お知らせ

10万人保釈署名運動 (会報・寒梅)から新たな会を発足し完全無罪をかちとる活動をおこなっています。

 

(会報/交流誌)『無罪!』 各号目次  No.8 No.19

「10万人保釈署名運動」の記録

 

現在はブログの方で更新しています。そちらをご覧下さい。

→→ http://blog.livedoor.jp/perfect_innocence/

 5月11日、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧裁判差戻し審の第16回公判が、東京地裁刑事第20部(林正彦裁判長)で開かれました。前回に引き続き手続きのみの公判となりましたが、今回も「被告が裁く裁判」が力強くたたかい抜かれました。いつものとおり、開廷後すかさず須賀武敏・十亀弘史・板垣宏さん3人が意見陳述に立ち、法廷の方向を決しました。
 まず板垣さんが、差戻し審における検察官「立証」の最大の柱となっている「金沢借家関連証拠」がなんの証拠にもならず、同借家関連証人である現役公安刑事藤井俊裕の「証言」が虚構そのものであることを明らかにし、検察官立証が立証として成立しないことを具体的に論じきりました。続いて須賀さんが、弁護人が求めている証拠開示の全てを実現させるよう強く迫った上で、「金沢借家関連証拠」の無意味性を明らかにし、「唯一正しい、かつ当たり前の判決」としての無罪判決を、と気迫を込めて訴えました。さらに十亀さんが、「あらためて根本的なことを述べる」として、本件のデッチあげの構造と経緯を明らかにし、無罪判決を破棄した控訴審判決の卑劣な政治性を厳しく弾劾しました。
 この後、弁護人が「証拠開示請求」と弁護側「証拠調請求」を行ないました。「証拠開示」は検察官が独占している「証拠」のうち3人の無実を証明するものの「開示」を求める当然の請求です。「証拠調請求」は、検察官立証を打ち崩す「弾劾証拠」と、新たに被告の無罪を立証する「新証拠」の2種の証拠調べを求めるものです。それらに対して検察官は、一部で「同意」、一部で「不同意」との意見を述べて抵抗し、裁判所も判断を留保しました。検察官も裁判所も真実が明らかになることをこそ最も恐れているのです。
 しかし、無罪証拠の開示がないまま、弁護側立証に入るわけに行きません。被告・弁護人は法廷におけるたたかいと閉廷後の折衝によって、「6月4日」と予定されていた次回公判の中止をかちとりました(次回以降の公判日程は現時点では未定)。完璧な弁護側立証とその十分な準備を目指して早期結審策動を吹っ飛ばしたのです。それは同時に、「簡易・迅速」な裁判を目論む裁判員制度と真っ向から対決する闘争の勝利でもあります。
 現在、法政大のたたかう学生に対して暴力行使そのものの弾圧が吹き荒れています。革命の前進は常にデッチあげを含む治安弾圧を激化させます。しかし、団結の力は無限です。弾圧はたたかいを倍加させるだけです。迎賓館・横田裁判闘争もすでに22年間デッチあげ弾圧を打ち砕き続け、そしていま差戻し審の弁護側立証に向けて新たな勝利の地平を切り開いています。ともにたたかい、勝利しましょう。

 

 

被告として裁判員制度に反対する              

『無罪!』50号(09.6.10発行)より    十亀弘史

 

 「迎賓館・横田事件」という政治的冤罪事件の「被告」とされた私たちは、裁判員制度の危険性をいわば体験的に実感しています。私たちがどのようにたたかって一審の無罪判決を勝ち取ったのかを振り返れば、裁判員制度を廃止しなければならない根拠がたちどころに理解できるのです。裁判員制度の誤りは、無論、いくつも指摘することができます。本誌の前号でも、足立昌勝先生が、その制度がもたらす「刑事裁判の変質」を明快に批判されています。冤罪ということでいえば、それはまさしく冤罪を量産する制度以外ではありません。私はその制度の導入に強い憤りを感じています。
 私たち被告団と弁護団は、法廷に保障されている全ての対決手段を尽くして検察官主張の1つ1つを徹底して打ち砕きました。一審16年間の公判闘争は一切の妥協を排して激烈でした。そして、闘いに必要な準備期間は必ず掴みとったのです。東京地裁が「簡易・迅速」の裁判を強制することを私たちは決して許しませんでした。
 例えば、証人に対する検察官の主尋問について、まず必ず、被告・弁護人の手元にその速記録を届けさせ、その記載の検討の時間をとってからでないと反対尋問に入ることはありませんでした。当然なのです。そうしなければ検察官証人の「証言」に現れた虚構や矛盾をしっかりと把握し、暴き出すことはできません。2ヶ月に3回という落ち着いた公判ペースは、私たちが無罪判決を手にするためにどうしても必要だったのです。
 公判開始前に密室で「証拠」を「整理」し、最初から一定の方向付けがなされた証拠調べをたった数回行うだけの裁判で、被告の防御権がどうして十分に行使できましょう。私たちの一審裁判がもしも3日か6日で終了していたとしたら、あるいはたとえ半年で終わっていたとしても、判決は無罪にはならなかったにちがいありません。無罪判決は延々たる公判闘争の重い積み重ねによってしか実現させることができないのです。
 被告の防御権を圧殺し、その行使の機会を剥奪する裁判員制度は、法廷における公正の実現や対等の対決を物理的に不可能にします。裁判員制度は検察官と裁判官、すなわち国家権力そのものに、現状を越える権限を付与して、冤罪を含む重刑判決を流れ作業のように宣告させ続ける制度です。
         ×      ×      ×
 裁判員制度は「市民の良識を裁判に導入する」制度ではなく、誤った裁判に市民を強制動員する制度でしかありません。
 『リプレーザ』という季刊雑誌に掲載された、高山俊吉弁護士の『裁判員制度はいらない』(講談社)についての書評を読んで仰天しました。それは、本の紹介ではなく、デマゴギッシュな罵倒でしかありません。評者(海津正和)は、まず高山氏の本の内容を現に書かれているのとは正反対に要約した上で、その虚像を論難しているにすぎません。例えば次のとおりです(1行1行全ての誤りに反論したいところですが、紙幅がありませんので3点についてだけ要約的に示します)。
 ・書評は、<高山氏は自らの批判の論理を明らかにしないまま、多くの反対があるから制度に反対だという逆立ちした論理展開をしている>としています。しかし、『裁判員制度はいらない』には随所に、高山氏自身の揺るぎのない制度批判が明確に書き込まれています。「多くの反対」の引用は自らの一貫した主張をより客観的に明らかにするために、確りと整理されて提示されているのであり、<みなさんが反対するから反対しましょう>という主体を没した論理構造では全くありません。
 ・書評は、<高山氏が市民に対する蔑視とその裏返しとしての現状賛美に陥り、刑事裁判の現状が健全だから新しい制度はいらない、と主張している>としています。転倒した批判の極致です。高山氏は「現在の刑事裁判が抱える救いがたい人権侵害を反省もせず、もっとひどくする裁判員制度を推進しようとしているのはいったい誰なのだ。現に裁判で苦しむ人たちを突き放す人たちが司法改革を言い、市民の立場と真っ向から対決する人たちが国民の司法を叫ぶ」と書いています。書評は高山氏のこの怒りを少しも読み取ろうとしていません。
 ・書評は<裁判員制度反対運動は市民を愚民とみなし民主主義を否定する運動であるから裁判員制度自体よりはるかに危険だ>として、<その運動の拡大に抵抗することこそが現在重要かつ切実な課題になっている>としています。しかし、高山氏は「憲法の刑事基本権10ヵ条は、血を流し命をかけて国家権力の人権蹂躙と闘った市民がついに獲得した刑事捜査や刑事裁判の基本原則である」と書き、だからこそ、その基本原則を蹂躙する裁判員制度を許す訳に行かないとしているのです。ここにはたたかう市民への熱い共感こそあれ、市民への蔑視や民主主義の否定など微塵もありません。書評の主張する<裁判員制度反対運動に反対する運動>こそが、市民のたたかいを圧殺し、国家が新しく提唱する制度には唯々諾々と従おうとする権力翼賛運動にしかなり得ません。書評の筆者は、例えば徴兵制の導入に対しても<市民が参加する兵役制度に反対することは市民蔑視であり、民主主義の否定だ>とでもいうのでしょうか。
       ×       ×       ×
 裁判員制度反対運動が掲げる「裁判員制度は現代の赤紙だ」というスローガンは、ただの比喩ではなく、恐ろしい本質的なリアリティーを有しています。小田中聰樹氏が述べるとおり「有事立法により国民を戦争協力に総動員する。裁判員制度により国民を人権抑圧に総動員する。二つはまったく同じ発想の総動員立法」なのです。それは、市民が「参加する」制度ではなく、「動員される」制度であり、国家が掛けてきた攻撃そのものです。その先には明らかに戦争があり、弾圧があり、そして冤罪があります。
 裁判員制度のシンボルマークはつながった2つの輪です。私にはそれは悪意に満ちた新しい手錠以外には見えません。その鎖を断ち切るたたかいはまさにこれからです。

 

『未決勾留16年-迎賓館・横田事件の被告は無実だ』本、事務局までお申し込みを 定価 1800円

目次

第1部 現代の「大逆事件」
第1章  爆取と長期勾留を許した裁判所の責任 足立昌勝 
第2章 私たちはやってない 迎賓館・横田事件被告団
  1 「中核派を壊滅せよ」  
  2 被告が裁いた20年   
第3章 無実は無罪に ―弁護人による解説―
  1 全ての手段を駆使した弁護活動 藤沢抱一
  2 福嶋一審判決批判 青木秀樹 
第4章  激闘! 未決勾留16年
  1 座談会 拷問的な獄中処遇  内田博文・足立昌勝・須賀武敏・板垣宏
  2 獄中闘争記
    「激闘」を少し離れて 十亀弘史
    無実で、12年の獄中弾圧を許さない 福嶋昌男
  3 救援連絡センター40年と未決勾留16年 山中幸男
第5章 完全無罪を我が手に
  1 たたかいはこれからだ 迎賓館・横田事件被告団
  2 被告の決意
    無罪をこの手にかちとるまで一心不乱に闘い抜く。  須賀武敏
    共産主義者として、労働者として、被告として  十亀弘史
    いかなる攻撃も、おそれることなく立ち向かうことで打ち破れる! 板垣宏
    一審有罪判決は許せない 福嶋昌男

第2部 たたかいの広がり ― 被告とともに
第1章 不屈の闘いに連帯の輪を 三角忠
第2章 それぞれの現場から
   1 獄壁を越えて
     @ 座談会 保釈実現と無罪判決へ―支援運動の歩み 
       須賀陽子・十亀トシ子・東海林勤・桜井善作・大貫淑子・田村典子
       益永スミコ・高木美佐子・三角忠・内藤雄二(司会)
        謹んで感謝を捧げます 迎賓館・横田事件被告団
        兄貴をよろしく 福嶋明宏
     A インタビュー 藤田祐さん大いに語る
     B 一途な「反戦のたたかい」に魅せられて 木村武志
     C 夢をもって勝利の大道を進もう 西山勲
   2 戦時司法を打ち破ろう
     @ 司法の現場から
        戦争への道―裁判員制度を廃止粉砕しよう 高山俊吉
        改憲攻撃としての「司法改革」 鈴木達夫
     A 知の現場から
        戦前における爆発物取締の実相 荻野富士夫
        権威主義的刑法あるいは刑事司法の刻印―横田・迎賓館事件の位相  宮本弘典
        拷問大国から脱却するために―拷問禁止委員会における日本 前田朗
   3 星野文昭・暁子さんのたたかい
     @ 33年目の獄中闘争 星野文昭
     A 無期とたたかい、ともに生きて 星野暁子
   4 たたかう労働組合から
     @ 国労5・27臨大闘争弾圧を反撃の武器に 羽廣憲
     A 全金本山闘争、普通の労働者が駆け抜けた34年   長谷武志
第3章 新たな戦前を許さず
  1 座談会 法大弾圧をぶち破る 久木野和也・内海佑一・須賀武敏・十亀弘史・板垣宏
  2 獄中からのメッセージ
    腐りきった世の中を変えるチャンスだ 新井拓
    被告団と私は同じ前線を担う! 浴田由紀子
    垣根を越えた連帯を 大道寺将司 
     「新たな戦前」の治安裁判所 丸岡修
     「迎賓館・横田事件」裁判で無罪を勝ち取り、21世紀の闘いの前進を  和光晴生
  3 連帯のアピール
     勝利の道を歩む修業僧・福嶋昌男さん 青柳晃玄
     裁判員制度はまやかしの制度だ 伊佐千尋
     風流で、余裕ある闘いに乾杯! 宇賀神寿一
     冤罪を許すな 大洞俊之
     司法は、国家の拒否装置から脱却せよ 木村まき
     「デッチあげ」が民主主義を枯らす 楠山忠之
     みなさんの無罪獲得は治安立法攻防の帰趨を制する 佐々木通武
     4人を沖縄の悲劇の歴史上の人物のようにしてはならない 座覇光子
     パワ・ハラの最たるもの 竹見智恵子
     正義は我にあり、ともに敵に引導を渡そう 富山保信
     検察控訴は日本の司法システムの大問題 永井迅
     ドレフュスの無罪獲得とゾラの闘い 西村豊行
     「治安維持法の時代」は足音をたててやってくる。 西村仁美
     「それでもボクはやってない」 野田坂伸也
     知恵と力を合わせましょう 平山まゆみ
     一人一人の力で国が誤らないようにしよう 益永陽子
     共に無罪を確定させよう 水嶋秀樹
     バクさんと共に 吉崎健
第4章 こうしてデッチあげ弾圧を打ち破った
 1 沖縄ゼネスト・松永裁判から 松永優      
 2 中核派に対するデッチあげ弾圧に勝利して
    @ デッチあげの崩壊 迎賓館・横田事件被告団
    A 天皇制との対決―皇居ロケット弾事件裁判 内藤雄二
    B 「自民党本部放火事件」デッチあげ裁判 藤井高弘
    
柔軟な革命的精神―「むすび」にかえて 小田原紀雄
資料編
完全無罪をかちとる会の案内

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07年11月5日、異議申立棄却決定弾劾

 10月16日の上告棄却決定に対する異議申立てを行っていましたが、最高裁は11月5日にこれを棄却する決定を行いました。この決定をもって一審の無罪判決を破棄し一審へ差し戻すという東京高裁の不当判決が確定しました。あらたな怒りを胸に、爆取デッチあげ弾圧を打ち破るたたかいを開始していきたいと思います。

 

声明 10・16上告棄却決定を弾劾する

                        迎賓館・横田事件被告団(07年11月3日)

 2007年10月16日に、最高裁判所第一小法廷(泉徳治裁判長・横尾和子・才口千晴・涌井紀夫各裁判官)が「本件各上告を棄却する」との決定を出した。「本件各上告」とは、私たち3人の弁護団と被告それぞれが同年2月13日に、「控訴審判決の破棄と無罪の自判」を求めて行った上告をいう。
 裁判所はまたしても政治的判断を最優先させた。最高裁判所は、この決定において、司法の府ではなく治安弾圧の一機関になり果てている。私たちは、この上告棄却決定を強く強く弾劾する。
 決定書に書かれた「上告棄却」の「理由」はただ26行でしかない。しかもそのうち16行は、上告趣意書では副次的にしか述べていない爆発物取締罰則についての憲法判断(しかも全く誤った判断)なのである。結局残りの10行だけが、控訴審判決の決定的な誤りを詳細に明らかにした弁護団と各被告の上告趣意の本題への「回答」となっている。しかしそれは回答でもなければ、なにか意味のある判断でもない。門前払いの決まり文句を10行にわたって羅列しているにすぎない。
 すなわち、上告趣意書が展開した、控訴審判決の憲法違反・法令違反・最高裁判例違反・重大な判断の誤りについては、ただ単に「実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり刑訴法405条の上告理由に当たらず」とか「証拠の評価や証拠の採否にかんする原判断(控訴裁判所の判断)に誤りは認められない」とおざなりの結論を書くばかりである。最高裁第一小法廷が私たちの上告趣意に真摯に向きあった形跡は欠片も見られない。
 私たちは、デッチあげに易々と加担する裁判所に、改めて深い怒りを覚える。ただ、今回の上告棄却によって私たちのたたかい方が変わるわけではない。私たちの一貫したたたかいのあり方と方向は、この先の「差戻し審」においても同じである。
 付言するが、今回の上告棄却についての新聞報道は、どの紙面も一つの決定的な事項を伝えていない。10月18日付けの夕刊各紙の記事は、どれもただ「控訴審判決が一審無罪判決を破棄し、差し戻した」と書くだけで、その控訴審が実はたった一度の事実調べも行っていないことを明らかにしていない。控訴審判決は、一審の16年をかけた綿密・詳細な事実調べの全てとその結論としての揺るぎのない無罪判決を、自らは一切事実調べを行なわないまま「一瞬にして」破棄したのだ。このことだけによっても、控訴審判決は100度も破棄されなければならず、従って、今回の上告棄却決定の誤りは明白になる。マスコミはその最も肝心な事柄を報道していない。
 私たちはいつでも、全ての事実と事実の本質を明らかにして私たちのたたかいを進める。私たちの反撃、すなわち無罪を確定させるたたかいはまさにこれからなのだ。 

 

横田・迎賓館爆取違反事件

控訴審判決を弾劾する

 

関東学院大学教授  足立昌勝

 (「週刊法律新聞」9月29日付号から転載。右画像)

 刑訴法的常識覆した裁判

 刑事裁判の原則は、証拠裁判主義にある(刑訴三一七条)。証拠に基づかない事実認定はしてはならない。その証拠の証明力については、自由心証主義が採用されている(同三一八条)が、事実認定の根拠となる証拠は、当該法廷で証拠請求され、採用が決定され、証拠調べを経たものでなければならない。自由心証主義が採用されているといえども、裁判所が勝手に証拠を作り(これを一般的には、「捏造」という)、その証拠に基づいて事実を認定することは絶対に許されてはならない。

 ところで、このだれでもが分かるような原則を踏みにじる暴挙が行われた。それも、専門的な法律家であり、刑事裁判のエキスパートである裁判官によって行われた。
 二〇〇六年五月十九日、東京高等裁判所第三刑事部の中川武隆裁判長は、横田・迎賓館爆発物取締罰則違反被告事件について、破棄差し戻しの判決を言い渡した。このことは、どこにでもありそうな普通の判決である。しかし、この判決を言い渡した裁判所は普通ではなかったのである。
 一審判決は、二〇〇四年三月二十五日に東京地裁で言い渡され、被告人は無罪とされた。それに対して、検察官が控訴を行い、第一回法廷が、二〇〇六年一月十六日に開催された。そこでは、通常の法廷のように、第一回の冒頭手続が進められ、その後、検察官の証拠調べ請求が行われたところ、裁判所は、すべて証拠調べ請求を却下してしまった。これでは、判決の予測を可能にしてしまうものである。裁判所は事実認定に必要な証拠を手に入れることを拒否したので、証拠裁判主義により、原判決を肯定せざるを得ない。すなわち、控訴棄却が裁判所の結論でなければならなかった。
 しかし、裁判所は、このような刑事訴訟法的常識を覆し、勝手な事実認定を行い、破棄差し戻しとした。

 当事者主張聞かない推論

 では、裁判所は、どのような手段を用いたのであろうか。
 判決は「理由」第一の5で、「原判決は、取り調べ済みの関係各証拠の評価・価値判断を誤り、これに、検察官が請求した証拠を却下して取り調べなかったという審理不尽の誤りが重なり」事実を誤認したという(七頁)。また、結論においても、「取り調べ済み証拠の評価・価値判断を誤り、かつ、検察官請求に係る、取り調べるべき証拠を取り調べなかったという審理不尽の誤り」を犯し、事実を誤認したものであると判断している(四八頁)。
 ここからも明らかなように、原審破棄に至った理由は二つ存在している。一つは証拠の評価・価値判断を誤ったというものであり、二つ目は証拠採用の不十分性についてである。 裁判所は、どのような証拠に基づいて、取り調べ済みの関係各証拠の評価・価値判断を誤ったと判断したのであろうか。そこでの判断には、原審での証拠が用いられている。
 では、証拠とは一体どのようなものであろうか。
 証拠は、当該裁判と一体のものであり、判決書と一体のものである。したがって、同じ証拠を用いるとしても、それは当事者の主張にさらされなければならず、当事者の批判にさらされていない証拠は証拠価値を持っていない。裁判所は証拠の評価だから許されると理解したのかもしれないが、まさにその証拠の評価こそが証拠裁判主義の問題であり、自由心証主義の問題である。自由心証主義の下で許される「自由な判断」は、当該法廷で得られた証拠に限定されるものであり、証拠調べを含むものである。証拠に関する当事者の争いを聞きつつ、自由な判断の下で、その証拠の持つ証明力が決定されるのである。
 当事者の主張を全く聞いていない形式的な証拠書類や証拠物は、心証形成にとって意味がない。当該法廷では、証拠をめぐる当事者の争いを聞くからこそ、その証拠の証拠価値が決定されるのである。
 このことは、二つ目の理由にも当てはまる。検察官の証拠調べ請求に対し、被告人・弁護人の意見を聞き、その請求の状況等の判断から、裁判所はその請求を棄却するのである。その両当事者の主張も聞かずに、一方的に推論のみで結論付けることは、証拠裁判主義に反するものである。

 これは裁判ではなく「糾問」

 この判決書には、証拠の引用に関し、「当審で検察官から請求された証拠」が挙げられ(七頁)、事実、「抹消部分に関する鑑定書」(一四頁)、「二通の鑑定書」等(四二頁以下)や証人(三七頁、四三頁)が引用されている。
 果たして、これはどのような意味を持っているのであろうか。そのほとんどは、原審で証拠請求されたものであり、控訴審で再度証拠調べを請求してるものである。それらの証拠を根拠に、証拠調べが不十分だと結論付けている。
 しかし、裁判所は、第一回公判で証拠調べ請求をすべて棄却した。裁判所が持っているのは、その目録だけであろう。その目録だけでは、原審の審理の不十分性を考えることはできない。判決書は、そのことについての説明を一切欠落させ、自分勝手の結論に終始している。
 この控訴審判決は、刑事訴訟法では許されていない事実認定を「証拠の評価・価値判断」の名において行ってしまった。
 当事者の主張を一切抹殺して言い渡されたこの判決は、裁判ではない。糾問である。この判決の構造を認めてしまえば、その影響は、すべての刑事事件に及ぶであろう。裁判所による、証拠に基づかず、当事者の主張も聞かない勝手な事実認定への道が開かれてしまうだろう。この判決は、絶対に認められてはならない。日本の刑事裁判を守るために、本判決の不当性を訴え続けなければならない。

 (「週刊法律新聞」9月29日付号から転載)

 

シリーズ「5・19判決批判」 ー 事実審理なしの破棄・差し戻しは許されない

bQ 上告趣意書最終提出日(11月30日)を通告した最高裁第1小法廷

迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧被告団・板垣 宏

拙速裁判を画策する最高裁第1小法廷を弾劾する

 7月に本件上告審の係属部が、最高裁第1小法廷に決まりました。被告・弁護団は、すぐに上告趣意書の提出期限を、来年の3月末日とするよう意見書を提出しましたが、最高裁第1小法廷はこれを全く無視、最終提出日として本年の11月30日を一方的に通告してきました。最高裁は迅速裁判・拙速裁判で原判決(高裁判決)を肯定するつもりです。許せません。
 最高裁第1小法廷の構成は、才口千晴、泉徳治、島田仁郎、甲斐中辰夫、横尾和子の5名です。同法廷は昨年末に、ある共謀共同正犯事犯に関し、いわゆる「練馬事件」の「謀議の立証には『客観的な行動』の立証が必要だ」という判例を、「客観的行動を要しない」と変更した法廷です。この判決は、共謀共同正犯の成立要件を非常に広範囲に広げた上、直接証拠がなくても情況証拠だけで認定できるとしている点で極めて反動的であり、上告審は極めて厳しい闘いであることを踏まえて全力で闘わなくてはなりません。

 

私たちが求める裁判は「原判決(高裁判決)の破棄」と「検察官控訴の棄却」

 5・19判決(中川武隆裁判長)の最大の誤りは、15年半も審理した上で出した、基本的に正しい一審無罪判決をみずからは一度たりとも審理せず、「即断」だとして、「事実誤認」「審理不尽」というありもしない理由で、まるでぼろ屑ででもあるかのように投げ捨てたことです。
 控訴審は被告の救済のためにあるのですから「『自判』する場合だけでなく、『破棄・差戻し』判決の場合にも、事実審理は絶対に必要である」という原則を真っ向から掲げて闘いぬかなくてはなりません。
 すなわち、原判決には以下のごとく根本的誤りがあります。@憲法31条(適正手続きの保証)に違反し、A迅速裁判の保証を規定した憲法37条1項に違反し、B被告・弁護人の声をまったく聞くことなく一審無罪判決を破棄した点で憲法37条2項(反対尋問権の保障)にも違反している、Cまた、事実調べなしで、実質的に「有罪方向で自判」したのと同様な判断を示している点で最高裁判例にも違反している、Dさらに、刑訴法382条(事実誤認があるとの判示〔判決〕は、確定的なものでなければならない)に違反し、単なる「疑い」、「可能性」だけで一審判決には事実誤認があると安易に判断した誤りです。

 このように、幾つもの事実誤認・誤りがある原判決は破棄されなければ、著しく正義に反します。したがって、私たちは、上告審(最高裁)で5・19高裁判決の破棄を必ず勝ちとらなければなりません。
 このような、一審の無罪判決を控訴審で何の審理もせず、簡単に破棄したり差戻ししたりできるなどという悪例を作ったら、すべての裁判で同様なことが行われるようになり、一審の裁判で無罪判決など出されなくなってしまいます。こんなことを絶対に認めるわけにはいきません。
 その上で、「原判決(高裁判決)の破棄」を上告審で勝ちとっても、具体的には高裁でもう一度審理をし直すことにしかなりません。ですから私たちが、本裁判に完全勝利するためにはもっと積極的に、そもそも検察官の控訴自体理由がなく誤りであるから、当上告審においてこそ「検察官控訴の棄却」を勝ちとらなくてはならないということです。つまり、上告審でこの恥ずべきデッチあげと超長期裁判に終止符を打つためには「原判決(高裁判決)の破棄」と「検察官控訴の棄却判決」を同時に勝ちとる必要があるのです。
 このような課題を、高裁以上に反動の砦である最高裁において勝ちとることは容易なことではありません。とりわけ実体的審理がほとんどなく、書面審理だけで済ませてしまうことが多い最高裁で私たちが完全勝利を闘い取るためには、5・19反動判決を破棄せよ!検察官控訴を棄却せよ!という大運動をもって十重二十重に最高裁を包囲していく以外にありません。
 この秋の、憲法改悪(9条改悪=新憲法制定)攻撃、国民投票法案、教基法改悪、共謀罪新設、防衛省昇格案などの戦争政策・国家総動員体制を狙った攻撃と対決する闘いの中で、この闘いと一体化して闘えば本件デッチあげを粉砕することはまったく可能です。

メモの「オリジナル性認定」の虚構を暴くことがカギ

 具体的には、5・19判決は大きくは、@本件メモ類を根拠もないのにオリジナルなメモと誤認したこと、A本件両事件以前から、被告人3名が「一班」をなしていたと誤認したことB岩手借家開設以前から岩手借家押収物を被告人3名が保管管理していたと誤認したことCさらには、「福嶋さんとの共謀」があたかも存在したかのように誤認したこと、の4つの事実誤認をしています。そしてその根底には、@のメモがオリジナルであると根拠なく決め付けた上で、その決め付けを証明抜きの大前提に置き、それ以後の全ての論旨を展開しているという恣意的・意図的な誤りがあります。
 したがって、上告審において〈原判決のメモの「オリジナル性認定」の虚構〉を暴くことによって原判決こそが〈事実誤認〉をしていることを明らかにすれば、原判決は崩壊するしかないのです。次回はその点について明らかにします。

福嶋さんへの反動判決許せない!
懲役12年、未決算入2500日

戦前の治安判事の末裔(まつえい)がいた!
服部悟裁判長あなたのことだ

 3月3日に行われた、福嶋昌男さんの第一審判決公判において、東京地裁刑事第3部の服部悟裁判長は、検察官の求刑どおり、懲役12年(未決算入2500日)の許すことのできない反動判決を行った。11年をこえる未決勾留という言語道断の人権侵害と闘い抜いた福嶋さんに対して、さらに5年と55日の残刑を科そうとするこの極反動判決を心の底から弾劾する。

 福嶋さんの共犯とされ先行して裁判で無実を主張してきた須賀武敏さん、十亀弘史さん、板垣宏さんの三人は、すでに2004年の3月25日に一審無罪の判決を勝ちとっている。検察側控訴については、今年1月16日の第一回控訴審において、検察官請求の全ての証拠が却下され即日結審の勝利を実現している。3人の無実は、明確に証明されている。
 この事実は、3人の共犯とされた福嶋さんの無実と、検察立証の破綻を最も雄弁に示している。
 しかし、服部悟裁判長は、判決理由のなかで、 検察側の主張を丸写ししたうえに、さらに踏み込んだデッチを行った。検察官の主張とは、迎賓館と米軍横田基地にむけてロケット弾が発射された事件の後に開設された岩手借家から押収された、とするそれ自身証拠となりえないメモ類の勝手な解釈にもとづくものにすぎない。
 当然その主張には、検察官自らが認めたように、いつ、どこで、だれと、どのように、どうしたのかという犯罪の具体的な立証が存在しない。福嶋さんが犯人である、とういう前提に立ってストーリーをデッチあげ、都合良くメモ類の解釈を当てはめていくものでしかない。

 服部悟裁判長は、これらの検察側のデッチあげストーリーと、類推の固まりでしかないメモ類の解釈をすべて認め、弁護側の反論は一切無視した。<ロケット弾の飛距離を伸ばすための試行錯誤が行われたに違いない。><それらの成果は本事件のために用いられたに違いない。>こうした推測を現実と見なし、その上にメモ類の筆者が福嶋さんであるとする小嶋・馬路両筆跡鑑定を全面的に肯定し、福嶋さんが事件の共謀共同正犯であると決めつけた。この筆跡鑑定自体が、あまりの疑問点の多さから3年をこえる弁護側尋問をやらざるを得なかったインチキきわまりないものだったにもかかわらずである。

 この判決は、須賀さんら3人の無罪判決に対する卑劣な挑戦でもある。一審無罪判決が明快に示した、メモ類の解釈による類推はどこまで積み上げても立証とならない、との当然の結論をひっくり返そうとするものだ。
  服部悟裁判長は、量刑の理由として米軍が基地内に蓄えた弾薬の近くにロケット弾が落下したことを口を極めてののしった。迎賓館をめざして発射されたロケット弾が東宮御所の近くに落下したことを「テロ行為」と弾劾した。
 服部悟裁判長にとって重要なことは、福嶋さんとこの事件の関連の有無を判事としての公正な視点で検証することではなく、「テロ行為」を行った組織とその構成員と決めつけた者に、誰でもいいから見せしめの重罰を科すこと以外ではなかった。私たちは、戦前の治安判事の末裔として服部悟裁判長が存在し、「テロ」対策の先駆者の使命感をもって福嶋さんに相対してきたことを知った。
 「テロ対策」の口実をもってすれば、いかなる人権も停止され、被告の必死の裁判闘争も無視され、判決もなしに12年の人生を奪った未決勾留のことすら忘れ去り、犯罪の証明にかわってデッチあげによって重罰を科すことが当然だとされるのか。
 私たちは、絶対にこの判決を認めない。必ずひっくり返して見せる。治安判事として、司法の独立を捨て去った服部悟裁判長の責任を追及する。完全無罪をかちとる会は、4人の被告とともに、文字通り完全な無罪を実現するまで闘う。

 

活動・交流のお知らせ

■(交流誌)『無罪!』No.9より06年被告団のあいさつと決意いまどきの大人は、シッカリセニャー 西山勲新春のあいさつ 桜井善作2・18集会へ大結集を 板垣宏労働運動と弾圧〔第三回〕斉藤弘平横浜事件再審公判を傍聴して 須賀武敏共謀罪と刑法 足立昌勝

(交流誌)『無罪!』No.8より 検察官の証拠調請求を弾劾する 板垣宏 1・16控訴審初公判に総結集しよう 須賀武敏 韓国・民主労総の労働者大会に参加して 十亀トシ子 労働運動と弾圧〔第二回〕 斉藤弘平 新聞に対して(4) 十亀弘史 最近読んだ本 ー私の昨今ー 福嶋昌男

(交流誌)『無罪!』No.7より 東京造形大で教壇に立つ 労働運動と弾圧(第1回) 控訴審の期日決まる 他

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行動スケジュール

2009年

有楽町街宣

6月27日(土)(予定)

13時〜

有楽町数寄屋橋公園前

例会

6月26日(火) 18:30〜 

場所は会までお問い合わせください)

 

 

 

 

「迎賓館・横田裁判」とはどんな事件?、裁判?でしょうか。10万人保釈署名運動 のホームページを参照してください

迎賓館・横田事件とは?

被告のプロフィール

一審無罪判決(抜粋)2005年3月25日

裁判の軌跡(1986-2004)

 

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