平成12年秋の入選作
南 秋草子 選
老眼鏡ふたつ夜長を読む夫婦 洋司
明るめの口紅選び菊日和 あきこ
赤い羽根赤いほっぺの小さき胸 洋司
佳作 流灯の行くのみなるに急かれをり みずき
夕日浴ぶ庚申塚や稲筵 竹峰
友の忌に集ひて菊の酒を酌む 暖流
トタン屋根叩く日照雨(そばえ)や野は晴れて 静歩
胡弓の音月を泣かせて風の盆 暖流
酒気おびし女3人十三夜 静歩
渋滞にトンボ止まらすボンネット ふきこ
土蔵には土蔵のにおいチチロ鳴く 静歩
名月を城にまねいて枡の酒 ふきこ
夜半の月これから先は土の道 静歩
秋深し問う人もなくメール読む フォンズ
鎌持ちて農夫見上げる秋の雲 和吉
コスモスの風ふきぬけて無人駅 暖流
両こぶし挙げてゴールの天高し 洋司
野菊手に介護保険の話など 和翁
遠き子に思いを馳せる流れ星 和吉
流れ星職を離れし年数う 静歩
夜の蘭白きを闇に零したり 湖底
再会の叶ふことなし雁わたる あきこ
検診の待合室に秋深む あきこ
雨だれを聞きつ手酌の秋深し 竹峰