平成13年夏の入選作
南 秋草子 選
帰省子の髭の青さに戸惑える 洋司
帰省子にわずか二日の母となる 夕花
向日葵や少女の背丈また伸びぬ 暖流
秀逸 若き日の母のアルバム黴拭ふ 京子
嬰児の一人占めする夏座敷 洋司
父の日や父で途絶へし侠気の血 暖流
細かりし頃の水着を捨てきれず 洋司
大いなる夕焼けに小さき祈りかな 暖流
佳作 桜咲く夕べを焚いて蹄鉄師 みずき
六月の水豊かなる筑後川 暖流
信玄のかくし湯という茂りかな 京子
鉄舟の大書かすかに黴かほる 洋司
単線に一駅ふえて夏祭り 手毬
客人に新茶ふるまいなごみけり 京子
夕立や足止められし駅の客 静歩
見合わせる顔に泥跳ね溝浚え 和吉
幾戦火くぐりて黴の香の古刹 洋司
旅人は北へと向かふ夏帽子 あきこ
親と子の夫婦二組冷や奴 洋司
黒揚羽ふと現はれてふと消ゆる あきこ
紫陽花に色を残して雨あがる 夕花
緑陰の一つの影を連れて出づ 静水
夕虹の消えて厨に戻りけり 京子
虹の橋渡りて君は戻り来ず あきこ
雲の峰呑んでなお碧い猪苗代湖 和泉
金魚らも日陰に入る炎暑かな 静歩
朝涼や散歩の先に鳥の声 京子
みちのくの火山湖の岸に夏アザミ 和泉
踊りの輪小さき手振りの後れがち 京子
古水着海のかおりをなつかしむ 暖流
水着だけカバンにつめてプールの日 静歩
ずっしりと水着を絞る金盥 竹峰
母と娘の水着ならべて干しにけり 洋城