鍵は狐が握っていた!
 

稲倉の鍵を口にくわえた伏見稲荷大社のお狐さん

 
奈良のお水取りが終わるまでは春が来ない、と昔の人の言い伝え通り、本格的な春を前にして戻り寒波がきているようですね。気温が高くてまるで四月のような陽気になったかと思えば、油断大敵、またまたストーブのお世話になる。というような寒暖の差の激しい毎日が続いています。

3月7日(日)前半五回の「古事記に親しむ会」を終えた節目に、希望者の皆様とご一緒に京都の伏見稲荷大社のお山めぐりをしてきました。

現世ご利益の蚊帳の外にある「神宝神社」

全国に三万社はあると言われている稲荷社の総本宮・伏見稲荷大社ですが、もしこのお山から赤い鳥居とお塚と呼ばれる個人の奉納したお社や狐の置物を取り払ったら? どのようなお姿になるのだろうかと? 想像を逞しくしてしまうのは私だけでしょうか?

実は秦氏が神奈備山である稲荷山に3柱の稲荷神を勧進する(711年)以前は、この地、深草の氏神様は藤森神社の神様だったとのことです。
今でも伏見稲荷表参道の横には藤尾社としてお祀りされています。・・・が本来は、その場所が藤森神社の旧社地だったということですよ。(現在地は深草鳥居崎町)

また、深草の地は小野小町に焦がれて99日間通いつめ、満願の100日目に凍え死んだ深草の少将の物語でも有名ですが、古代の豪族「物部氏」とも縁が深い土地だそうです。その祖神である「ニギハヤヒの命」を祀る神宝神社が稲荷山中腹の竹林の中にひっそりと佇んでいるのを知る人は少ないようですね。

写真がその伏見の「神宝神社」ですが、ここは赤い鳥居やお狐様とはまったく無縁の場所なのです。もちろん伏見稲荷神社とも関係はありません。その証拠に、この神社では、狛犬代わりの龍があって、拝殿の中には隼人の盾(複製)も奉納されています。

創建年代は不明とされているようですが、消された大王「ニギハヤヒ」の匂いのプンプンする「十種の神宝」のお札やペンダント、龍神祝詞やひふみ祝詞もゲットすることができる物部ファンにとっては得がたい神社なのです。

十数年前、謎のニギハヤヒを追って調べていたころ、偶然この神社を発見して思わずペンダントと龍神祝詞セットを二つも買ってしまいました。( ^)o(^ )

考えてみれば、伏見とは「伏せる水」の意味なので、琵琶湖の水が山科を超えてこの深草の地で湧き出している名水の場所だったのですね。だから、ここの美味しい水で伏見の銘酒が造られてきたのです。水と龍は切っても切れない関係なのですから、神宝神社の狛犬が龍であっても当然かも? 稲荷山に狐が来る前は龍が守っていたのかも?

お山の中腹「四辻の茶屋」は眼下に京都の町を見下ろせる展望所です

ところで、この日は終日傘マークの予報が出ていたので心配したのですが、幸いにも大雨は夜中に降り止んでくれました。

しかし、肌寒くて曇りだったので展望所からの景色はいまいちでしたが、お弁当を持ってきた人は外のベンチで、それ以外の人は茶店で温かいお蕎麦などを食べて一休みしました。

それから、途中の参道でも感じたのですが、近頃は伏見稲荷も海外からの観光客が増えたようで、茶店では英語やハングル文字でのメニューも目に付きました。

それ以外にも、三人から五六人の若い男の子のグループが何組もお山めぐりを楽しんでいたのには少しびっくり? 縁結び関連神社は若い女性で賑わっているようです。彼らは商売繁盛の伏見稲荷にはどのようなご利益を期待してお参りしているのでしょうか? ぜひ質問してみたかったのですが、さすがにちょっと気後れして声を掛け損なってしまいました。

写真は稲荷さまの本当のご祭神「うがのみたま」の神さまをお祀りしている三の峰です。ここでは毎年お米がたくさんできることを感謝して「五穀豊穣」のお礼を言うのが正統なのですね。

さて、三の峰参拝の後、左回りに、二の峰、一の峰と反対回り(通常は右回りだそうです)にお参りして(この方が楽なのですよ( ^)o(^ ))、剣石(イワクラ)をお祀りしている御剱社〜大杉社とお山を一巡りしました。

そうそう、この大杉社には、ご神木の大きな杉の切り株と石がお祭りされているのですが、10年ほど前、その祠の前でお参りをしてふと上を見上げた時、写真のように上にある大きな鏡に自分の姿が写っているのを発見! あっーー、自分の中にいる神様に手を合わせているんだぁ〜〜〜!!!!!  ということがヒラメキました。以来、自分に内在する鏡(御魂)を磨き続けているのですが・・・あっと言う間に曇ってしまうのが、いまだに悩みの種なのでぇ〜す。



うかのみたまの神さまとお使いの狐の掛け軸

この日は、木々の花芽を育てるやさしい春雨がしとしと降る中、昨夜の雨で山道のあちこちに落ちた赤い椿やウグイスの初音を楽しみながら約二時間ほどかけてお山をめぐりました。

でもさすがに私は帰りの長い下り階段で膝を痛めて、やっこらさっこらと皆さんの最後尾を付いて歩くのがやっと! 日ごろの運動不足と、よる年波を感じてしまいました。

そこで、解散前に三つ辻にある鄙びた茶店「三玉亭」で甘酒を飲みながら一休み。

しばし神様談義や最近嵌って毎週通っている「アンティークショップ」の話題に花が咲きました。ところで、この茶店もなかなかレトロで落ち着いた所だったのですが、床の間の掛け軸(写真)を見て感激! この形が本当のご祭神の姿で、狐はうかのみたまの神さまのお使いだということがよく判ると思います。

お狐さんや蛇神さんはお力は強くてご利益信仰の対象にされますが、あくまで中心の神様は古事記に登場する神々や稲の守り神だということを忘れないでくださいね。

すずめ、二体の・ビフォァー・アフター

話は変わりますが、こどもの頃祖母や母に連れられてお正月に伏見稲荷にお参りしたことがありました。

その時、参道ですずめの丸焼きを売っているのが目に入ってびっくりした記憶が忘れられません。以来伏見稲荷とすずめの丸焼きの因果関係が気になっていました。

すずめは大事なお米をついばむ害虫なので、お百姓さんにとってはイノシシやカラスと共に稲の大敵なのですね。その懲らしめの為に伏見稲荷ではすずめの丸焼きを売っているということが判って納得しました。

どんな味がするのでしょうね?

7日を境に強い寒気を伴う低気圧が日本列島上空に張り出し、大荒れの天気となりました。四国や九州にも雪が降り、各地で列車のダイヤが乱れ、空港が閉鎖になって、まさに春の嵐が吹き荒れたようです。この日は、はるばる徳島県や岡山県から参加してくださった方もいましたので、なんとかお天気が持ってくれてありがたいことだったなぁ〜〜と・・・ただただ、感謝です。

これからも不定期に、「古事記に親しむ会」のみなさまと古事記の神々を訪ねて日帰りや一泊であちらこちらにご一緒に出かけたいと思っています。OBの皆様もお友達をお誘い合わせてどんどんご参加くださいね。


もどる