（注意）
　以下では、次の定理を証明済みとします。
・直線、円に関する基本的な定理
　２直線が交わるときの対頂角に関する定理、円周角の定理、円周角の定理の逆など。
・平行線、三角形に関する基本的な性質
　三角形の内角の和に関する定理や、平行線の錯角、同位角に関する定理など。
・三角形の合同、相似に関する諸定理
　いわゆる、三角形の合同条件、三角形の相似条件、中点連結定理など。
・特殊な四角形に関する定理
　平行四辺形に関する定理、ひし形、長方形に関する定理など。
・三角形の面積、および、面積比に関する定理。

三角形の五心
　三角形の五心とは、重心、外心、内心、垂心、傍心（ぼうしんのぼうは本来きへんです）のことです。
・重心
　三角形の辺と向かい側の頂点を結ぶ直線を中線といいます。三角形の三辺の中線は一点で交わります。これを三角形の重心といいます。
・重心の存在定理

　三角形ABCの辺CA、辺ABの中点を、それぞれ、M、Nとします。直線BMと直線CNの交点をGとし、直線AGと直線BCの交点をLとします。以下では、Lが辺BCの中点であることを示します。
（証明）

　点Mは辺CAの中点であるから、

点Nは辺ABの中点であるから、

ゆえに、点Lは辺BCの中点である。

（証明おわり）
・外心
　三角形の３辺の垂直二等分線の交点を外心といいます。
・外心の存在定理

　三角形ABCの辺CAの中点をM、辺ABの中点をNとし、辺CAの垂直二等分線と、辺ABの垂直二等分線との交点をOとします。また、辺BCの中点をLとします。OMとBCが垂直あることを示せば３辺の垂直二等分線が点Oで交わったことになります。以下ではこれを示します。
（証明）

　三角形ACOにおいて、OMは辺ACの垂直二等分線であるから、

三角形BCOにおいて、(3)より

Lは辺BCの中点であるから、

ゆえに、OLは辺BCの垂直二等分線である。

（証明おわり）
・内心
　三角形の三つの内角の二等分線の交点を内心といいます。
・内心の存在定理

　三角形ABCの角Bの二等分線と角Cとの二等分線との交点をIとします。直線AIが角Aの二等分線であることを示せば三つの角の二等分線が点Iで交わったことになります。以下ではこれを示します。
（証明）

　IからBC、CA、ABに下ろした垂線の足を、それぞれ、S、T、Uとする。

三角形CISとCITにおいて

三角形AITとAIUにおいて、(3)より

すなわち、AIは∠BACの二等分線である。

（証明おわり）
・垂心
　三角形の各頂点から対辺に下ろした垂線を下ろします。この３本の垂線の交点を垂心といいます。
・垂心の存在定理

　三角形ABCにおいて、頂点B、CからCA、ABに下ろした垂線の足を、それぞれ、Q、Rとし、直線BQとCRの交点をHとします。さらに、直線AHと直線BCの交点をPとします。APとBCが垂直であることを示せば、三本の垂線が一点で交わったことになります。以下ではこれを証明します。
（証明）

∠RAH＝∠RQH　…(3)

∠RQB＝∠RCB　…(4)

　∠BQCと∠BRCはともに直角であるから、次の二つのことが成り立つ。

A、R、H、Qは同一円周上にある。　…(1)

B、C、Q、Rは同一円周上にある。　…(2)

したがって、４点A、R、P、Cは同一円周上にあるから、

（証明おわり）
・傍心
　三角形の二つの角の外角の二等分線と残りの一つの角の内角の二等分線との交点を傍心といいます。どの角の内角をとるかによって異なる交点が得られるので、ひとつの三角形には傍心が３個あります。
・傍心の存在定理

三角形ABCの角B、角Cの外角の二等分線の交点をIとします。直線AIが角Aの内角の二等分線であることを示せば三つの角の二等分線が点Iで交わったことになります。以下ではこれを示します。他の２個の傍心に関しても同様ですので、これは省略します。
（証明）

　IからBC、CA、ABに下ろした垂線の足を、それぞれ、S、T、Uとする。

三角形CISとCITにおいて

三角形AITとAIUにおいて、(3)より

すなわち、AIは∠BACの二等分線である。

（証明おわり）