理性のゆらぎ/青山圭秀/1994年7月取材



自らの内面高めてこそ幸福
インドの聖者サイババの奇跡に学ぶ


「理性のゆらぎ」「アガスティアの葉」と立て続けにベストセラーを出版し、一躍時代の脚光を浴びた青山圭秀さんが、物質と精神、理性と科学の関係について深く追求するためにサイババを求めてインドに旅立ったのは三年前のことだった。

サイババはインドのブッタパルティ村に住んでいて、何もないところから品物を物質化したり、病人を癒したりして、人びとから聖者と呼ばれ崇められている。

東大の教養学部を出て、医学と理学の博士号を持つ青山さんは、幼い頃から神話やおとぎ話が大好きで、お化けが怖くて夜一人でトイレにもいけなかったという。

中学からカトリックの学校に入学し、ある先生からヨガの瞑想を学んだことが精神世界と触れ合う大きなきっかけとなった。

大学では医学を学ぶ一方で、インドやチベットに古くから伝わる伝承医学にも大変興味を持った。

そのヴェーダーの科学の教えによると、まず初めに薬草を植える時期は、占星学にみて正しい星回り(惑星の配置のよいとき)を見計らって種を植え付ける。また作業をする人もその薬草と話の出来る人を選んで、収穫の時期にはその薬草に、もう刈り取ってもよいかどうかをたずね、「まだもうちょっと待って下さい」と薬草が言ったときは「もういいです」と言うまで待つ。

薬を一つ取ってみても、当時の西洋医学の立場から見て、一笑に付されるこの東洋医学の考えを青山さんはばかにすることは出来なかった。

西洋の科学はこの神秘的な考えや現象を、本当に否定することが出来るのだろうか。サイババの数々の奇跡を目の前で見、彼の教えや人柄に触れるにつけ、青山さんはヴェーダの科学と西洋の物理学を両立させなければと思うようになった。両者は真理へのアプローチの仕方が違うだけで本質は同じものだという。

「私の奇跡にばかり注目してはいけない。大切なことは自分の内面性を高めることが最も幸福になる道である。あなたがたも皆それぞれが神の化身なのだ」サイババは訪れる人たちにいつもこう語るという。

もどる
一口メモ

青山さんの取材をして記事を書いたのは今から10年ほど前のことだった。当時はまだサイババの名前すら知られていない頃だったが、その後テレビやマスコミがサイババの真贋問題を興味本位に取り上げたりしたので一躍有名になった。サイババの名を日本で初めて広めたのは青山さんだが、長らくアメリカの大学で教鞭を取っていたとのことだ。

10年前に「いい話の新聞」に書いた記事を久々にHPにアップして、読み直してみたが、時代が加速度的に進化しているのを感じた。特にあの頃は精神世界と呼ばれる人々の情報は胡散臭い目で見られたものだったが、いまでは心の内面性が重視され、見えない世界や見えないものの中にこそ真実があるかも知れないと考える人が多くなったように感じる。

青山さんが久々に帰国してこの九月に9冊目の本を出版するという情報が入った。「祈りの言葉」冬幻社。

人間至上主義。利益優先の物質文明がようやく終焉を迎える時期が来たのかも知れない。八百万の神様や生きとし生けるものたちと共生して暮らしてきた日本人の叡智を学びなおす時がついにやってきたのではないだろうか。

最先端の科学と古くからの文明を上手に共存させている私たちの国、日本のお役目がいよいよ大きくなってくることだろう。

一人でも多くの若い人々に日本の良さを再認識してもらいたいし、原点である「古事記」を読んでもらいたいものだ。
2003.9、1 宮崎みどり
COPYRIGHT(C)2003 SEIMEI KOBAYASHI/MIDORI MIYAZAKI.
AII RIGHTS RESERVED.無断転用、転載を禁じます。
青山圭秀(理性のゆらぎ)