/2004年6月 深い知恵と高い文化 アイデンティティー取り戻せ 日本人の魂と誇り 物質文明すでに崩壊 いまの若者たちは日本人としてのアイデンティティを失っているのではないか? という声をあちらこちらで耳にします。しかし、2002年に日韓合同で開催されたサッカーワールドカップ日本戦の盛り上がりを見ても、若い人たちの愛国心は決して失われてはいないと強く感じました。 開会式で若いアイドルタレントが歌った「君が代」に合わせて多くの若者たちが無心で国歌を口ずさむ姿を見て不思議な感動を覚えたものです。彼らの多くは自分たちの国、日本がどんなに深くてすばらしい歴史や神話を持っているかを誰からも教えられていないだけなのです。 富と利潤だけを追求してきた物質文明が崩壊し、銀行や大手企業が次々と整理等合される中で、一体何を信じていいのか人々は不安におびえています。本来日本人は、古代から大自然と共生し、お互いを認め合い和やかに譲り合いながら暮らしていました。日本はそのような精神性の深い智恵と高い文化を持つ民族だったということを若者に知ってもらう時期が来ていると思います。 古事記に伝わる古代人の知恵 原点を見直す第一歩は、まず自国の神話や歴史を学ぶことだと思います。 日本では戦後、占領軍の干渉の下に制定された教育基本法に沿って(軍国主義の復活を防ぐという名目で)教科書から「いなばの白兎」や「やまたのオロチ退治」「海幸彦・山幸彦」などの昔話(古事記のお話)が消されました。こうして意図的に子どもたちに自分たちの国の歴史や神話を伝えなくなって50数年が経ち、戦後生まれの私たちは日本人としてのアイデンティティをすっかり失ってしまいました。 その教育基本法が再び見直され、改正されようとしています。もう一度教育の現場で「正しい意味での愛国心」を子どもたちが身につけ「日本人の魂と誇り」を取り戻すことが先人たちの悲願だったのではないでしょうか。 郷土や国を愛する心 『古事記』は上中下巻の3巻からなる物語です。中下巻の2巻は神武天皇から推古天皇までの物語が収められています。 特に上巻の「神代の巻」には、宇宙の始まりから日本の国の始まり、古代の人々の生活、習慣などがいきいきと描かれています。また、単に物語として面白いだけでなく、祖先たちが長い歴史の中で培ってきた「日本人の知恵」がたくさん記されているのです。 例えばアマテラスという太陽の女神が天の岩戸の中に閉じこもり、世の中が真っ暗になってしまったとき、こまった八百万の神々はアメノウズメという女神に踊りを踊ってもらって岩戸の前で大宴会を開きます。そしてみんなで大笑いをして楽しく笑い転げていると「世の中が暗くなって困っているはずなのに一体外で何が起こっているのだろう?」と不思議に思ったアマテラスがそっと岩戸から顔を出し、再び太陽が復活して世の中が明るくなるのです。 このように暗いときこそ一致団結してプラス思考で楽しく暮らしていれば、すべてが上手く行きますよという先人の智恵が描かれているのです。 その他にも、イザナギ・イザナミのご夫婦の神さまが泥海をかき回して日本の国を生んでいく話。そのイザナギが亡くなった妻を捜して死者の国まで迎えに行く話。大切な釣り針を失ったために龍宮城に行く山幸彦のお話など、『古事記』は世界の神話と比べても決して見劣りのしないすばらしいお話がいっぱいです。 変わった時代の流れ バブルが崩壊したおかげで時代の流れが大きく変わり、目の色を変えて海外ブランドを追い求めていた若者たちが、もう一度足元を見つめ直し、原点に帰って日本のことを勉強したいと思い始めているようです。 「古事記のものがたり」を出版してから約四年半の年月が過ぎましたが、「こんな古事記をずっーと探していた」「判りやすく面白かったので子どもや孫にも読ませたい」といって何冊も買ってくださる温かい読者の方々の応援を得て、現在第六刷目、約一万七千冊も広まることができました。 「神話」を忘れた民族は滅ぶと言われ、どこの国でも祖先の言い伝えや心であるはずの神話を親から子へと語り継いでいます。若輩ながら私たちも、日本の原点を見直す風潮が徐々に高まっているおかげで、「古事記の勉強会」や「神話に親しむ会」を開かせて頂いています。これからも益々勉強に励み、一人でも多くの子どもたちが「日本人の魂と誇り」を取り戻すために『古事記』を伝えて行きたいと思っています。 (宮崎みどり) もどる |
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