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魔法の絨毯から魔法の杖へ

 今年の初め、音質の改善を図って魔法の絨毯を貼り付けた。ジャズなどを2チャンネルで聴いていると、落ち着いた音でとても良いのだが、映画だと音の広がりが今ひとつ不足しているように感じる。オーディオ雑誌を色々読んでみると、最近は吸音よりも、壁の反響を変化させることで音の癖を取り除く方が、良い結果が出ると書いてあった。そういえばレコーディングスタジオも、以前は吸音材が多用されていたが、近頃は殆ど曲線を生かした木製の壁になっている。もともと木材は反響が心地よいとされていたから、曲線を使うことで反響を整えれば、自然の響きが生かせるわけだ。生の音に人工的なエコーを付加するより、スタジオの自然な反響を生かしたほうが良い音が録れるのだろう。
 我がオーディオルームは壁や天井に変化はつけてあるが平面が多い。もっと凹凸をつけて乱反射させたほうが良さそうだ。そこで実験的に、径の異なる90センチの丸棒を壁面にぶら下げてみた。スピーカーの後ろの壁にもつけた。
「ホームシアターファイル」にも書いたが、結果はこの方が良い。クラシックや映画の前方の音の広がりが自然で大きく感じる。大きな音でも刺激音がなく、決してうるさく感じない。
 コンサートホールはステージの後ろや袖に巨大な反響版が備えられていて、オーケストラやオペラなどの生の音が、大きなホールの隅々まで到達するように設計されている。音が良いことで有名な滋賀県の「琵琶湖ホール」での「懐かしのウェスタンカーニバル」に出演したときの話だが、反響版を開いた状態でも、ステージで歌ってみると音が前方に広がっていくように感じるし、不快な低音の定在波がなかった。
 小さな響きをいかに前方に洩れなく、しかも歪みなく伝えるかが、スピーカーを取り囲んでいる壁に要求される大きな要素だ。スピーカーから出る直接音ばかりでなく、反響音に注意しないと、クオリティーを落とす結果になりかねないことを痛感した。

★混変調歪み?
 音を濁らしていた原因の一つに混変調歪みがある。マルチチャンネルで電気的に減らしていたはずの歪が、スピーカーの設置の不注意から機械的に生じていたのだ。巨大なボックスは4個のアルミ製円錐型インシュレーター(前後の高さを変えて仰角を着けてある)で浮かしているのだが、前方の1個が浮いていたのだ。つまり3個しか効いておらずガタが生じていた。その為にゴムクッションを介していた上のボックスが揺さぶられて、音の濁りを発生していたらしい。
 インシュレーターをがっちりとかまし直し、上のボックスを木片で固定し更に後方の壁との間にも角材を入れて揺れをなくす。機械的な混変調歪みを抑えたら澄んだ音に戻った。
 

Last Update : 2003/09/16 12:42 << back