平成13年秋の入選作
南 秋草子 選
異国語も混じる埠頭の天高し 夕花
国道行くおのが速度のコンバイン 244
過不足はあらじ夜長を妻とゐて 暖流
秀逸 もてなしもホットコーヒー秋に入る 静歩
プール出る濡れし水着の重さ持ち 244
眼を閉じて月を見ている無月かな 暖流
秋高し白壁の罅天を指す 洋城
風遊ぶ里の廃線赤とんぼ 手毬
朝寒し挨拶まだの老夫婦 まさき
山もみじ古里まではあと一里 洋司
虫の音の絶えしを言はず癌病棟 暖流
幸せを夫と語りし星月夜 洋司
朝寒やおはようと言う人もなし 244
佳作 美しき指がたくみに梨をむく 洋城
透とほる空の軽さや秋隣 竹峰
宿題に追われる孫や秋隣り 静歩
虫の声一人じめするしまい風呂 静歩
看護婦の去りて秋愁はじまりぬ 洋司
子のごとく育みし菊咲き初めし 和泉
天高く鵙の叫びの響きおり 京子
秋空へ子供の国のアドバルン 洋司
瑞巌寺老杉木立天高し 静歩
今ここに佇つは北京の秋高し 和泉
良き知らせメールで送る菊日和 静歩
もみじ晴れ友と語らう二月堂 志尾里
雁がねや一羽はぐれて月に鳴き なぎさ
近道と信じ苅田の中をゆく 洋城
銀杏散るひとりぼっちのキャッチボール 暖流
ダム湖まで一気に染めるブナ紅葉 夕花
日だまりや紅葉の下の六地蔵 まさき
夕霧や廃船ねむる葦の原 なぎさ
無骨なる手の自転車屋柿熟るる 手毬
朝寒し胸の奥から咳一つ 手毬
朝寒の公園鹿を走らしむ 洋城
柿吊るす父の背なかの遠くなり まさき