● 去りゆく人へ想いをよせて ●
〜Part2〜

たくさんのスターたちが退団していく今日この頃。
ただ楽しく見ていた幼い頃よりも少しずつ“想いいれ”が変わってきた私。
「なぜ?」「もう見れないの?」そう思うことが多くなってきたから、せつない。

そんな中で卒業していってしまう・・・人たちへの想いを綴ってみようと思いました。


*渚あき *香寿たつき *夢輝のあ 

〜2003.11.2〜

お気に入りやファンモードとは関係ありません(^^ゞ


 NOA YUMEKI 〜夢輝のあ〜
2003 『ガラスの風景』 『バビロン』にて退団

〜やわらかな笑顔のままで〜

 夢輝のあ・・・ねったん。
 私がねったんを初めて見つけたのは『虹のナターシャ』の新公だった。
 トウコちゃんの役、洪孫科を演じていた。チャイナ服で登場し、歌う・・・そんな役だった。
 ものすごくかわいらしかった・・・・・・それが初ねったん。

 そして名古屋で見た『晴れた日に永遠が見える』・・・催眠術の授業で本当にかかってしまう学生を演じていた。
 催眠術にかかって脱いでしまう赤い靴下・・・。これもまたとてもかわいかった。

 ところが次にねったんを見て驚いたのが『真夜中のゴースト』の新公。またトウコちゃんの役だった。
 白いイメージの悪い役ウィリアム・・・。
 兄の存在をねたみながら、「これからはオレの時代だ。」と銀橋を渡りながら、歌う歌が強烈だった。すごい声量だった。

 なんでもできちゃうのに・・・当時の雪組は上級生も同期も下級生も超豪華でなかなかチャンスがなくて、やきもきした。

 宙組へ組替・・・。新公の主役をやった。いよいよか?・・・と思ったのに本公演ではあまりコレ・・・と言った役がなかった。
 バウでは『TEMPEST』のプロス・ペロー。これもなんだかオソロシイ役だった。
 最後殺されてしまう・・・ところでの死に方がとても強烈だった。思わず、声が出た。

 そして星組へ・・・。『花の業平』の藤原国経が好きだった。
 業平と高子が逃げて、基経に見つかってしまう場面で、姉の高子を連れ戻すよう基経に言われ
 「さあ、姉上。」という・・・このヒトコトがとても心にしみた。
 姉、高子の気持ちもわかるけど、兄である基経に言われたことには従わなくてはいけない・・・
 そんな気持ちと姉へのあたたかい気持ちが込められていた。

 それから『イーハトーヴ夢』これにはヤラれた。ホントにヤラれた。
 宮沢賢治とジョバンニ。この2つを鮮やかに演じ分けてしまったねったんに本当に驚いた。
 あまりのすごさにショックを受けた。あまりのショックでしばらく立ち直れないくらいだった。
 妹の死に歌う『慟哭の朝』は涙が出た。純粋な心の持ち主賢治と真っ白な心のジョバンニ。
 自らの死に直面する賢治とカンパネルラの死の哀しみを乗り越えていくジョバンニ。
 ねったんの心の白い部分とこの2人が重なって・・・・・・言いようのない感動に震えた。

 それからすぐあとの『プラハの春』のヘス中佐。「あのジョバンニはどこへ行ったの?」と思わせるくらい
 同一人物が演じているとは思えないくらいの恐怖。
 ねったんの奥深さを感じた作品だった。

 ねったん・・・もっともっと見ていたかった。
 マイクからあふれてしまうくらいの歌をもっと聴いていたかった。
 愛くるしい顔とはまるで違う男性まで演じてしまうすごさをもっと見せてほしかった。

 あのスカ――――ン・・・と来る歌はもう聴けない。
 心和むあのやわらかな笑顔ももう見ることはできない。

 ねったん・・・『虹のナターシャ』の時の愛くるしい顔と
 『イーハ』の千秋楽で見せた涙・・・帽子で顔を覆って泣いていたねったんの姿・・・忘れられない。




 TATSUKI KOJU 〜香寿たつき〜
2003 『ガラスの風景』 『バビロン』にて退団

〜最上級の舞台人〜

 香寿たつき・・・たーちん。
 たーちんは昔からなんでもできた。彼女いわく・・・決して器用なワケではないらしい。
 不器用だからこそ、人の倍やらないといけないらしい。でもいつも完璧だった。

 以前NHKの番組で新公に取り組むたーちんを見た。本役の杜けあきになぐさめられて泣きじゃくるたーちん。
 ホント、下級生ちゃんだった。
 だけど舞台ではすでに完璧な男役:香寿たつきだった。
 なんでもできる上級生が揃っていた雪組。そんな中で全く遜色なく、息づいていた。

 私の中でのたーちんのNO.1は『凍てついた明日』のクライド・バロウ。
 オソロシイくらいに最高のクライドだった。
 追われ続ける・・・心の行き場を探し続けるクライドをあそこまで色鮮やかに見せ付けられて・・・感動というより驚愕だった。

 宝塚にハマり始めて10数年・・・5本の指に入るくらいの驚愕ぶりだった。
 その他にも『失われた楽園』のレスリー・シュワルツ、『花の業平』の基経、『ガラス』のジョーイ・バクスター・・・
 この3つが私の中で色濃く残っている。

 たーちんの歌は心によく響く。・・・・・・うまい。本当にうまい。
 でもうまいだけではない。心に響くのだ。・・・しんみりと染み込んできたり、ずどん・・・と打ち込まれてきたり。
 聴いていてとても気持ちがいい。
 芝居もうまい。間の取り方や、セリフ運びがなんとも絶妙で・・・仕種なども非の打ち所がない。

 それをひっくるめたように『ガラスの風景』でギターを弾きながらクララに聴かせる歌は、奥深く心に響いてきて涙が止まらなかった。

 歌える・・・踊れる・・・そして役者。完璧なまでの三拍子揃ったスター。
 まるで職人のような気質を持ったトップスター香寿たつき。
 いつも気持ちのいい舞台をありがとう。




 AKI NAGISA 〜渚あき〜
2003 『ガラスの風景』 『バビロン』にて退団

〜永遠のミューズ〜

 渚あき・・・あっきー。渚あきの雪組時代はあまりよく知らない。花組に組替してきた時・・・そう'93年の『ベイシティブル-ス』。
 彼女は“エリザベス”という役でタモさん演じるホールデンの恋人の役だった。
 どんな女性像だったかはあまり覚えていない。セリフもそうあったわけではないような気がする。
 なぜ、覚えているか・・・というと、ホールデンがヤンさん演じるハーヴェイに「エリザベスだ。」と紹介するシーンがあったからだ。
 いや、ただ紹介したからではない・・・私たちが見た日に限ってタモさんが少し、ナマったからだ(失礼)
 それが・・・その時が初めて“渚あき”という人の存在を認識した。

 あっきーは、歌も歌えて、踊れて、芝居もうまい・・・「なんでトップ娘役にならへんのやろ?」と思っていた。
 みさるたち同期が退団していくのを見て「あぁ、この人は脇で締めていく人なんや。」と思った。
 でもホントになんでもできちゃうので、頭のどっかに「トップになれたら。」という気持ちはあった。
 『ハウトゥ』のスミティは、彼女にしかできない役だった。コケティッシュで、キュートで・・・。
 「渚あきは?」と聞かれたら即座に「スミティ♪」と答えられる。
 その他にも印象的なのは、『白い朝』のおのぶ、『夜明け』のお新、『タンゴ』のミシア、『ミケ』のルイーザ・・・。
 健気なおのぶから、大人の女性ミシア・・・悲しみのルイーザ・・・。なんでもこなしてしまう。

 トップ娘役じゃなくてもいい。組には必ず必要などんな役でもこなしてしまう、別格の娘役としてどんどん活躍してほしい・・・
 そんなことも思ったりした。実際、そうなりえる実力は持っていたから・・・。

 ・・・・・・そんなあっきーが星組の・・・しかもたーちんの相手役としてトップ娘役に決定した時はすごくすごくうれしかった。
 「あぁ、今まで在団しててヨカッタね。」って心からそう思えた。
 そんなあっきーのサヨナラ公演・・・『ガラスの風景』ではオープニングの青い衣装で歌うあっきーに涙、
 ジョーイを見つめるローラに涙・・・そして黄色い衣装で見上げながら、微笑みながらセリ下がっていくローラに号泣。
 ずっと涙が止まらなかった・・・。すごいファンだったワケではない。なのにサヨナラ公演にして・・・存在の大きさに気がついた。
 最後のサロンコンサートで客席に手を振りながら、セットにぶつかってしまったあっきー。
 客席の組子たちからのかけ声に本気で照れるあっきー。

 上級生からも下級生からも慕われていた・・・。決して長い期間いたワケじゃないのに星組のみんなからとても愛されていたあっきー。
 三拍子揃った娘役・・・渚あき・・・永遠のミューズ。

 そんなあっきーに・・・心から「よかったね。そしてありがとね。」と伝えたい。





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