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テレビ遊歩道 1「うれしい釣り番組」

 「趣味は身を助く」とでも言うのだろうか。芸能人は、テレビで好きなことをするだけでギャラをいただけることがある。ゴルフ番組などが良い例だが、私の場合はもっぱら釣りで恩恵を受けている。
 「The Fishing」という番組に初めてゲスト出演したときのことだ。東京湾のアジ釣りがテーマなのに、サバばっかり。ついにアジの顔を見ることなく終わってしまった。
 「もうお呼びは掛からないだろうな」とあきらめていたら、「佐々木さんはスジが良い」とその後ちょくちょく声がかかるようになった。
 何がうれしいって、すべての経費は当然テレビ局持ち。名人とされる方々に文字通り手取り足取り、釣りの手ほどきを受け、いかにもうまそうに見えるようになったところで撮影。そして収録後には、ウエアから高価な道具類まですべていただけるのだ。
 いくらスジが良いからといっても毎回「オデコ」(釣果なしの意)ではまずい。ところが芸能人というのは不思議と悪運?が強い。なぜだか、何とか絵になる魚を釣り上げてしまう。
 例えば、近藤真彦君がブラックバスを狙ってアメリカロケに行ったときのこと。キャスティングに失敗してルアーはボートの横にポチャンと落ちてしまった。絡んだ糸をほどいているときになんと
70センチを越える記録的サイズのバスが釣れてしまったという、ウソのような話もある。
 かくいう私も幸運の女神に何度かほほえみかけられた。早春の福島県・田子倉湖にイワナ狙いのロケに行ったときのことだ。
 雪解け水の流れ込みにワカサギが集まってくる。それを食べに来るイワナをルアーで狙い撃ちしようというのだが、2日にわたって挑戦したが、時期が悪く名人も1匹も釣れない。ダムの放水時間も迫り、このままでは番組が成立しないという事態に追い込まれた。
 そのときだ。私のロッドにジワッとアタリが来た。反射的に合わせるとまさに魚の引きが伝わってくる。35センチのイワナだった。続けざまに45センチという番組記録もモノにした。テレビというのは運に頼っている部分が結構多いのだ。

《共同通信から全国数十紙に送られたいる原稿・毎月1回担当》
写真はダイワ提供の雑誌から

Last Update : 2001/10/01 14:24 << back