清元 夕立
立方 萩井喜延

「処女評判善悪鏡」(むすめひょうばんぜんあくかがみ)という白浪五人女の狂言の
二番目序幕の柳橋梅川の場で、奥女中の竹川に化けた素走りのお熊が、
若旦那の真野屋徳兵衛へ美人局を仕掛けるところに使用したのが、本名題を
「貸浴衣汗雷」(かしゆかたあせになるかみ)、即ち清元の「夕立」で、独吟だったところに
価値のある曲です。
徳兵衛も実は盗賊の神道徳次で、二人の色仕掛け、たらし込み、探りあい等が面白い
演じどころでした。
作詞は河竹黙阿弥、作曲は清元順三で、慶応元年八月に江戸の市村座で徳兵衛を
五世坂東彦三郎、竹川を市村家橘が演じました。
今回の演者は、詩情と雅趣に富む芸風なので「夕立」の内容を、筋を離れた一人立ちで
演じます。