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ニューヨーク、ニューヨーク!

 その日の夕方、友人の桝田御夫妻と初めての会食。名物の巨大ロブスターやステーキのうまい店に案内してくれた。カジュアルな店で店内はワイワイガヤガヤ。出てきたロブスターの大きさにもだが、食事を楽しむ人たちの、その溢れる様なエネルギーに圧倒された。日本人は子供のときから、食事をするときは静かにとしつけられているせいかあまり騒がないが、アメリカ人は味わうというより、ダイナミックに食べながらおしゃべりを楽しむという感じだ。カジュアルな店はどこでも入り口に立っただけでその雰囲気に圧倒される。
 写真でもわかるようにロブスター1匹を丸ごと開いて焼いたもので、各自好きなだけ取り分けて食べるのだが、ボリューム満点でビールを飲みながらパンをかじったりしていると、結構おなかが膨れてくる。
 柱や壁に有名人の似顔絵が描かれていて、映画スターから大統領まで何百人になるだろうか。私が指差しているのは、おなじみロッキーのシルベスタ・スタローン。たまたま座った席なのだが「ワタシニホンデコノヒトノコエヤッテマース!」というところ。
 アメリカのステーキはデカくて固い、という定評があるが、この店で出たものは柔らかくとても美味しかった。「チョツと栄養の取りすぎだ。明日からたっぷり歩かなければ」と思いつつ、話に花が咲きビールをぐいぐい、ロブスターとステーキに懸命にむしゃぶりついた。おまけに、私がおごるつもりがすっかりご馳走になってしまった。改めて「桝田君ご馳走様でした!」

 翌日は土曜日。今度は彼の車でニューヨーク観光。天気予報は悪かったがわれわれを歓迎するかのように晴れ。マンハッタン島をニュージャージーから眺めたり、北端から南端まで縦断してウォール街へ行ったりと、ウィークエンドのすいた道をあちらこちら案内してくれた。
 サウス・ストリート・シーポートで、マンハッタン・ブリッジを眺めながらシーフードの昼食。古い港町を観光用にアレンジしているのだが、帆船の博物館やシーポートのレストランは沢山の人でにぎわっていた。隣接した市場は平日、ニューヨークの台所として活気を見せるそうだ。
 午後はセントラルパークで馬車を楽しんだ。約20分公園の中を走り40ドル。風情はあるのだが交通渋滞などで反対運動がおきていて、いずれはなくなるかも知れないとのこと。警官の見回りの隙を縫って黒人が路上でパフォーマンスをやっていたが、そのリズム感と運動能力の高さにびっくり。空き缶に1ドル札が結構集まっていた。
 プラザホテルやおもちゃ屋を覗いて、ティファニーをはじめチョウ有名な店が並ぶ5番街へ。買い物を楽しむというより、観光客やおのぼりさんでごった返しという感じ。歩き疲れてホテルで一休み。
 夜は4人で「ライオンキング」へ。今でもなかなか切符が取れないらしいが、それだけ中身も濃かった。イギリスと同じように、ちょっと古めかしい3階席まである縦長の小屋で、舞台も高さはあるが間口は狭い。この設備が独特の転換技術を育てたのだろう、どのミュージカルも装置のアイデアにまず驚く。能や歌舞伎が原点にある日本とは発想が違って、芝居も転換もスピーディーだ。
 動物と同化した役者もうまいが、何よりアフリカン・ブラックが演じる、本物の存在感に圧倒される。踊りも歌も凄いの一言。家族連れも多かったが、子供のころから本物を見て育つのだから、出演者の層も厚いが、観客の目も肥えるわけだ。客席と舞台が1つになって文化を育んでいる。

Last Update : 2002/05/28 16:50 << back