平成15年1月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
球根の動く気配や冬日向 陽炎 みずき 手毬 弓子 久須夜 洋子
煮凝りや言葉少なき老夫婦 244 竹峰 パンの耳 洋城
雪激し不意に聞こえしプロポーズ 手毬 みずき あきこ すずらん
元旦のくもりなき鏡紅を牽く 和泉 まさき 可不可人 244
道草の雪玉ふたつ通学路 すずらん あきこ 弓子 洋子
さくさくとまたさくさくと冬包丁 洋城 和泉 竹峰 陽炎
元日や過去と未来のひと休止 洋司 可不可人 ポテト
わだかまり消えて長湯の冬至かな まさき 和泉 パンの耳
病む心妻に隠して障子貼る 洋城 すずらん 久須夜
豊作の藁の青さの注連をなう 244 暖流 陽炎
園児バス見送るママの着膨れて すずらん 静歩 洋司
一族の黒装束や冬の雨 静歩 まさき 洋司
観るだけの七草を売る花屋かな 静歩 福助
息子(こ)と嫁が素手にて払う雪塔婆 静歩
転職の数ごと賀状の数増えて 洋司 おさむ
紅をさす緩きむなもと柚湯の香 竹峰 暖流
年賀状手書きの言葉ひろい読む 洋子 ポテト
子に破魔矢抱かせて高く肩車 暖流 手毬
小舎の中老犬身震ひ初氷 久須夜 おさむ
訪ねたる地蔵の裾の注連飾り まさき 福助
すこし濃き茶で初春を祝いけり ポテト 洋城
枯野きて手に暖かき缶コーヒ 244
得点 兼題 「雑煮」 作者 戴いた人
初孫の名も書き祝う雑煮箸 可不可人 和泉 手毬 陽炎
雑煮煮る妻の欠伸のやはらかく 暖流 みずき 竹峰 あきこ
母の味受け継ぐ義姉の雑煮喰ふ 洋司 すずらん パンの耳
神も良し仏も良しと雑煮食う みずき 福助 弓子
初孫の分も揃えし雑煮椀 すずらん ポテト 洋城
三世帯いつしか雑煮嫁の味 静歩 244 洋司
華やかに雑煮祝うや京野菜 和泉 暖流
はなれ住む子等がそろいて雑煮椀 ポテト 静歩
我が作る菜がほぼ占めし雑煮かな 244 洋子
雑煮食うお国訛りの心地よく 手毬 まさき
ふとよぎる父母と囲みし雑煮膳 陽炎 おさむ
故郷の懐かし雑煮母想う 志尾里 久須夜
私の選んだ一句
雑煮煮る妻の欠伸のやはらかく 暖流 雑煮と言う兼題は案外難しいですね。それを無理なくいい雰囲気の俳句を物にされました。やわらかくが好もしいです(みずき)。
病む心妻に隠して障子貼る 洋城 おそらく他人には理解出来ないであろうところの「病む心」を作者は胸に抱いて生活をしている。そして、それを妻を愛するが故にか、苦しめないためにかわからないが「妻に隠して」いるのだ。彼の「障子貼る」行動は、寒さ厳しい季節に立ち向かう覚悟の表れであろうか。それとも不安な暗い闇から明るい希望へと一新する決意なのか。病める現代を生きる私達の心を歌った秀句と思う(可不可人)。
ふとよぎる父母と囲みし雑煮膳 陽炎 今は亡き父母、兄弟が未明に起こされて、祝膳を囲んだ事が思い出させる(おさむ)。
さくさくとまたさくさくと冬包丁 洋城 鍋物の野菜でしょうか。白菜,大根など少し大ぶりに切る菜切り包丁の音が聞こえてきます(和泉)

いいですねえ、こういう俳句大好きです。雪の下から掘出してきたばっかりのパリパリッとした野菜そんな清冽な印象を受けました(竹峰)。
子に破魔矢抱かせて高く肩車 暖流 若いパパでしょうか? 小さな子供さんの姿も、逞しい父親の姿も素直に彷彿とさせてくれる句です。破魔矢を上手に小道具に使い、上手い写生句だと思いました(手毬)。
はなれ住む子等がそろいて雑煮椀 ポテト 離れて住む子供たちと親たち、現代の正月風景であろう(静歩)。
紅をさす緩きもなむと柚子の香 竹峰 艶麗な情緒の漂う情景に、浮世絵の世界を思い浮かべました。優美なエロシズムが溜まりません。この句のような女性が、実生活のどこかに現れないものでしょうか(暖流)。
道草の雪玉ふたつ通学路 すずらん 登校時の喧騒のあとでしょうか、下校時の道草でしょうか。一面の銀世界と、いっときの子供達の闊達な動きが、時を隔てて幻のように重なる、不思議な写生画。「雪玉ふたつ」がきいていますね(弓子)。
煮凝りや言葉少なき老夫婦 244 老夫婦の日常が静かに描かれていて、此の頃は珍しいしかし、昔者には懐かしい食物が登場しているのがよかったと思いました(パンの耳)。
球根の動く気配や冬日向 陽炎 球根の動く気配は、見える筈が無いのだが・・。小春日和が、そう思わせたのであろう。動き、変化を待ち望む作句者の気持ちが、滲み出ていて同感し得る(久須夜)。