平成15年3月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
5 春光へ回転扉押して出る 夕花 果林 静歩 すずらん 洋城 244
5 水温む男に似合ふ笑ひ皺 パンの耳 みずき 果林 手毬 竹峰 ポテト
4 恋猫の舌の届かぬ傷みかな 暖流 あきこ パンの耳 ポテト まさき
3 雛の前いくつの春の過ぎ行ける 陽炎 すずらん 夕花 久須夜
2 公魚の穴から季節うごきゆく 久須夜 まさき 洋城
2 拍手受け老いの完走息白し 洋司 おさむ 久須夜
2 しゃぼん玉つかず離れず子と暮らす 夕花 おさむ みずき
1 約束のタイムカプセル斑雪 竹峰 あきこ
1 飼い犬に話しかけても今夜の冷え 244 洋子
1 川波の煌めきて今朝寒明けぬ 洋子 可不可人
1 囀やとろり溶けそなオムライス パンの耳 手毬
1 立春のミルクの泡ののの字かな 果林
1 お日様の後追いながら日向ぼこ 静歩 洋子
1 春あらし退院の婿迎えゐる 洋司
1 付箋貼る辞書の重さや多喜二の忌 手毬 夕花
1 古刹なる梅支える杭苔むして 和泉
1 春の夜の三角定規尖り出す 果林 パンの耳
1 春陰や棺に最後の釘を打つ 静歩 244
1 露天湯の湯気に溶けたる春の雪 洋子
1 幼子とつないだ手にも春感ず 志尾里 洋司
1 雛には雛の愁いありにけり あきこ 可不可人
1 透明の傘を透かして春の街 暖流 竹峰
得点 兼題 「余寒」 作者 戴いた人
2 人住まぬ二階に音のして余寒 洋司 みずき 244
2 春寒に花にも一重藁を掛け 志尾里 久須夜 まさき
2 半裸なる主に祷りゐる余寒かな 暖流 夕花
2 老眼鏡汚れ気になる余寒かな 244 ポテト 洋城
2 硝子窓今朝の余寒を拭ひけり あきこ 手毬 パンの耳
2 声低き妻の電話や余寒かな 静歩 洋司 洋子
1 故郷の余寒の海の見ゆる駅 手毬 可不可人
1 キャンプ地の松井うらやむ余寒かな 洋子 静歩
1 待ち人の肩ちぢめ来る余寒かな 洋城 竹峰
1 見送らぬ手を振らぬ父余寒なほ 果林 おさむ
1 瑞泉寺お蝋のしたたり余寒かな 和泉 あきこ
1 両の手に息吹きかけし余寒かな まさき すずらん
1 家守る厨の余寒ゆるまざる 果林
私の選んだ一句
水温む男に似合ふ笑ひ皺 パンの耳 世の中不況リストラ倒産男には辛い時代になりました。その上戦争も始まりそう。せめて水温む季節に優しい男の笑い皺を愛でていたいですね。好きな句です(みずき)。

この句の肯定的なところが好きです。季語の斡旋も効いていると思いました。泣いて暮らすより笑って。その皺もきっとうつくしい気がします(果林)。

年を重ねた男の皺ほど魅力的なものはないなと。しかもそれが笑顔の皺だとなお素敵かな。春めいた季節の暖かい穏やかな皺に惹かれました(手毬)。
見送らぬ手を振らぬ父余寒なほ 果林 あまりの寒さの為に部屋は言うに及ばず、孫が帰るのに外にも出てこない、おじぃちゃん (おさむ)。
春の夜の三角定規尖り出す 果林 非常に感覚的な句で、なぜと言われても判らないかも知れない、それが面白いと思いました(パンの耳)。
古刹なる梅支える杭苔むして 和泉 由緒ある梅ノ木がその古さの証明のように支え木にコケが生えている、名の知れた梅を尋ねるとどこでもこんな風景が目に入ります、梅の句ですので苔むしている支え木が不自然でなく読めます(静歩)。
川波の煌めきて今朝寒明けぬ 洋子 作者の季節感覚が冴えている句と思います。立春の思いが伝わって来る、カ行音が心地よい(可不可人)。
雛の前いくつの春の過ぎ行ける 陽炎 季重なりの句ですが雛を飾るたび、自分の来し方をいつも考えている自分がいます。感慨を素直に詠んであり、季重なりがかえって効果を出しているように思います(夕花)。
拍手受け老いの完走息白し 洋司 走ること自体が大変だのに、完走とは!老いの身としては、異種の老人の出現のようにも思われて・・・(久須夜)。
声低き妻の電話や余寒かな 静歩 電話でヒソヒソ話をする妻。もしかすると妻にとって自分が粗大ゴミなのかも・・・・。対岸の火ではありません。そうした場面を考えると、ぞっとして寒気が増します(洋司)。