● 去りゆく人へ想いをよせて ●

たくさんのスターたちが退団していく今日この頃。
ただ楽しく見ていた幼い頃よりも少しずつ“想いいれ”が変わってきた私。
「なぜ?」「もう見れないの?」そう思うことが多くなってきたから、せつない。

そんな中で卒業していってしまう・・・人たちへの想いを綴ってみようと思いました。


*絵麻緒ゆう *成瀬こうき
*匠ひびき  *朝宮真由  *蘭香レア  *久城彬  
*音羽椋  *麻路さき  *久世星佳  *森奈みはる

〜2002.6.30〜

お気に入りやファンモードとは関係ありません(^^ゞ


 YU EMAO 〜絵麻緒ゆう〜
2002 『追憶のバルセロナ』 『ON THE 5th』にて退団

〜極上の笑顔〜

 絵麻緒ゆう・・・ぶんちゃん。初めてぶんちゃんを見つけたのがいつかはわからない。
 ただ、7年のブランクを経て再び見始めたのが'92年の秋だから、すでに見ていただろう『うたかたの恋』はまだそれから2作目。
 「とびっきりの笑顔の人」ただそれだけだった・・・・・・・。
 お芝居では・・・あまり気にならない・・・というかなんというか、それよりもショーでは必ず探してしまう人だった。
 ショーでのぶんちゃん・・・。それは一度目にしたら2度と忘れない笑顔が魅力だった。
 眉間にしわ寄せて切なげに歌ったり踊ったりするぶんちゃんではなく、何かいいことあったんだろうか?と思わせるほどの笑顔。
 だけど哀しいかな、一時期ぶんちゃんには「わがまま」というウワサが流れた。
 そのウワサを覆すように私に「ぶんちゃんは人が大好きなの。それだけに裏切られることが一番キライでコワイって。」
 と教えてくれた人がいた。そして「一度裏切られるともうダメなんだって・・・。」と。
 確かに、ファンに対してサービス精神が旺盛かというと「?」と思えるところもないではないが、それが彼女のスタイルだった。

 忘れられない作品がある。『魅惑U』である。
 “ビギン・ザ・ビギン”のシーンで、暗転ののち、ぶんちゃん、ワタル、さえちゃんと3人ポーズで、ぶんちゃんからスポットがあたる・・・
 という別になんでもないシーンで、いつもぶんちゃんは極上の笑顔を見せてくれていた。
 あまり宝塚を見ない母もあまりぶんちゃんに好意的ではなかった妹も・・・「かっわい〜〜〜〜〜〜」と声をあわせた。
 この公演は本当にその笑顔見たさに通ったくらいだった。そしてビデオまで買った・・・。
 ぶんちゃんの魅力はその極上の笑顔・・・・・・。
 いつの間にか妹もぶんちゃんを気にするようになっていた。これぞ、まさしく“ぶんちゃんスマイルマジック”である。

 だがいつの間にか、それだけではなくなってきていた。
 いつの間にか、お芝居で"演ずる"という言葉が似合わなくなってきていたのだった。
 よく"役になりきって”という言葉を耳にするが、ぶんちゃんの場合はそれがあてはまらない。
 “なりきる”のではなく、“役の人物そのもの”になってしまっていたのだった。
 『エリザ』のルドルフ、『WSS』のリフ、『我が愛』のチャムガ、『夢シェイクスピア』のピーター、『業平』の梅若・・・あげればキリがない。
 ・・・・・・となるとお芝居もショーも目が離せなくなる・・・・・・見たくて見たくてしかたがなくなる。
 それからというものの、芝居で見せる役者魂とショーで見せる華やかなスター性はさらに磨きをかけて、こわいものなし・・・となった。
 そんな中の異動。生粋の星組っ子だったのに専科生となって・・・雪組に出演して・・・・・・。
 様々なファンの心配をヨソにトドロキさんの・・・ある意味の壁を崩し、突入し、私たちを和ませてくれた。これも“ぶんちゃんマジック”か?
 トドロキさんにしてみれば「星組から来る子はコワイ。」って思ってただろうな・・・ぐんちゃんしかり、ぶんちゃんしかり。

 正直すぎるくらい正直。素直すぎるくらい素直・・・それゆえに敵となる人も少なくなかったに違いない。
 それが明るみに出た突然の退団発表。劇団の不条理さにほとんどの宝塚ファンが怒りに震えた。そして哀しみを覚えた。

 それを乗り越えさせるためのようなぶんちゃんと彼女を取り巻く生徒たちの絆。舞台の笑顔。仲間の笑顔。
 ファンの前でも生徒の前でも自分を包み隠さずいたからこそ、今、彼女の周りにいる人たちはあたたかいんだろうな・・・そう思った。

 いつも誰よりも舞台に・・・そして自分に妥協を許さなかったぶんちゃん。
 「あー、ぶんちゃんの笑顔のショーが見たい。」常々言っていた私たち姉妹。
 激動の今を・・・思い出すときに必ず、口にするだろう“ぶんちゃん”の名前。
 淋しいけれど、私の救いは・・・たった1作だけど相手役に恵まれてそしてなるぴょんと深い強い絆で結ばれて退団していくということ。
 そしてあの心の底からの・・・・・・人の心を和ませる笑顔。

 あなたの笑顔はシアワセの源だったよ・・・・・・ぶんちゃん。
 



 KOUKI NARUSE 〜成瀬こうき〜
2002 『追憶のバルセロナ』 『ON THE 5th』にて退団

〜屈託のない笑顔〜

 私が成瀬こうきという男役を知ったのは'93の『グランドホテル』『BROADWAY BOYS』だった。成瀬こうき、研2。
 7年間のブランクを経て宝塚を再び見始めた翌年の初夏だった。新しくなった大劇場で星組、花組を見て3組目の月組。
 涼風真世のさよなら公演・・・ということであまりチケットはなかったけれど、初めて“同じ作品を何度か見た公演”となった。
 正直言って、まだ誰が誰だかわからない・・・涼風と天海と久世さんくらいしか・・・・・・(呼び捨て悪意なし)
 そんな私の視界に突然飛び込んできたのがスラリとした屈託のない笑顔の成瀬こうきだった。
 友だちと「成瀬こうきって顔薄いけど、いいよねぇ。」としきりに言っていた。
 そんなある貸切公演の時に早朝から並びながらまた、「成瀬ってさ〜。」と言っている時に
 私たちのすぐ後ろに並んでいた女性が声をかけてきた。「あなたたち、成瀬こうきって好き?」
 そこから・・・成瀬談義が始まった・・・・・・・。あとあと聞くと筋金入りの成瀬ファンの人だった。Hさん。
 それがきっかけで彼女とも現在もお付き合いさせてもらっているのだけれども、
 彼女のおかげで私の成瀬こうきへの関心度は公演ゴトに高まった。

 順風満帆・・・そう言って間違いない下級生時代を過ごしていたと思う・・・成瀬こうき・・・なるぴょん。
 新公の主役を早くから抜擢され、バウでは2番手格の役を演じ・・・・・・さらにさらに・・・というまさしく絵に書いたようなスター路線だった。
 ところが、いつの頃からか安穏として見ていられない境遇がやってきた。
 そんな中、新公を卒業し、翌年に雪組へ組替、そして3年後に専科へ・・・・・・。
 大劇場、バウ、全国ツアー、ロンドン公演・・・・・・。
 いろいろな役を見た・・・一番印象的なのは『WANTED』のイリア。初めて芝居を見て泣いた作品だった。
 しかもセリフのないところで泣けた。
 その時「役者だ。」と思った。それから新公の『バロンの末裔』・・・歌のウマサを改めて思い知った。暖かく、ぬくもりのある深い歌声。
 『チェーザレボルジア』地方公演のルイ12世。ヒゲをつけた長髪がとても凛々しかった。
 『ノバ・ボサ・ノバ』のマールとメール夫人。すばらしきかなコメディエンヌぶり。
 『猛き黄金の国』の三野村さん、そして『カステルミラージュ』のフランク・・・・・・。役者街道まっしぐら。
 ただ、あまり1曲歌わせてもらう・・・というチャンスがあまりなく、広くその歌声を響かせることは最近まであまりなかった。

 正塚作品に出会い、久世さんの下で芝居を覚えただけあって、なるぴょんの芝居はとても渋い。ウマイ、細かい。
 下級生の頃はあまりにも細すぎて、まるで衣装に着られている感が否めなかったのが、いつの間にかどんな衣装も着こなして
 背中や、肩の見せ方やふとした表情にまで味があって・・・存在感のあるスターになっていた。
 いつからか、笑顔が変わった。まるで吹っ切れたようにとてもさわやかな、清々しい笑顔を見せてくれるようになった。
 『猛き』に続き、『カスミラ』を見てそう思った。「楽しいんだろうなぁ・・・。」そう思っていた。
 「さ〜てこれからも・・・・・・。」と期待に胸を膨らませていた時に退団発表。愕然とした。
 でもね、今になってみたら・・・お茶会でのぶんちゃんとのやり取りを見ていたら、本当にぶんちゃんと退団同期でヨカッタと思うし、
 なるぴょんの笑顔が変わらず、心に染みとおる笑顔だから、不思議と心も落ち着いている。
 だけど、ふいにいつまでたっても・・・どの組を見てもなるぴょんがいない・・・ということが無性に淋しくなることがあるんだろうな・・・と
 今からそんな不安だけはある・・・・・・・。

 ディナーショーやお茶会などで見たなるぴょんは私のイメージを崩すことなく、生徒に愛され、ファンに愛されていることが
 痛いほど伝わってきて・・・・・・とてもシアワセだった。
 「最後まで笑顔で・・・。」そう言ったなるぴょんの笑顔・・・。ディナーショーで泣いてしまっている生徒に「笑顔笑顔★」というなるぴょん。
 成瀬こうきと出会って約10年。
 最後のお茶会で「グランドホテルを思い出して・・・淋しくなります。」と言ったら「ふ、古〜。」と笑ったなるぴょん。
 パーティでHさんについて挨拶させてもらった時に勇気を持って、後悔しないように・・・・・・
 「“成瀬こうき”という人に出会えてヨカッタ。あなたがいたおかげでHさんとも知合いになれました。
  Hさんのおかげでたくさんあなたを知ることができました。
  そしてあなたのおかげで宝塚ファン生活がとても楽しいものになりました。」と感謝の意を込めて伝えた・・・・・・
 なるぴょんはまた屈託のない笑顔で「ありがとうございます。私もシアワセです。」と言ってくれた。
 だけどね、本当はもっともっと見ていたかったよ。
 今だから言うけど、本当はメデタク大きな羽根を背負って大階段を降りてくるなるぴょんを見たかったよ。
 だけどなるぴょんの笑顔のおかげでそんな・・・・・・気持ちも薄れてしまいました。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だけど、やっぱり「淋しくない」と言ったらウソだ。

 ありがとう・・・正統派2枚目スター成瀬こうき。不器用だけど素直で人が大好きななるぴょん。誰からも好かれるなるぴょん。
 私がいつか、宝塚ファンというものから卒業したとしても、忘れない、語ることのできる1人だと思う。
 



 HIBIKI TAKUMI 〜匠ひびき〜
2002 『琥珀色の雨にぬれて』『Cocktail』にて退団

〜大きな瞳に涙〜

 私はこれといってチャリオのファンではなかった。
 昔から花組の名ダンサーとして意識はしていたけれど、私の心を捕らえるダンサーではなかった。
 これは人それぞれの好みだから、ファンの人には申し訳ないけど・・・「ごめん」と言った感じ。
 歌もなんだか・・・だったし、芝居も心に残っているものといえば『白い朝』くらい。
 目があまりにも大きすぎる人は表情が出しにくい・・・って聞いたことがあるけど、チャリオもまさにそうだと思った。
 
 ところが私がとてもチャリオを意識する出来事が起きた。宝塚ファンなら誰もが知っている涙の退団公演。
 それも宝塚での千秋楽まで5日をきったくらいからのこと。
 それから千秋楽まではファンにとってもチャリオにとってもまるで生き地獄のようだった。
 千秋楽の舞台で思うように動けないチャリオ。ダンサーだというのに踊れないチャリオ。
 悔しくてあの大きな瞳に涙をこらえているのがよくわかった。
 かつてのダンサー安寿ミラの振付で踊る・・・という花組の組子ならこのうえない喜びのシーンも踊れなかった。
 ファンでもない私でさえも死にそうにツラかった。ファンは本当に針のむしろだと思った。
 悔しさのチャリオの後ろに微笑んで支えるみどりちゃんがいた・・・オサがいた・・・・・・組子がいた。
 涙をこらえているのがわかる・・・泣かないように笑顔でいるのがわかる・・・・・・こらえられなくなった瞬間がわかる。

 ショーでもさよならショーでもチャリオの無念に応えるファンの熱い拍手にチャリオも応える。
 回れやしないのに、回ろうとする・・・・・・手をつく・・・・・・。「もう、やめていいよっ!!!」そう叫びたかった。

 最後の最後の大階段・・・「チャーリー」と呼ばれても一人では降りられない。
 下級生の手をぎゅっと握って降りるチャリオ・・・。挨拶で事情を話しながらもファンに応えるチャリオ。
 銀橋も1人では渡れない・・・いや、歩けない・・・・・・。
 お芝居の間もショーの間も・・・・・・ムリヤリ精一杯歩いていたんだということがよくわかった。

 窮地に立たされたチャリオと花組の組子・・・・・・。こんな不幸な出来事に立ち向かえたのは絆だろうな。
 こんな不幸な出来事の中からとても大きな何かをつかめたんだろうな・・・と思った。
 東京も公演ができなくて、代役公演の間リハビリに励んだチャリオ。
 そんな都合よく治るわけないよね・・・・・・また、ギリギリで舞台に立ったんだと思うよ。
 
 心無いこという人もいたけれどもそれよりも何倍も何十倍も何百倍ものファンがチャリオにエールを送っていたよ。
 ・・・・・・そう思いながらも今でもあの最後のショーを見ると・・・例え1場面でも涙が出てくるよ。

 涙のない・・・・・・心からの笑顔が見たいな・・・チャリオ。



 MAYU ASAMIYA 〜朝宮真由〜
2002 『カステルミラージュ』『ダンシングスピリット』にて退団

〜優しい笑顔がステキだった〜


 正直な話、最初、まゆぶーが好きじゃなかった。
 というか、魅力がわからなかった・・・・・・・。
 それがいつ頃からだろう・・・気になって仕方がなくなったのは・・・・・・。『聖夜物語』というドラマシティ公演だ。
 「なんと安定したダンサーなんだろう。」これが第一好印象だった。
 それからというもののショーでは必ず探す人となった。
 星組は忙しい・・・見たい人がヤマほどいる・・・でも必ず見た。
 それから「お芝居もうまいねんなー。」と思うようになった。
 ・・・・・・・まゆぶー。ずーっとそう呼んでいるが、心からの愛情を持って呼んでいる。

 そして宙組へ組替。宙組デビューは『望郷』の毛皮商人。めちゃめちゃ貫禄があった。カッコよすぎた。
 あの『ベルばら』でさえもベルナールを久城とはまた違った雰囲気で演じきった。
 なんと人間味のある・・・おおらかなベルナールだろう・・・人柄がにじみ出るようだ。そう思った。
 まゆぶー初のディナーショー。この時のMCでも人柄の良さが十分感じ取れた。
 
 まゆぶーの魅力は何よりも笑顔。ショーの時に見せる笑顔。
 なんと優しい笑顔なんだろう。こういう笑顔の人はいそうでいない。
 特に娘役とデュエットを踊っている時にその相手役に見せる笑顔は格別だった。
 「こりゃ、たまらんな。ドキドキするだろうな。」というくらい魅力的な笑顔だった。
 私はそんなまゆぶーの笑顔がたまらなく好きだった。

 歌を歌うチャンスはあまりなかったけど、芝居もうまい、ダンスもうまい・・・こういう人がいなくちゃ・・・と何度も思った。
 決して涼しげでもなく、アイドル的でもなく、2枚目でもない・・・・・・でもこの上もなく“オトコマエ”なのである。

 これからまだまだ見たい・・・と思っていた矢先、突然の退団発表・・・・・・驚愕した。
 「なんでやねん。もっと見たいやんか。」そう何度も思った。
 そしていつの間にか妹までもがまゆぶーの笑顔の虜になっていた。

 最後の舞台は『カステルミラージュ』。フランクチームのフランクの片腕ビットリオ。
 フランクは同期のなるぴょん。これがたまらなくうれしかった。
 2人とも芝居がうまい。ちょっとしたやり取りさえもがツボ。
 最後にレオが死んでしまうところの2人の芝居は最高だった。
 あの2人の芝居でレオチームとフランクチームの関係がわかったような気がした。
 ショーは『ダンシングスピリット』。あの魅力的な優しい笑顔の見納め。
 すしおさんと対で踊るまゆぶーが大好きだった。
 対で・・・というのはファンとしてはなんともツライ並びだけれども・・・とても見応えがあった。
 
 ムリヤリ見に行った東京公演で・・・「もうまゆぶー見られへんねんな。淋しいな。」そう妹が言った。
 優しい笑顔のまゆぶー。あの笑顔がもう一度見たい。今でもそう思っている。



 REA RANKA 〜蘭香レア〜
2001 『猛き黄金の国』『パッサージュ』にて退団

〜軽やかなダンサー〜


 レア。「男役なのにカワイイ名前でカワイイ子やな。」レアを見た時そう思った。
 花組のダンサーとして活躍するんだろうな・・・と思っていた研2の頃だったと思う。
 レアのお芝居を初めて見たのは『失われた楽園』新公。チャリオの役だった。
 幕開きに歌を歌いながら、踊りながら出てくる・・・・・・チャリオと似た声質と声の出し方に「あちゃ・・・。」と思った。

 それからしばらくして雪組に組替になった。
 同期の雪組ダンサー花央レミちゃんと入れ替えだったっけか?

 「まあ、キレイに踊るのね〜。」と思っていた矢先に退団発表をした。
 「どないしたん?何があったん?」と思わせた。

 最後の舞台は『猛き黄金』と『パッサージュ』。
 『猛き』では沖田総司。元沖田総司のぶんちゃんと芝居をする。
 あの雰囲気がとても心地よかった。
 『パッサージュ』では大活躍だった。
 凛とした立ち姿に華やかな笑顔。しなやかな踊りに軽やかなステップ。
 言うことなしのスターだった。
 すごく心がこもっていて、とてもキレイに踊っていた。
 去りゆく人の笑顔なのか・・・・・・笑顔がとても清々しい。

 白い衣装で踊るレアはまるで重力を感じさせず、それこそ天使のようだった。
 ロケット前にソロで踊り、ロケットに加わる。それもとても華やかだ。

 千秋楽では胸や衣装に花をつけて踊っていた。気がついたら、涙が止まらなかった。
 「惜しい、惜しいダンサーだ。」そう思った。
 ダイナミックなダンサーではないけれども繊細なダンスを踊れる人だと思った。

 蘭香レア・・・その名前に思い出すのはやはり白い衣装で踊るレア。
 心が動かされるダンサーの1人だったね。

  

 AKIRA KUJO 〜久城彬〜
2001 『ベルサイユのばら』にて退団

〜職人気質のショースター〜

 久城彬・・・ファンはヒロコさんとかロコさんと呼ぶ。
 でも私と妹はあえて“久城”と呼んでいた。

 久城をはじめて認識したのは『ラ・カンタータ』だった。
 妹が「『若き日』の新公でみなこちゃん(真織由季)の役をやる人がめちゃめちゃ美人やねん。」と言ったのがきっかけ。
 それでロンドン公演を経て次の作品で認識したのである。
 プロローグで下手花道から出てきた時に“彼”はいた・・・・・・そう超美的スマイルの“彼”久城彬。

 それからずーっと久城だけを見ていたワケではない。星組を見る時は・・・見る・・・という“その他大勢お気に入り”だった。
 『燃える愛の翼』も久城が出るから見に行ったワケではない・・・「久城も出るし・・・。」で行ったのだ。
 確か『国境のない地図』でもまだ役付きではなかった。カウフマンの部下みたいな感じだったと思う。
 ショーでも同期の湖月わたる氏はスター級だからセンター2列目や前列で踊る。
 でも久城は2列目の端・・・とか3列目のセンターだった。

 ところが・・・ショースター久城彬が気になって仕方なくなってきた。
 いつの間にか「必ず探す」「オペラで追いかける」ほどになった。
 しかし当時の星組にはしぶじゅんもいたし、音ちゃんもいた・・・かよちゃんもいる・・・・・・あっちこっちを見ながらも久城も見た。
 『ドリアングレイの肖像』これは衝撃的だった。
 バジル・・・ドリアンに想いをよせる画家。ドリアンの肖像を描いた画家。
 こんなに大きな役は初めてじゃないか?というくらいのおいしい役。
 その時、役者久城彬をはじめてみた(と思う)
 ドリアンに刺されて死んでしまう場面・・・あの場面・・・・・・・あのワンシーンが忘れられなくなった。
 確か・・・初めて舞台写真が発売された・・・・・・と思う。(ショー部分だったが)

 それからお芝居では『エリザベート』のシュテファン、『誠の群像』の永倉、『ダル・レーク』のルネ・・・とおいしい役が続いた。
 それでもショーのほうがガゼン輝いて見えた。

 『魅惑U』『ヘミング』『グレートセンチュリー』・・・・・・。
 とりわけ、『ヘミング』は最高だった。出づっぱりだった。
 欠かせないのがストガねえちゃん(笑)誰よりも妖しく、艶やかだった。
 『犯罪的』とまでもいわしめたあのガーターベルトといい、あの目線といい・・・笑ってしまうほどすごかった。
 そして博多座での『グレセン』のセリ上がり・・・・・・そしてフィナーレの並び。
 ファンとして涙が出るほどうれしいことだった。

 『wss』の時はぜひアニタを・・・と騒いでいた。残念ながら、アニタではなく、ペペだった。誰よりも色の濃いペペだった。

 まだまだこれから・・・と思っていたところへ退団のウワサが流れ出した。
 このウワサは1年くらい私に付きまとった・・・私もなんとなく確信を持ち始めた時、星組で『ベルばら』をやると決まった。
 「サイアクやー。」と思っていたら、これで退団となった。ホントにサイアクやー。
 『ベルばら』なんてなーんにも役ないやんか・・・そう思った。
 ところが久城は私たちの気持ちを裏切った・・・なんとカッコいいベルナール!!!

 サイワイなことは『ベルばら』ゆえに通おうとは思わなかったこと。
 久城のサヨナラの役として納得できたけど、何度も見に通おうと思う作品ではなかったこと。
 ショースター久城彬にとってショーがなかったことは残念だけど、フィナーレで十分見せてくれた。

 あんなにインパクトの強い人はいないだろう。美しくて、妖しくて、艶やかで・・・。
 ダンサーなワケじゃない。魅せ方がウマイのだ。独特の雰囲気を持って踊る。歌もうまい。芝居もなかなか渋い。
 惜しい・・・今でも惜しい。職人気質を持ったスター久城彬。

   

 RYO OTOWA 〜音羽椋〜
2000 『黄金のファラオ』『美麗猫』にて退団

〜踊ることが一番だったのね〜

 音ちゃん。花組の下級生なのに踊れる人。
 そういうイメージがずーっとあった。
 初めて音ちゃんを見たのは『イッツ・ア・ラブストーリー』のフィナーレ前。
 しぶじゅんとチャリオのシーンで男役が10人くらい大階段で踊っていた時に最下でいた。
 「まー、なんてカワイイ子なんだろう。」これが第一印象だった。
 それからいつ見ても楽しそうに踊る音ちゃんがいた。

 そんな音ちゃんがしぶじゅんたちと一緒に星組に組替になった。
 組替早々にショーで大きな役がついた。組子が歌い踊るセンターで1人で踊る・・・そんな大役だ。
 それでも音ちゃんは輝いてはつらつと踊っていた。ダンサー音羽椋だった。

 音ちゃんが少しずつ変わり始めたのは新公の主役をやるようになってからだった。
 バウでも確実にいい役をやり、踊るだけということから芝居やら歌やら・・・いろいろになってきた。
 それでも踊っている音ちゃんが大好きだった。
 軽やかに踊る音ちゃん。何よりも楽しそうにうれしそうに踊る音ちゃん。

 そんな音ちゃんを悲劇が襲った。『夜明けの天使たち』の公演で足を怪我した。
 すぐにダンスシーンだけは代役がたてられたが、松葉杖の生活となった。
 でもね、松葉杖をつきながらも自分で車を運転して帰るんだよ・・・すごいよね。

 それからの音ちゃんのダンスには心なしか精彩を欠いているような気がした。
 「あの時のがひびいてるんだ。」そう思った。

 入りや出ではぶっきらぼうなイメージといわれていた音ちゃん。
 でもお茶会はとても気さくだった。ホントに気さくだった。3回行っただけだけどもとても楽しかった。

 最後の舞台となった『黄金のファラオ』。
 あのラストシーンでのダンスは星組デビュー『パッションブルー』で見せたダンスになんとなく近いような気がした。

 いつも自分にウソがつけなかった音ちゃん。正直すぎた音ちゃん。
 ダンサー音羽椋・・・踊ることが大好きだったんだな〜。今でもそう思っている。



 SAKI ASAJI 〜麻路さき〜
1998 『皇帝』『ヘミングウェイレビュー』にて退団

〜マリコさん率いる星組の雰囲気〜


 私の中でここまで偉大なスターはいない。
 麻路さき・・・。私はマリコさんのファンではなかった。マリコさん率いる星組のファンだった。
 歌がヘタだ・・・・・と言われ続けてきたマリコさん。
 でも誰よりも細やかな芝居ができる人だった。
 目線、指先、足の運び・・・・・・つま先・・・・・・全てが行き届いている芝居。
 それを満喫できたのが『エリザベート』。
 銀橋にただ座っているだけなのにトートの心の動きが読み取れるくらいだった。
 その芝居を受け継いだのがさえちゃんこと彩輝直だと思う。

 マリコさんはあの華やかさで劇場を包み込むことができた。
 組子が踊っている時にマリコさんを見る目が大好きだった。
 舞台の上から、劇場の隅々までオーラで包み込むことができる人だと思う。

 そしてマリコさんのもうヒトツの武器は娘役・・・相手役を見る目線。
 優しく投げかける目線。
 それは下級生にも伝授されていた・・・それがまゆぶーこと朝宮真由。
 TCAかなにかのイベントでマリコさんがトップ娘役たちと踊る場面があった。
 誰がいたかは今、思い出せないが、それぞれに優しい視線を投げかけながら踊っていた。
 踊る娘役たちもどこかしら高揚しているように思えた。
 そしてぐんちゃんに変わった瞬間、その優しさがさらに増した・・・・・・。
 久しぶりに会う・・・まるで妹を見ているような眼差しだった。
 そのあともちろんゆりちゃんとも踊ったのだが、なぜだかそんなマリコさんと娘役たちを見ていて涙が出た。
 優しい・・・やさしすぎる・・・そう思えた。

 ノルさんや他の組子たちがマリコさんを見る時の目も好きだった。
 それだけ人間的にも愛された人だったんだと思う。

 その後のイベントでマリコさんが急遽舞台にあがったことがあった。
 私は見ていないけれどもノルさんが興奮し、ぶんちゃんは泣いていたらしい。
 いろいろな憶測でいろんな批評が飛び交ったが・・・純粋に懐かしさに涙が込み上げたんだと思う。

 もう一度マリコさん率いる星組のショーが見たい・・・・・・時々、そう思う。
 麻路さきという人を思い出すとき、一番に浮かぶのは「さあおいでよ。」というような笑顔で組子たちと踊る最高の笑顔である。



 HIROKI KAIKYO 〜海峡ひろき〜
1997 『失われた楽園』『サザンクロスレビュー』にて退団

〜背中さえもカッコいい〜


 色の濃い、渋い役者:海峡ひろき。ダークなイメージの人。
 そして何よりもスーツが似合う人。スーツを着た後姿に哀愁がある人。

 少し気の弱い役から、人のよい役、かなりの悪役・・・なんでもこなせる人だった。
 そしてやはり笑顔がステキな人だった。

 退団すると決まった時も惜しくて惜しくて・・・もっと見たかった・・・と思っていた。
 でも退団してからも「海峡さんがいればな〜。」と何度も思うことがあった。

 そして『狸御殿』を見た時・・・あまりの懐かしさに涙が出た。
 いい席で見ていたので、泣いている私と舞台で笑顔の海峡さんとバッチリ目があった。
 「この人なんでこんなコメディで泣いてるの?」という顔をしていた。
 「違うのよ。芝居で泣いてるのじゃないのよ。あなたを見て泣いてるのよ。」と言いたかった。

 海峡ひろき・・・・・・こんなにスーツを完璧に着こなす男役は今もいないだろうな。



 SEIKA KUZE 〜久世星佳〜
1997 『バロンの末裔』『グランド・ベル・フォリー』にて退団

〜役者そしてショースター〜


 渋いスター。渋いトップスター。久世星佳。
 地味なイメージがある反面、笑顔が最高にすばらしい。

 歌がうまい、芝居がうまい。芝居のうまさと言ったら、最高級だと思う。
 細やかな・・・心で動く芝居・・・正塚流。
 成瀬こうきと彩輝直はその芝居を受け継いでいる。

 作品にはあまり恵まれなかったが、どんな役でも久世流にしていた。

 『WANTED』のニコル・・・これは最高だった。
 最後の作品『バロンの末裔』もなんともいえず、しんみりとよかった。
 でも私にとっての最高傑作は『銀ちゃんの恋』。
 あの銀ちゃんは久世さんじゃなければできなかっただろう。
 エンターティナー久世星佳ではなくて役者久世星佳なんだと思った。

 久世星佳・・・情景が見えるような歌を歌える人・・・もう一度「ニコルのテーマ」が聞きたい。



 MIHARU MORINA 〜森奈みはる〜
1995 『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』にて退団

〜あなたがNO.1〜


 私の中で娘役ナンバー1。
 歌える・踊れる・芝居もできる・・・そしてカワイイ。こんな娘役は滅多といないと思う。
 何よりもヤンさんやミキさんと踊っている時がうれしそうだった。
 かわいらしい、少しとぼけた役ばかりかと思いきや、最後は少ししっとりとした役で新たな面を見せてくれた・・・もったいない。
 歌もうまくて、どんな歌でも歌いこなす・・・・・・。

 同期トップ娘役トリオの中で大人の雰囲気の白城あやか、かわいさが魅力の麻乃佳代・・・そしておとぼけキャラのみさる。
 なんだよ、おとぼけかよ・・・・・・・・・でもホントにそうだったもん。

 トップ娘役だから寿命は短い・・・わかっている・・・・・・。
 でももっと見たかったんだ・・・みさるを・・・・・・。
 そんな思いで今もみさるの舞台を見に行っている・・・・・・・。あまり作品に恵まれていないけれども。

 みさる・・・・・・『メランコリックジゴロ』のフェリシアは地でやってたでしょ?
 未だにそう思ってしまう・・・・・・・・・3拍子揃った娘役・・・森奈みはる。




** たくさんのありがとうをこめて **


TOPへ


〜THANK YOU〜