平成13年4月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
10 土筆折る音はかすかに指で聞く 静水 福助 あきこ 和吉 檸檬 竹峰
静歩 桜桃 おさむ うらさん としお
4 春霞鞄の底の十ペンス 暖流 静水 みずき うらさん 湖底
3 父の忌や靴の中まで雪が降る みずき 竹峰 暖流 湖底
3 横一文字猛る松明二月堂 244 あきこ 久須夜 としお
2 菜の花やこの道の果てに子らが住み 手毬 まぐろ 暖流
2 母の手をしっかり握る新入生 志尾里 和吉 244
2 水平線両手いっぱい春の海 洋司 みずき 244
2 軒しずく饒舌となる春の使者 あきこ 久須夜 桜桃
2 廃校の来る人無くて春爛漫 桜桃 福助 まぐろ
2 駅の名は昔のままや山桜 静歩 手毬 洋司
1 下からも上からも良し山桜 和吉 ふきこ
1 草青む川辺に古き欅かな 竹峰 檸檬
1 坂上る陽射しに脱がむ春コート 京子 洋司
1 永き日に明日抜かるる歯を磨く 静水 静歩
1 ぬくもりの孫抱く幸や花冷える 洋司 ふきこ
1 茶を運ぶ人の白足袋紅椿 ふきこ 桜桃
1 ポケットに土手の匂いし土筆かな 和吉 手毬
得点 兼題 「花」 作者 戴いた人
4 フィアンセといふ娘眩しき初桜 あきこ 静水 みずき 桜桃 手毬
3 堀に延び桜化粧の水鏡 桜桃 檸檬 まぐろ としお
3 山桜道標にして古き寺 京子 あきこ 暖流 ふきこ
2 花疲れ慣れ親しみし膝枕 暖流 竹峰 静歩
2 抜けて来てミラーに惜しむ花トンネル 244 久須夜 洋司
2 腕を組むことの言い訳花冷える 洋司 静水 244
2 モノレール眼下に集う花の宴 辰ちゃん おさむ 湖底
1 一年をここぞと咲かす花の駅 志尾里 和吉
1 うつくしい去年と同じ花なのに 和泉 福助
私の選んだ一句
水平線両手いっぱい春の海 洋司 手の届くところにあるように見える水平線。春の海はゆったりと大きい。何もかもが今から始まるような明るい期待に胸が膨らむ。(みずき)
作者の目には、春の海と空を隔てるただ1本の水平線の他は何の景色も写っていない。“両手いっぱい”は大きさはもとより春の暖かさも感じてきます。こんな所に立って心をスッカラカンにしてみたい。(244)
春霞鞄の底の十ペンス 暖流 旅の疲れた頃、鞄を整理をしていたら、十枚ものこっていた。旅の思いにたどっている作者がみえてきます。10枚が特にいい。旅心を誘ういい句だとおもいます。 現代感覚の効いた技法は素晴らしいです。春の休日の物語的ばめんでした。(静水)
準日本風の「春霞」と英国の通貨単位「ペンス」の組み合わせの面白さとともに作者が男性である事を願いたい、しかも寡黙な男の鞄の底に財布から零れたのだろうか。主役を10ペンスに譲った事でで、作者のプロフィールがむしろ際立ってきたように思います。(湖底)
軒しずく饒舌となる春の使者 あきこ 一般的に春を詠む句としては「小鳥の囀り」が良く使われるのが多いのですが、「軒しずく」を使用された点に作者の視点、斬新さ、意外性の面白さがあって、面目躍如と思いました。(久須夜)
廃校の来る人無くて春爛漫 桜桃 各地の学校には必ずと云える程桜が植えてあり、入学と桜は日本の代名的な風景。廃校となり校舎は無人でも、毎年咲く桜は美しい。春爛漫と表現したが、本心は悲しいのか。(福助)
一年をここぞと咲かす花の駅 志尾里 「一年をここぞと」と、言う言葉の重みが好きになりました。古びた昔のままの駅かもしれないが、歴史を物語る如し桜の木、厳しい風雪にも耐え咲かせる存在感は貴重である。(和吉)
堀に延び桜化粧の水鏡 桜桃 富士山五湖の一つに写る富士山と同様な感じで・・おそらく、広々とした堀に白壁を越えて張出した、桜の枝に豪華に桜が咲き、ふと水面をながめると風もなく堀にみちた水が、美しいその姿を写しだしている情景が・・・自然に浮びました。(まぐろ)
茶を運ぶ人の白足袋紅椿 ふきこ 紅椿の赤と白足袋がとてもキレイに写りました。お休み所の毛氈に腰掛けていたら お茶を運んできてくれた人の白足袋のそばに赤い椿の花が1つ・2つ情景が浮かびます。(桜桃)
菜の花やこの道の果てに子らが住み 手毬 いつも子供たちのことを思う、母親の切ない心情が、菜の花のやさしい黄色のように、胸に染みます。親子はどんなに遠く離れようとも、どんなに長く逢わずにいようとも、お互いを思うこころは弱まりませんね。(暖流)
土筆折る音はかすかに指で聞く 静水 土筆はよわよわしいが つむ時はなぜか 音が聞こえるようである。(おさむ)

土筆折る音はかすかに指で聞く土筆を折る音までも命の息吹として感じる作者、細やかですね。土筆の穂をご飯に炊き込んで食したことが有ります。余談でした。(檸檬)
フィアンセといふ娘眩しき初桜 あきこ 初桜という季語と、フィアンセの娘さんの初々しさが重なって娘さんの横顔が見えてくるような句です。目を細めて、彼女を見つめる視線が羨ましいような(笑)。(手毬)
横一文字猛る松明二月堂 244 生きとし、生けるものすべてのーー、自然界の安穏を願う奈良の修ニ会。 横一文字ーーー、この句は内陣で繰り広げられる狂奔する「達陀」の前触れを期待!我々の伝統的な魂を揺さぶる不可思議な情景を、七、七、五の文字で、巧みに描いておられます。お見事です!(としお)