兵庫県神戸市 長田神社 2005年2月3日
 


長田神社追儺神事(節分祭)(県指定重要無形文化財)

 
長田神社の鬼は神さまのお使い

2月3日、みなさんの家では「豆まき」をしたでしょうか? 私たちは前から行ってみたかった神戸・長田神社の節分祭にようやく行く事ができました。

鬼はどこでも怖がられたり嫌われたりしているけれど、長田神社の「鬼」は人間の災いや厄を祓ってくれる神さまのお使いだそうです。

そのせいでしょうか、舞台上に松明を掲げてさっそうと登場する鬼たちのかっこいいこと! 中にはご覧のようにハンサム? 青鬼もいたりして、ハリウッドからスパイダーマンにかわるヒーローとして引き抜きがくるかもね?
 

本当の節分とは?

奈良時代、(文武天皇の頃)毎年大晦日に「追儺(ついな)・おにやらい、おにおい」と呼ばれて、春を招く行事が宮中で行われていたそうです。

いまでは太陽暦が使われているので、暦と季節がちぐはぐになってしまって何がなんだか判らなくなってしまったのですが、本当の節分行事というのは大晦日に神さまのお使いの鬼たちが人々の厄を払い、新しい年の幸福と無病息災を祈る神事だったようですね。

それに本来「節分」というのは「春夏秋冬」の季節を別ける時期のことなので一年に四回もあるのです。みなさん知っていましたか?

一年に四回の節分のたびに関西で始まった「恵方を向いて太巻き寿司を丸かぶり!」すれば、きっとすし屋連盟の方々が喜ぶかも!。



鬼のついた厄除けの餅花

鬼役(7人)に選ばれた人たちは前日から「鬼宿」や「太刀役宿」にこもって精進潔斎に励み、当日の早朝には須磨の海岸で禊をするそうです。

雪の降る中、海に入って身を清めている映像がテレビで放映されているのを見た覚えがあります。
長田神社の節分はまさに真剣勝負のご神事なんですね。

その鬼さんたちがついた御餅「泰平の餅」が柳の木の枝につけて餅花にして社殿の中に飾られていました。あまり綺麗なので「欲しいなぁ〜」と思っていたら、ちゃんと社務所で授与(300円)されていました。

この餅を焼いて食べると一年は無病息災と言われているそうですよ。


一番太郎鬼の登場
鬼たちには全員名前がついています。「一番太郎鬼」「赤鬼」「青鬼」「姥鬼」「呆助鬼」、一番重要な「餅割鬼」「尻くじり鬼」、の計七人です。

その中でも「餅割鬼」「尻くじり鬼」の鬼役を演じるのはとても名誉とされて、神社の氏子である(旧)長田村の住人しかなれません。

この日の一番太郎鬼はまるでお腹に座布団でも入れているのかな? と思うぐらいすごく体格が良くて鬼にピッタリ! でも、どうやらこのお腹は自前だったようで、鬼役の人は本当に太っていた(100キロを越える巨漢!)のです。

なぜなら、一番太郎鬼が何度も何度も舞台に登場して踊っている間に大汗をかいているのがはっきりわかり、おまけに鬼の面の大きな鼻の穴から吐き出す息が湯気のように立ち昇ってものすごい迫力でした。

舞台の下で見ていた子供たちも、「ほんまの鬼みたいやぁ〜!すごい鼻息やで!」と感心していました。

ところで、舞台上の鬼が熱演している間はその他の鬼は舞台の袖で出番を待っています。

その姿がとてもユーモラスだったので、もっぱらそっちばかりに目が行ってしまいました。

何度も何度も神さまの前で(舞台上)真剣に踊るので夕方には鬼役の人は放心状態になってしまいご覧のように両側から支えてもらわないと立っていられないぐらいなのです。

休んでいるときぐらいは松明を捨ててしまえば腕はらくになるだろうと思うのですが、松明は「神火」なので短くなると次の松明が用意されて、決して離すことができないのでした。

だから、ずっともったまま腕を上げっぱなし。みているこちらの腕がしびれてきそうでした。

午後二時に始まって夜の七時頃まで続くこのご神事の最後に登場し、神前で12個の餅を割る(季節を割って、春を呼び込む?)餅割鬼という鬼の役は、各鬼役をすべて無事に勤めた人しか演じることは許されない大役だそうです。

ということは少なくとも7回目(7年間)以上の奉仕者でないと勤めることが許されないのですね。

長田神社の氏子さんたちはこうして1000年以上も毎年毎年、節分になると総出で「おにおい神事」を守り継いで下さっているのです。その時間の長さを思えば本当に頭のさがる気がしました。


鬼たちの持つ松明の燃え残りを貰って帰って家の玄関に吊るすと「除災招福」となるとも言われています。この日も、松明を授与してもらうための長い長い行列が神社の鳥居の外まで続いていました。

震災で一番ひどい災害にあった長田神社周辺はすっかり再生してもとの活気を取り戻し、社殿も綺麗になって御祭神の事代主神も鬼さんたちも喜んでいることでしょう。

今年は大阪にも寒波が襲来して何年ぶりかに市内でも雪が降るほど寒かったのですが、この日を境に、心なしか季節が緩んでベランダの梅がほころんだような気がします。七匹の鬼さんたちのおかげでしょうね。


もどる