伊勢神宮研修会(内宮・古殿地清掃奉仕) 2005年10月1日〜2日


 
古殿地清掃に向かう「白い服の集団」。
じつは私たちです。
参拝客に好奇の目でじろじろと熱い視線を注がれ、写真を撮られ、
外人に、「あれは何だ」とささやかれながら歩くのは、
ちょっと楽しいかなっ。



内宮・古殿地清掃奉仕と伊勢神宮研修会報告


神戸と大阪の「古事記に親しむ会」の有志の方々総勢11名で第10回伊勢神宮崇敬会研修会に初参加。2日間の伊勢での中身の濃い研修に参加者全員大感激。次回はもっとたくさんの人にもこの感動を味わってもらいたいのでどのような内容だったのかをくわしくレポートすることにしますね。

まず最初に神宮会館に日本各地から集まった参加者全員での開会式でスタート。神宮会館二階の会議室に集まってびっくりしたのはほとんどの人がダークな背広やスーツ姿だったということ。私たちのグループはそれぞれがカラフルな私服だったので、かなり目立ってしまった、というか完全に浮いていたようです。

案内状には正式参拝の時の服装(背広、ネクタイ)と古殿地清掃時の服装(白の作業着と靴)のことしか書かれていなかったので間違いではないのですが……。晴明さんは、いちいち着替えるのがめんどうということでスーツを着ていたおかげで、長髪以外はその場にしっくりとなじんでいました。

開会式は、事務局長の本当に簡単なあいさつと、今後の予定でさらりと終わった。何人もの人が次々となが〜いあいさつをするのだろうなと思っていたのでちょっと拍子抜けというか助かりました。

さっそく一日目は二台のバスに分乗して国崎のアワビ調整所へ出発。



 

伊勢の神さまの大好物は国崎で獲れた「あわび」


志摩の国の最東端「国崎」、太平洋に突き出した岬(鎧崎)に神宮の一番重要な神撰「あわび」の調整所がありました。(写真左上)

この場所は、岩礁が多くて波が荒く、船乗りに大変恐れられているとのことですが、私たちの目に映る鎧崎は、空のブルーと海の水の澄んだ青と白い波と風の吹くとても綺麗で美しいところでした。

ここのあわびや牡蠣は最高級品なのだそうです。少しでも新鮮な状態で調理するため、海女さんたちが海から獲ってすぐ加工できる場所に建てられているのですね。この日は崇敬会の一行のために特別にあわびを剥いて神撰を作る作業の実演がありました。

神さまに捧げるあわびなのでご神事でもあり、白衣を着て正座をしての作業。いままで写真で見たことはありましたが、少し曲がった包丁でまるでりんごの皮をむくようにクルクルとあわびが細長くひも状になってゆきます。(写真右上)

そのあわびを天日に干して乾燥させ薄く延ばすと、おめでたい「あわび熨斗」になるのです。

この時ちょっとしたハプニング。
一人のおじいさんの作業の手が滑ってあわびが途中でちぎれてしまったのです。「あんまり小さいから手が滑ってしまったよ」とちょっと照れかくし。見学のみんなは大笑い。

えっ〜!、このあわびで小さいのですか? 目の前のあわびの大きさは約13〜14センチほど、町のすし屋さんならかなりの値段はするサイズです。神宮にお供えするものは、もっともっと大きい最上級のあわびだそうですよ。

剥いた長さはどのくらいになるのですか?と聞いたら「そうじゃね、大きいものだと切れずにひと尋(ひろ)はあるかねぇ…」
一尋(ひとひろ)というのは人が両手を伸ばした長さの単位です。『古事記』に出てくる長さの単位が伊勢では今も使っていることに感心して妙に納得してしまいました。さすが伊勢の国!

ところで、この日加工されたあわびは神さま用ではなく、今回の研修参加者全員に均等割して夕食に出して下さるとのこと。といっても全員で74名なので一体何センチ食べれるやら? もしかして何ミリかも? と皆で大爆笑。
それでもすごくうれしい(^o^)丿

次は海の博物館へ参ります。



海幸彦の乗った竹の船「間無勝間・(まなしかつま)」


ところで、私たちが今回の研修会に参加を決めた一番の理由は「海の博物館」見学というのが組み込まれていたからです。

というのもここには「海幸・山幸」の神話の中で、海幸彦が塩土翁に作ってもらって竜宮まで乗っていったという竹の船「まなしかつま」の船が展示されているのです。

その船は、「トエントン」という名の竹の船で、ベトナム東海岸ニャートウン地区でイカ釣り漁など今でも使用されています。

水が入らないように、牛の糞と椰子の油を混ぜたものを隙間に詰めてあるそうです。



海の博物館は周囲の景観を配慮して建設されています。日本文化デザイン賞や日本建築学会賞も受賞しているとのこと。外観だけでなく展示内容も思った以上にすばらしいものでした。

残念ながら今回は自由時間が一時間しかなかったので、車を手に入れたら次回はもっとゆっくり、じっくり館内を見学したいと思っています。

なにしろ海に関するあらゆる資料が見やすいうえにとてもわかりやすく展示開設されていて、コンセプトもすばらしいの一言です。

一緒に行った誰もがもう一度見学したいと口を揃えて言っていました。なかでもおすすめは牡蠣の加工場見学。目の前で開けてくれた新鮮な的屋牡蠣を試食させてもらったというラッキーな人もいたようですよ。うらやましいなぁ〜。

私たちは海の祭や珍しい船の祭祀の展示。船魂の実物など、いろんな資料をみるのに夢中でそんな場所があることさえ知りませんでした。



内宮夜間参拝は虫の声と星空と神々に見守られて…


本来の日本の神祭りは夜に行われるのが本式だそうです。そういえば、隠れたアマテラスを誘いだすための「岩戸開き」のお祭りでアメノウズメが舞い踊った時は太陽が無いので真っ暗だったはずなのですよね。

いまでも伊勢では重要なお祭りは暗闇の中で行われています。ずっと昔はどこの神社でも夜間の参拝は自由に出来たそうですが、残念ながら今のご時世なのでほとんどの神社が夜間参拝を禁止しています。

伊勢でも例外にもれず、夜間の参拝は特に厳しく禁止されているのですが、なんとなんと! 今回の研修会では神宮の特別のお取り計らいにより「夜間参拝」をさせていただけたのですよ。

昼間は波が押し寄せるように観光客の絶えない伊勢神宮ですが、この日は海の博物館から帰って神宮会館でアワビ入りの楽しい夕食を済ませてから、7時半に衣服を整えて整列集合。全員無言のまま揃って宇治橋を渡ります。

人気のない参道には玉砂利の音が響いて、森の中からは虫の声だけが大きく小さく聞こえてきます。御手洗場で手水を使う頃には境内は真っ暗闇。誘導してくださる係りの人の持つ提灯の灯りが仄かに足元を照らすだけ。

74名の研修会参加者の少し乱れた不ぞろいな足音が両側の木々の間に吸い込まれるように消えてゆきます。真っ暗な中で黙々と歩いていると、内宮ご正殿の階段下に着くまでの時間がとても長く感じられました。ご正殿の前では全員そろって一礼二拍手。黙祷。一瞬の静寂に虫の声も止まったように感じられました。

行きは行列の後ろのほうを歩いていたのですが、帰り道は私たち二人はなぜか行列の一番先頭に立つことになりました。ロウソクの入った和紙の提灯の灯りに誘導されて、ただ黙々と歩いていると、頭の中が真っ白になり、周りの景色が全て消え、このまま前方の闇の中に歩いていけば2000年前の倭姫や豊鋤入姫に出会えそうな錯覚に囚われました。目を凝らしてみると両側の参道にはたくさんの神人がぬかずいています。荒祭りの宮から誰かが呼んでいるような………

そうそう、それはそれは不思議な感覚。神の気配。清浄なご神気。迫る闇。口ではとても言い表せない。文章にも書けない。ただただそこに居ますおごそかなるもののけの波動。とにかくみなさんぜひぜひ体験してください! 沖縄でも屋久島でも知床でも感じることの出来なかった一種の緊張感を伴ったあの恐れ多い感覚!!!

勉強会に参加してくれている○○さんは、列の両側に白い服を来た人が歩いているのが目の隅に見えたので横を向いたら誰もいなかった、と言っていました。不思議!。



二日目は、御垣内参拝・お神楽奉納・古殿地清掃


二日目。早朝の御垣内参拝と御神楽奉納。伊勢には確かに日本の文化が脈々と息ずいていました。神楽殿で神さまに奉納された巫女舞、人長の舞や雅楽もすばらしいの一言でした。

そしていよいよ白衣に着替えて平成25年の遷宮に新しいご正殿が建てられる西側の古殿地清掃奉仕。こには今は、古い「真の御柱」が残されていて、その上に覆い屋がポツンとあるだけ。

新しいご正殿が建てられると天皇以外は誰も入れない聖地となる場所です。
大変暑い一日で、日陰に入ったり、太陽の直射を受けながらも「真の御柱」の周辺の草やゴミを拾ったりと、一時間があっという間に過ぎました。遷宮に備えて、この聖なる場所をお掃除させて頂いていると思うと、胸がいっぱいになって、自然に頭が下がります。

二日間とも晴天に恵まれ、厳しい残暑の中の作業でしたので全員しっかり汗をかきました。閉会式をかねての直会(昼食)のあと神宮会館のご好意でシャワーを浴びてめでたく解散となりました。


一日目の夕食(刺身のお皿にあわびを発見!)と二日目の直会(昼食)


ただそこに神を感じ、生かされているという感謝の心さえ持つ事ができれば、そこが神の居ます聖地となることを実感し体感した二日間でした。

今回ご一緒した11人の仲間一人一人が日本を再確認し、伊勢を再認識した実り多い研修会だったことと思います。

来年は神戸や大阪の勉強会に来てくださるたくさんのお仲間とご一緒したいと思っています。また、古事記ゆかりの土地を訪ねる旅も計画中です。楽しみにしてくださいね。


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