平成12年夏の入選作
南 秋草子 選
消し忘るパソコンの音明け易し 洋司
妻という素顔にもどり新茶汲む あきこ
退院の決まらぬ父の夏布団 檸檬
佳作 万緑の真ん中を行く乳母車 みずき
あじさいや変わらぬ妻と共に老い 静歩
大手術成功の報若葉風 洋司
禅寺のローソク揺れる五月闇 和吉
麦の秋今日を限りの定期券 洋城
師の煎れる新茶に正座の背を正す 洋司
今日一日妻なき家の新茶かな 洋城
娘らの肌の眩しき海開き 244
冷や奴妻の言訳ばかり聞く 洋城
性根をば試されてゐる炎暑かな 暖流
墳丘の形のままに草茂る 244
公園の緑陰ごとに咲く話し 洋司
妻呼べば庭で声する梅雨晴れ間 静歩
梅雨の闇赤き灯の点く駐在所 244
羅(うすもの)や尼僧の胸の豊かなり 244
雲の峰少年の日を連れてくる あきこ
姿見の母に似てきしひとえ帯 あきこ
病む友の一字一字の暑中見舞 洋司
宙吹きの一点を視て玉の汗 竹峰
体じゅう汗噴き心素直なり みずき