畿内最古(一万年前)の縄文祭祀遺跡
丹生川上神社上社跡地(宮の平遺跡)

 
奈良県吉野郡川上村大字迫地区。丹生川上神社上社跡地の3年にわたる調査の結果、数多くの縄文遺構が出土した。中でも人々を驚かせたのは、30センチほどの直立したままの石棒が当時のままの姿で発掘されたことだった。このほかにもやや傾いたままの石棒が2基、磨石、石皿、などの他に環状配石遺構(ストーンサークル)も検出されている。
 
この立石の根元には楕円形の石が3個支えとして置かれ、中の1個は地面にしっかり埋め込まれていた。この立石とストーンサークルの配置から考えると、縄文時代にここで何らかの祭祀がおこなわれていたことは紛れもない事実だろうと言われている。 
 
平成14年4月29日にオープンした川上村の「森と水の源流館」では、この宮ノ平遺跡から出土した立石遺構や縄文人が生活に使っていたと思われるさまざまな石の出土品が展示されている。秋田県大湯のストーンサークルへは一度は行ってみたいと思っていたが、吉野川上村で縄文時代の祭祀遺跡を見ることができるなんて感動だ! 
 
 橿原考古学研究所の発掘調査の結果。近畿地方でも縄文遺跡はいくつか出土しているが、立石を伴う環状配石遺構(ストーンサークル)の発掘は他に例がなく、宮の平遺跡はたいへん貴重で重要な遺跡だと報告されている。やはり神武天皇が天の香久山の「はに土」を採取して、天神地祇を祀ったのは、ここだったに違いない!
 
 館内には発掘当時の宮の平遺跡の復元模型が展示されている。一万年以上も続いた聖地がいよいよこの秋からダムの底になる…。 しかしダムが出来なかったらこれらの遺跡もきっと埋もれたままで世に出なかったに違いない。一万年の眠りから目覚めた縄文人の魂はいまのダムの現状を見てきっとびっくりしたことだろう。
 川上村の人々は、長年住み慣れた土地を手放した代わりに「森と水の源流館」や「やまぶきホール」を建設して宮の平遺跡の紹介や源流の自然の美しさを伝えていこうとしている。そして村はさらに奥地の最上流の広大な天然林を購入した。村の人々はその源流の森を開発から守り、未来の子ども達に手渡したいだけの目的で手に入れたのだという。
 元の丹生川上神社上社の本殿の真下からは古い時代の神社の配石遺構が出土した。この遺構も平安時代の神社建設を知る貴重な資料として、新しい上社本殿の横に復元されている。これからは、この丹生川上神社上社の地から新しい神話が生まれてゆくにちがいない。(3月19日更新・湖底に沈む龍神様も見てくださいね)

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