常磐津 「松廼羽衣」
立方 天女 猿若世仕子 伯了 市川男女蔵

この曲は、「羽衣伝説」を題材にした謡曲の「羽衣」を基にして作られています。
振付 萩井栄秀。美術 碇山喬康。
明治31年、東京歌舞伎座の正月興行の中幕に、五代目尾上菊五郎が初演した「新古演劇十種」の一つで、長唄と掛け合いの「羽衣」を、後に岸澤古式部が、常盤津だけの曲に整理し、開曲した曲です。
三保の浦曲(うらわ)を、漁師の漕ぐ舟が行き交う様子や、漁夫が漁をする様を語ったオキで始まります。
三保の松原で漁師の伯龍(了)は、松の枝にかかった美しい羽衣を見つけます。家に持ち帰ろうとしますと、「のうのう、夫れこそは羽衣とて・・・」と伯龍を呼び止める声がして、天女が現れ羽衣を返してくれと頼みます。伯龍は、天女の羽衣と知り、良いものが手に入ったと喜び、返そうとはしません。
「今はさながら・・・」からクドキになり、天女は羽衣が無いと舞い飛ぶ事ができず、儚く命が消えてゆくから返してくれと懇願します。
「たとえ世界が変わるとも・・・」からは二人の色模様になります。
伯龍は、天女の舞を所望し、羽衣を返します。天女は羽衣をまとい、天上へ帰って行く、という内容です。
優美さと品格を持った作品で、素踊り、衣装付きのいずれも各流派でよく踊られる演目です。