平成14年8月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
5 空蝉のいのち静かに幹掴む 陽炎 可不可人 おさむ 244 和泉 久須夜
4 炎天を来て托鉢の鐘を振る 暖流 ポテト 手毬 弓子 まさき
4 夫もまた吾の団扇の風の中 洋司 ポテト 夕花 弓子 洋子
3 梅干すやひとつひとつに指のあと まさき あきこ 果林 和泉
3 悲話多き隠岐の島々夕べ凪ぐ 久須夜 ハシケン 陽炎 洋司
3 母に子にそれぞれの道夕焼雲 あきこ ハシケン 暖流 果林
3 百日紅娘は父に嘘をつき まさき コノハナ 暖流 久須夜
2 もぎたての茄子艶々と子の帰る 果林 コノハナ 手毬
2 滝つぼの水もみあうや梅雨あがる 静歩 244 洋司
2 炎天が寡黙にさせる昼さがり 洋子 あきこ 静歩
2 空蝉のふたつ並ぶを見つけたり 和泉 可不可人 陽炎
1 端居する父のいた日の反抗期 夕花 まさき
1 週末のネクタイ海に泳ぎ着く 果林 夕花
1 植木鉢1つ倒して嵐過ぐ 244 洋子
1 二人して今日も夕餉の冷や奴 ポテト 静歩
得点 兼題 「汗」 作者 戴いた人
3 汗の顔腹の中まで良き隣人 244 おさむ あきこ 洋子
3 缶ひらふ少年明日の汗光る 洋司 ハシケン ポテト 果林
3 汗覚悟斎場までの道遠く 静歩 コノハナ 可不可人 暖流
2 汗かきの家系まさしく父子かな 果林 陽炎 洋司
2 しゃくり上げ汗も拭わず負け投手 夕花 和泉 久須夜
1 撥を拭ひその手拭で汗拭ふ 暖流 夕花
1 初孫の二重あごから汗ぽとり ハシケン 静歩
1 汗かきの子等の集まる水たまり ポテト まさき
1 横笛に執心の子の汗流る 手毬 弓子
1 新米の運転固く汗握る 志尾里 おさむ
1 重き荷を降ろして強力汗ぬぐう まさき 244
1 日ざし受け人みな無口汗の街 陽炎 手毬
私の選んだ一句
空蝉のいのち静かに幹掴む 陽炎 空蝉の句、いずれにも感動しました。このような句をつくれる方に会って、教えを乞いたく思います(可不可人)。
汗の顔腹の中まで良き隣人 244 腹の中まで よき人であると わかる 隣人を持つ 今の時代には 稀有なこと? お互いに大事にしよう(おさむ)。
梅干すやひとつひとつに指のあと まさき 梅を干すときは ひとつひとつざるにならべ、干しては裏返してまた干し三日三晩。やわらかな梅のひとつひとつの指のあとを、みのがさずによく詠んでおられます(あきこ)。 

子供の頃 夏休み中は毎日のように海水浴をしていました。浜では ヨシズの上に土用干しの梅干が行儀良く並べてあって時には失敬したものです。今思うとその一つ一つに指の跡の凹みがあった。夏の日の酸っぱい、しょっぱい思い出です(和泉)。
百日紅娘は父に嘘をつき まさき 僕にも20才の娘がいます。ですから、この句の持つ可笑しみと温かみがよく解ります。父と娘の日常の光景が目に見えるようです。季語の百日紅が、その情景にぴったりと納まっています。ほのぼのとした秀句だと思います(暖流)。

娘の嘘を見抜きながら、知らん顔する父親の愛情が感じらる(久須夜)。
週末のネクタイ海に泳ぎ着く 果林 サラリーマン川柳のようで面白い句です。一週間、汗水たらして働いて、ようやく週末の休み。仕事の海をネクタイして泳いで、溺れそうになって。。ご苦労様って声をかけてあげたくなる句です(夕花)。
もぎたての茄子艶々と子の帰る 果林 茄子紺の色が目の前に浮かび上がるような句です。収穫の喜びと、子が帰省する喜び。それが一句にぎゅっと詰まったようで、いい句ですね(手毬)。
横笛に執心の子の汗流る 手毬 夏祭りのお稽古でしょうか。したたる大粒の汗に、幼な子の一途な瞳の輝きまで想われて、清冽な印象です。たまたま「阿波踊り」の中継を見ていましたが、祭囃子の朱塗りの横笛が、縦横に整列して練り歩く「連」がありました。一瞬のその静謐な映像と、本句の端正な姿勢が、私の中で心地良く重なりました(弓子)。
缶ひらふ少年明日の汗光る 洋司 明日の汗、という表現に惹かれました。缶を拾う少年はとんと見かけないけれど、明日があるんですものね(果林)。
悲話多き隠岐の島々夕べ凪ぐ 久須夜 島にはそれぞれ語り継がれる悲話があるようです。特に隠岐は後鳥羽院の流刑の地。院の無念、憤怒という背景を色濃くもつ島で、数百年後の今、おだやかな夕景の中にいる作者。人事を越えた悠久の時の流れを感じさせます(陽炎)。