VANTAGE-HDを購入。ハイビジョン時代到来…
「AVレビュー」誌の取材でパイオニアのDVD-RECORDER DVR-DT95をテストしたのだが、ハイビジョン放送の『ブラザース・グリム』を見てその映像の美しさや凄さに驚いた。さらに『スターウォーズ』E.123を録画したのだが、今までキレイなだけで画に力が無く、DVDで十分と思っていた観念を見事に覆された。今まではDVDをスケールアップしただけのハイビジョン放送を見ていたからだろう。やはりテレシネからやり直したHD放送は画質が全く違う。
やはりこれからはハイビジョン放送やHDやBDの時代になることを素直に認めなくては…と思い、しばらくはHD放送を録画して、ハイビジョンの見方を研究しておくことにした。たまたま近くのヤマダ電機に行くと、パイオニアのデッキにとても詳しい女性店員が熱心にDVR-DT95を勧め、値段も他より安かったので、即購入し持ち帰った。
★思い込みだけでVANTAGE-HDを購入…
いくらハイビジョンがきれいな映像を出すといっても、110インチの画面では3管特有の走査線が見えてしまう。これが消えればさらに素晴らしい映像が楽しめるのではないかと、色々調べているうちに、VANTAGE-HDというイギリス製のスケ−ラーが3管にも高性能を発揮するという記事を見つけた。「MITSUBISHIの7インチ管で、1080i固定入力を720Pにスケールアップしたアナログ接続の画は、3管独特の力があり、固定画素以上の画が出る…」とある。
アメリカのAVショーでも盛んに固定画素プロジェクターのデモに使われているようなので、最新のスケーラーのようだ。値段も結構高いのだがこれから先、多用することを考えれば買い時かもしれないと、思い込みだけでAVACより購入を決めてしまった。
ハイビジョンのコンポーネント入力に問題があり、後で手を加える必要があるそうだが、とりあえず製品が届けられた。
簡単に接続できると思っていたら、ソニーの3管には合わせていないようで、色々と厄介な問題が生じ、機種変更か、返品か…販売担当者を悩ませてしまった。AVACの記事には確かに「3管でも良さそうだが、当社に3管が無く、まだ試してはいない」と書いてある。
色々とやってみた結果、やっと本領を見せ始めてくれた。何しろ輸入してから日が浅く色々な問題に出会う機会が少ないので、本社の方でも対応に分からない部分が多いようだ。
まだこれからやることが多いのだが、経過を書きとめておくことにした。
★VANTAGE-HDとVPH-G70QJの接続
VANTAGEの出力はHDMIと15PINのコンポーネントの二つしかない。バルコか三菱以外のアナログは対象としていないのかもしれない。ホームページで調べたら、15PINー5BNCという変換ケーブルがあった。ブラウン管時代のコンピューター用で、ヤマダ電機でも売られていたので、これを使ってとりあえず今まで使用していたDC3000のRGB入力に接続した。(後日、秋葉原でBNC-BNCオス用のコネクターを買ってきてプロジェクターと直結に変更・また元に戻したけど)
VANTAGEの初期設定は640×480なので全くスルー状態だから簡単に映像が出たのだが、1920×1080にスケールアップすると画面が乱れて画にならない。ハイビジョン(デッキとHDMIで接続)は全く画が出なくなる。画がキッチリ出ないとオンスクリーン・メニューが頼りだから色々調整ができないのだ。スケールアップできないのでは購入した意味が無い。ここでしばしお手上げ状態…。
VANTAGEの日本語の説明書を読み直すと「DVDは480iで出力して当機でアップするときれいな画像が出る」「当機とデッキのHDMI接続では不都合が生じる場合がある」とある。私が取り説をよく読まなかったことが原因だった。デッキのプログレをインターレースに戻し、コンポーネント接続にやりなおす。
(しかし、不都合が生じると書くくらい問題が多いのに、なぜHDMI接続をメインにしているのか良く分からない)
いきなり1920×1080にスケールアップしてみた。DVDは画を出したのだが、画面サイズが大きすぎる。ハイビジョンではまた画が出なくなる。そこでたくさんの組み合わせを順次調べていく。合わないスケールではRGBがバラバラになったり、画面の位置がずれたり、縦横のサイズが変わってしまう。
1366×768(1)でバッチリの画が出た。DVDがまるで走査線が見えなくなってしまう。ノイズ感も全く無い。このスケールがG-70QJに合うようだ。1080Pはやはり安定しない。
★DVR-DT95との相性…
ハイビジョンは放送・録画とも凄い画を出す。もちろん増設ディスクも同等。
DVDデッキは480iに設定する。困った事にハイビジョンや地デジのコマーシャルなどで4:3になった時はセンターに有るが、地上波やCSの4:3画像になるとセンターが右にずれる。
DT-95に原因があるのではなく、VANTAGEの4:3の画像の切り方に問題があるようだ。
★DVDとの相性は…やはり…
DENONのデッキから480iでVANTAGEに入れても簡単には良い画が出ってくれない。
『スターウォーズ』を見ると、DVDの480iに対してスケールアップの速度が追いつかないのか、カット変わりで時々フォーカスが甘くなったり、ジャストフォーカスになるまでタイムラグが生じる。背景がなんと無くボヤーッとした感じで、特にカメラに動きのある、移動やパンの多いシーンでは気になる。もともとこの作品はフォーカスが不安定なのだが、それに振り回されている感じだ。
『ロード・トゥウ・パディション』は暗いシーンが多く、アップの多い静止状態に近い画面は、フォーカスもピタリとあってノッペリ感も少ない。スケーラーの良さが出るから、見る映画によっても違うのかもしれない。
走査線が見えないから、全体としてはハイビジョン放送に近い画像だ。ただしDVD自体の情報が少ない為か、なんとなくノッペリした画像になりやすいし、アップだと顔の化粧が厚く見えたり、背景がつぶれたりする。
エハンサーをグッと弱くして細部のエハンサーを強めにするなど色々と調整したら、少し映画らしくなってはきた。DVDに関しては再検討の余地がありそうだ。
DVDがフルハイビジョンのプロジェクターと相性が良くないと言われる原因は、この辺りにあるのだろうか。
VANTAGEのは入力ごとにスケールアップや設定した数値が一定に保たれるから、ハイビジョンとDVDなどと、入力に合わせて画面の調整を追い込んでいけばよい。しかし、DVDは盤によって画質がまちまちなので厄介だ。
★結局は…
VANTAGEにもエイジングがあるようで、最近は画が落ち着いてきた。DVDを720Pで見ても結構きれいな絵が出ている。画質の良い『バットマン・ビギンズ』をハイビジョン録画とDVDを同時進行させて切り替えながら見た。DVDだけを見ているとすごく綺麗なのだが、ハイビジョンの画は同じ黒でも諧調がはっきり出るから質感がまるで違う。
こういう暗いシーンが多いものは3管+VANTAGEのHD画像が最高!
HDMIのかわりにコンポーネント入力を増やして欲しい。S映像入力も必要ないと思うけどね。
★ハイビジョンの映像は…
1080iをさらに720Pにスケールアップしたハイビジョンは、流石に元の情報量が多いから画像もすごい。走査線は全く見えず、特有のゴースト状の輪郭のラインも見えない。蚊が飛んでいるような画面のノイズ感もないし、立体的なすごくキレイな画が出る。ハイビジョン用に購入したのだから、こちらの画を追い込んで行こうと思っている。
専門誌では1080P…と大騒ぎしているが、よく読むと画質は1080iとあまり変わらないようだ。むしろ1080iの方が良い場合もある…。
VANTAGEの1080Pはやはりスケーラーが追いつかず映像が不安定なようだし、720p(正確には768Pか)が安定して画もきれいなのでこれで十分だと思う。
『Mr.インクレディブル』『トイ・ストーリ』等のアニメは発色も良く、恐ろしいくらい綺麗な画で、素晴らしいの一語に尽きる。
『アイ・ロボット』もまるでビデオ映像のように(フィルムの解像度は2160i位だから当然だが)きめ細かく発色も豊かで、ロボなどメカの透明感が出てDVDで見るより数段上。
『チャーリーとチョコレート工場』は色使いが見事でティム・バートンの狙いが分かった。DVDだと発色が薄く感じられるので、この映画独特のドギツさが希薄。
ハイビジョン放送の映画は駄目だと思っていたが、現在のHD放送は本当に凄い画を見せてくれる。HDかBDがソフトも充実して、デッキやディスクのコストが下がれば、DVDでは全く歯が立たないだろう。そのときまではハードディスク録画で我慢しようと思う。収集したLDを廃棄したり、DVDに棚を占領された愚は繰り返したくないものね。
フルハイビジョンのパネルを使った固定画素プロジェクターの新製品ラッシュなので、AVAC等を覗いてみるのだが、BD画像でも何か気になるところがある。
やはり3管には独特の粘りというか、おおらかさがある。壊れるまでやはりこれでいこうと思う。
★スターチャンネル…
BSスターチャンネルはHD放送が525Pなので、VANTAGEの変換率がおかしくなる。『シンデレラマン』を見たら、センターと両サイドで顔の大きさが変わってしまい、妙な画だった。525p(VINTAGEには入力が480pと出る)の画がまともに見える時もあるがDVDの480p方が良い。WOWOWとおなじように1080iにしてほしい。
結局はCS1の233chとcs2の232chのみの使用になる。こちらは1080iのHD放送だから素晴らしい画像だ。
★3管との相性…
3管プロジェクターはH・Vのシンクロが変化すると、画がずれたりサイズが変わってしまったりと、固定画素に比べて厄介な問題が多い。スケーリングを変えると画がばらばらになるので、なかなか他の設定を実験できない。
以前のスクリーンを自分で取り付けた時、左に寄っていたのに合わせてプロジェクターを設置してしまった。そこでプロジェクターの取り付け金具を吊るしているナットを緩めて、照射のセンターを右にずらした。そして久しくやっていなかった、マグネフォーカスの調整からやり直し、RGBのずれを修正した。小さなHの中のドットを見ながらピント合わせを行うのだが、1080だと走査線が消えてしまうのでVANTAGE-HDの出力を480に落として調整する。見事にドットがRGBともくっきり見えるようになった。
やはり調整したばかりの画像は美しい。アップスケールしたハイビジョン映像は固定画素のようなノッペリ感は無く、モニターテレビのようだ。
★色々やってみて感じること…
2011年問題も含めて、経済政策やメーカーサイドはあまりにも国民やユーザーを軽視していないだろうか。
飛びついて買うほうが悪いのかもしれないが…。僅か2,3年しかたっていないような機器がもう接続できなかったり、DV1-Dなどの接続端子が使えないなど、古いものは捨てるしかない方向に仕向けられているようだ。DENONのDV1-DからDV1-D=HDMI変換ケーブルで入力したが画は出なかった。