの幼生を観察することができました。観察を終わって引き返す途中で3齢を確認しました。今年初めての3齢(幅12mm)です。ことしになって2回の脱皮をした昨年生れの幼生です。

◆8月10日(日)
 幼生の観察会、山口湾です。
 心配していた台風10号もとおり過ぎ、快晴のもとで観察会をすることができました。参加者も40名以上と多く、干潟に入ったときは賑やかでしたが、干潟はやはり広く、それぞれ思い思いの場所で幼生探しとなりました。台風の影響は大きくはないようでしたが、干潟の凹凸や澪筋などには変化が見られました。昨年は9齢がたくさんいたのですが、今年は数は少なく(ただ10齢の割合が高かった)、また小さな3齢、5齢はほとんど見つかりませんでした。来年の観察会では大きな幼生はごくわずかになる可能性が高いと思われます。護岸の捨て石そばの幅がわずかな砂だまりには新しい卵塊見つかりました。また、岸近くの干潟で雌が仰向けになっており、産卵した後帰り損なったのではないかと思います。8月中旬になるのにまだ産卵にきているのです。

◎2004年の活動について

☆7月4日(日)
   ・産卵観察会 下関市千鳥浜の王喜海岸(排水場そば)
            台風7号の影響で強い風と大きい波で来ないのではないかと心配しましたが、5つがいを確認できました。参加者10名。

   ・幼生観察会 下関市千鳥浜(乃木浜)
           午後から、風はさらに強くなったが、干潟へ出かけました。干潟表面は、昨日と随分違って、表面の泥が流され砂質になっていました。南東からのとても強い風で、海水もその方向に流されていました。這い跡がほとんど分からなかったのですが、7,8齢は確認できました。脱皮途中の7齢も観察できてよかったです。参加者12名。

☆7月19日(月、海の日)
  ・産卵観察会  山口湾周防大橋南の護岸
            今年も波止の角にはやってこず、護岸沿いに2つがい。他に、東へ続く護岸したに2つがい。参加者約20名。
  ・幼生観察会  山口湾塩田跡前の干潟
            昨年に比べると、幼生数はぐっと少なく、ただし8〜10齢と大きい。参加者50名ほど。

◎2005年の活動について

 産卵の観察会と幼生の観察会を行いました。
 ☆7月10日(日)・・・・雨天のため中止しました。
 ☆7月23日(土)  山口湾で産卵と幼生の観察会を行いました。 
    
産卵には、計6つがいが来ました。
    また、幼生の観察会は、昨年までの干潟にはもういなくなってしまった(なかなかの問題なのです)ので、別の場所で行いました。小さな2齢(前体幅9mm)から10齢(80mm以上)まであまり数は多くないのですが、見ることができました。2、3齢は小さくて見つけににくいようでしたが。

◎2006年の活動について

◎観察会 の報告をします。
☆8月12日(土) 幼生観察会  下関市千鳥浜
 予定どおり実施しました。参加者は、13名(+報道)と少なかったのですが、3齢から8齢までを観察して頂きました。今年は、昨年生まれの3齢(全体幅12〜13mm)と一昨年生まれの6齢(全体幅30mmほど)が多く、順調に育っている様子でした。
 下関はこのところ参加者が少ない状況なのですが、来年は多くなることを期待します。

☆8月13日(日)  幼生観察会  山口湾南潟
 開始前ににわか雨が降り、少し心配しました。また、潮の高い時期で引きが遅く、潮がまだ引ききらない干潟では、這い跡が不鮮明な状態がありました。時間とともに、発見しやすくなり、十分観察してもらえたことと思います。関東や広島など県外からの参加者もあり、山口県のカブトガニについて理解が広がったものと思います。

◎2007年の活動について

◎観察会 の報告をします。
☆7月15日(日)
  ・産卵観察会  台風4号の影響で、風が強く波もあり、産卵には適さない状況でした。
  ・幼生観察会  午後には少し風も収まり、潮が引いてからの観察なので、影響はなく幼生達を観察することができました。8齢が多く活動しており、参加者には十分に見てもらえたものと思います。2齢の幼生(前体幅9mm)を見つけた女の子がいてびっくりしました。参加者25名

午前中は台風4号の影響で風が強かった。 硬い干潟で、8齢幼生が多く活動していた。
雄(前体幅22cm)の死体が砂浜に上がっていた。 前体にあった傷・・・原因は?!

☆8月12日(日)
  ・幼生観察会  千鳥浜乃木浜沖干潟
 下関の観察会とすれば参加者が多く、20名ほどで干潟に入った。この2〜3日風がとても強く、砂が移動しており、干潟の表面は平坦で完全に砂質化していた。這い跡もすぐに消え、カブトガニ本来の行動を観察しにくい状態でした。しかし、子供達も幼生を見つけることができ(むしろ大人よりも)、よかった。

全く埋まらない砂質化した干潟で、歩きやすくはあった。 幼生見つけた!

◎2008年の活動について

◎観察会 の報告をします。
☆ 7月6日(日)
   産卵観察会  下関市の千鳥浜王喜海岸
            前日にやっと今季初つがいを確認したところ。どうにか2つがいがやって来ました。参加者7名。
   幼生観察会  下関市乃木浜の干潟
            5月6日の調査に比べれば随分少なかったものの、活動している幼生たちを観察できました。
            脱皮直後、脱皮中の個体もいました。前体幅約8mmの2齢は3匹のみ。参加者13名。

   


☆ 7月21日(月)
   産卵観察会  山口湾幸崎護岸
            周防大橋北側の砂場につがいが来ていました。すぐ近くで産卵するようすがよくわかりました。
            参加者約15名。四国からも2ファミリーが来られました。
   幼生観察会  山口湾岩屋の干潟
            昼ころの雨も上がり、程良い暑さで、アナアオサびっしりの干潟に入りました。
            アオサのない澪筋に4〜9齢の幼生をたくさん見つけることができました。参加者40名以上。

   
   

◎2009年の活動について

◎観察会 の報告をします
☆ 7月25日(土)
   
 産卵観察会・幼生観察会  山口地区
               産卵観察会・幼生観察会は、
天候が悪く中止しました。
☆ 8月8日(土)
    幼生観察会  下関市千鳥浜
              24,5名の参加者があり、干潟で3、6齢の幼生を多数観察することができました。
             ※産卵観察会は、潮・曜日の関係で、今年度は行いませんでした

 
  

◎2010年の活動について

◎観察会 の報告をします。残念ながら、潮時と曜日の関係で産卵の観察会を土・日曜日に設定出来ませんでした。
☆ 7月25日(土)
    幼生観察会  下関市千鳥浜
              幼生は少ないものの、2齢から8齢まで観察することができました。
              「前回の観察会より少ない」という声を聞きました。
   
           参加者は30名、愛媛県や広島県から、また2回以上の方もありました。

 8月12日(木)
    幼生観察会  山口湾
              参加者約40名で行うことができました。
              3齢から9齢まで数は多くはありませんでした。

千鳥浜  山口湾

2011年の活動について

 下関地区、山口地区とも産卵・幼生観察会の両方を行い、多くの方々に参加していただきました。ありがとうございました。

☆7月18日(月)海の日 
  ・産卵観察会  下関市白崎神社南側の王喜海岸
            生憎、波とそれにともなう濁りがあり、つがいの姿は数秒(?)しか見ることはできませんでしたが、産卵泡は十分観察できました。7つがいがやって来ました。10名ほど。
  ・幼生観察会  千鳥浜乃木浜の干潟
            雨がポツポツと落ちてくる状態で始めましたが、干潟に入るときには上がり、とても広い干潟で、3〜9齢までを観察することができました。20名以上の参加がありました。広島からも親子で来ていただきました。

☆7月31日(日)
   産卵観察会  山口湾東側の護岸
            朝早かったにもかかわらず、30名以上の参加がありました。
            周防大橋の下で、すぐ前で産卵しており、よく観察することができました。
  ・幼生観察会  山口湾岩屋の干潟
            固い干潟になってしまったものの、幼生を見つけやすい状態で、3齢から9齢まで見ることができました。
            40名くらいの参加でした。

   
 千鳥浜(王喜海岸)  山口湾

☆9月11日 2001年産で雄に成長した6匹を、満潮の王喜海岸から故郷の海に帰しました。それぞれ前体に写真のような緑色のラベルを貼っています。見かけられた方は是非事務局(原田)にご連絡下さい。ラベルの番号は「Shimo.001]〜「Shimo.006」です。

   

☆9月27日〜11月27日 豊田ホタルの里ミュージアムで秋季企画展「下関のカブトガニ」展が開催されました。

☆11月6日(日)朝 NHK「さわやか自然百景〜山口 千鳥浜」が放送されました。

2012年の活動について 
 今年は、下関地区では、産卵・幼生の観察会、山口地区では幼生観察会を行いました。来年も観察会は行いたいと思っています。
下関地区観察会のようす
  7月22日(日)に行いました。
  産卵観察会 
    天候も良く、産卵には22つがいが訪れ、波打ち際でも産卵し、そのようすをよく見ることができました。20数名参加。
  幼生観察会
    今年は、昨年生まれの2、3齢がたくさん活動しており、小さな幼生ですが、子供たちも見つけることができました。30数名参加。

山口地区観察会のようす
  8月4日(土)に行いました。
  幼生観察会
    50名以上の参加者があり、干潟が混雑し、荒れることを心配しましたが、事前にお話ししたことをよく聞いていただき、マナー良く観察してもらいました。幼生は3〜9齢まで多いという程ではなかったのですが、這い跡から泥に潜ったまま活動している幼生を見つけて喜んでいる子供たち・保護者の様子に、観察会をしてよかったと思いました。

   
 王喜海岸(下関)  山口湾の干潟

会員を募集しています!
 ・会則は特に定めていません。
 ・会費については、今のところ無料です。(活動費は寄付を充てているところです。)
 ・会報「カブ研だより」を年2回会員に送付しています。
 ・入会は随時です。申し込みは事務局までお願いします。
       事務局  原田 直宏
             〒757-0002 山口県山陽小野田市大字郡3135
             Tel & Fax  0836-75-0612
            

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