平成15年2月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
5 親に似し妻の猫背や冬日向 洋城 ポテト 竹峰 静歩 まさき 洋司
5 癌細胞砕けよと飲む寒の水 洋司 和泉 パンの耳 静歩 弓子
4 悴みし手に鉛筆の硬さかな 手毬 244 あきこ 夕花 洋城
3 つらら落ち微かに馬の嘶けり 手毬 陽炎 みずき 洋子
3 見返りの仏いたまふ京や春 あきこ 福助 ポテト 弓子
3 少年の居場所ふらここ早く重く みずき 陽炎 手毬 パンの耳
2 天空を掃く竹しなる雪もよう まさき 久須夜
2 切り時の昨日今日明日ラ・フランス パンの耳 可不可人 みずき
2 叶ふ夢叶はぬ夢や寒昴 あきこ 果林 手毬
2 一県の水貯えて山眠る 洋司 可不可人 和泉
2 旅終へて外すつめたきイヤリング 陽炎 244 洋司
2 水仙やどこかに波の音秘めて 陽炎 果林 夕花
1 湯に透けるあなうら白く春の月 パンの耳 暖流
1 軽装の足かろやかに四温晴れ 洋子 すずらん
1 五穀米一品添へて春を待つ 果林 洋子
1 氷爆に蒼張りつきて静まりぬ 夕花 久須夜
1 はいどうぞちいさき手にもお年玉 志尾里 おさむ
1 雪解光柄杓にうくる沢の水 竹峰 暖流
1 駆ける子の風より軽し早春賦 夕花 竹峰
1 万葉を訪ねし先になごり雪 志尾里 すずらん
1 除雪夫の湯気たちのぼり太き腕 すずらん
1 昼過ぎて雪の声する地蔵堂 静歩 福助
1 鎌形の月を昇らせ雪祭り 和泉 あきこ
1 ひとりっ子つま先で突く初氷 まさき おさむ
得点 兼題 「山眠る」 作者 戴いた人
5 山眠る爺は時計の捩子を巻く 暖流 陽炎 福助 244 手毬 久須夜
4 いのちあるもの抱きつつ山眠る 陽炎 ポテト すずらん 暖流 洋城
4 杣が炊く煙一筋山眠る 244 果林 竹峰 夕花 まさき
3 多武峯(とうのみね)万葉人と山眠る 志尾里 みずき あきこ 弓子
2 地の温みふところに山眠りけり あきこ 静歩 洋子
2 山眠るちちはは遠く離れゐて 果林 可不可人 洋司
1 交戦も和平も呑んで山眠る 和泉 おさむ
1 緋の衾かきくけこんもり冬の山 竹峰 パンの耳
1 夕焼けを支へ切れずに山眠る 手毬
私の選んだ一句
切り時の昨日今日明日ラ・フランス パンの耳 ラ・フランスという果物は、一個一個の表情に個性があって面白く、背景を黒っぽくして、横一列に5個並べ、静物画風に撮影してみました。作者はナイフを持って、悩んでおりますね(可不可人)。

ラ・フランスと昨日今日明日を意味付けしなくても洒落た俳句だと思います。上五の切り時の・・・が、説明的でちょっと惜しいなと思いました(みずき)。
山眠る爺は時計の捩子を巻く 暖流 大きな古時計の歌を思い出すとともに、昔は時計のねじをギコギコ毎日撒いていたなと懐かしく思い出しました。ねじを巻くときの感触と音までが蘇り、山深い寒い家で独りねじを巻く老人の姿が浮かびました(手毬)。

捩子巻き時計こそ「あの古時計」。でも、今も現役の掛け時計と、達者な我が家のお爺さま(久須夜)。
癌細胞砕けよと飲む寒の水 洋司 癌の宣告を受けられたのでしょうか。気力で癌に打ち勝ってください(和泉)。

俳句としては余情に乏しいとは思いますが、この気迫の強さに感じ入ります(パンの耳)。

手が切れるような寒の水は、その清らかさで病いを退け、健やかな体を造ると言い伝えられています。癌細胞も寒の水も代替のきかない、ぎりぎりのところで呼応し、その気迫と潔さに胸打たれました(弓子)。
昼過ぎて雪の声する地蔵堂 静歩 雪の声とは、どの様な声なのでしょうか・・・と、興味を持ちました。人間の身代わりになってくれると言うお地蔵様、その割には外に置かれて粗末に扱われるお地蔵さん。大切にしている村外れの小さな祠が雪に半分埋もれている風景を連想させられる(福助)。
見返りの仏いたまふ京や春 あきこ 見返りの仏とは、お墓の事、羅漢様、仏像??、日本人の優しさが・・・(福助)。
夕焼けを支へ切れずに山眠る 手毬 壮大な風景を連想させていただきました(福助)。
叶ふ夢叶はぬ夢や寒昴 あきこ 叶う夢も叶わぬ夢もみないとおしい。寒昴を仰いでいる作者の諦観、いや達観かな(果林)。
湯に透けるあなうら白く春の月 パンの耳 この湯は露天湯でしょう。春の月に金色にきらめいている湯。ゆったりと浸っている足裏の白さが透けていて。うつくしい情景が見えます。きっと裸体も輝くように白く、月光に染まっていることでしょう(暖流)。
水仙やどこかに波の音秘めて 陽炎 冬のさなかに越前海岸に野生の水仙を見に行ったことを思い出しました。野生なので好きなだけ摘んで、帰りの電車の中が水仙の香りでいっぱいでした。 海からの強風でもしっかりと咲く水仙の強さを感じる好きな句です(夕花)。
交戦も和平も呑んで山眠る 和泉 戦争 和平 学習能力の無い人間の愚かな戦い 関係なく春は来る ありがたい事である(おさむ)。