平成15年10月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
6 縦横に水路ある町十三夜 夕花 あきこ 手毬 まさき ゆうたんのポーポ
洋司 244
4 十三夜堰を落ちゆく光かな 暖流 手毬 竹峰 夕花 洋司
3 掬っても零してもひかり秋の水 夕花 陽炎 暖流 春雪
3 朝寒や二杯目は濃くカフェオーレ 手毬 腕白 まさき 暖流
2 人来ると人になびくや花芒 洋司 みずき 晶子
2 故郷を呼ぶ汽笛あり秋の風 手毬 みずき 竹峰
2 女三人大弁当の紅葉狩 洋子 おさむ 静歩
2 はらわたは人生の味塩秋刀魚 暖流 おさむ 晶子
2 駆け落ちの初の夕餉に秋刀魚焼く 腕白 洋子 244
2 病室にかがやきをすこし青蜜柑 陽炎 あきこ ゆうたんのポーポ
1 白萩や涼しい顔で産み終わる みずき 陽炎
1 ゐのこづちつけて戻りぬ散歩犬 陽炎 腕白
1 爽やかや孫の片言の電話聞く 洋子 静歩
1 朝明けの襖に若ききりぎりす 竹峰 洋子
1 素足なりいらか踏む音秋たしか しおみ 春雪
1 嬰児の頬に秋の陽惜しみなく あきこ 夕花
得点 兼題 「柿」 作者 戴いた人
4 柿一つ胸の内なる灯りかな みずき あきこ 陽炎 晶子 暖流
4 これからは二人の余生熟柿吸ふ あきこ みずき 竹峰 静歩 洋司
2 早々と絵手紙で柿送らるる 洋子 ゆうたんのポーポ 244
1 柿日和しみじみ悔ゆる親不孝 暖流 夕花
1 青柿を叩き落として嵐去り 腕白 春雪
1 てっぺんに夕焼け色して木守柿 陽炎 腕白
1 次郎柿向かふに荒るる日本海 春雪 手毬
1 幼子の棒でとどかず木守柿 まさき 洋子
1 虫食いの柿無差別に大地撃つ 静歩 おさむ
私の選んだ一句
はらわたは人生の味塩秋刀魚 暖流 秋刀魚の腹わたは最高の栄養がある。人生も最高でありたい、いやあつた(おさむ)。
人来ると人になびくや花芒 洋司 風にさやぐ薄は何処か人待ち顔の風情です。お月見に供える薄も華やかですがそれが終わると季節も寂び寂びとしてきて何処か人恋しい季節になります。そんな感じが出ています(みずき)。

難しいことは言わず、しかしすすきのたおやかさを美しく言い表していると思います。なびくという言葉に優しさを覚えるのです(晶子)。
次郎柿向かふに荒るる日本海 春雪 日本海はまだ見たことがないのですが〜柿の穏やかな茜色と、日本海の荒波白波の対照が巧みに感じられました。とて素直な写生句ですが、好感が持てます(手毬)。
白萩や涼しい顔で産み終わる みずき 事もなげに『母』になってしまわれたたおやかな女性の姿が、少しの風にもこまやかに揺れる風情でいながら、ただそれだけではないように思える白萩とぴったり重なります。「萩」をこのように詠まれたことにとても新鮮な感じがしました(陽炎)。
縦横に水路ある町十三夜 夕花 木曽路を歩くと、いろいろな出会いがある。奈良井宿も思い出の地である。水路が縦横に・・・、そして、せせらぎに月の光が。思い出の光景が目に浮かぶ。素敵な句を拝見しました(まさき)

月明かりの夜道を水路沿いに歩いている。どこをどう歩こうとも水面に月が写る。ある時は月をお供に、ある時は月に供して歩く。風情を楽しむことの贅沢さ、自然と戯れることの「やさしさ」・・、心に安らぎを頂きました(洋司)。
柿一つ胸の内なる灯りかな みずき 作者の胸中に点る一つの灯り。一顆の柿のような小さな灯り。柿色のほのぼのと暖かい灯り。その光源は何なのでしょうか。おそらくは、人と人との心がふれあうとき、おのずから発する柔らかい光。ふと、そんなことまで考えてしまう、人間賛歌。こころに染みる俳句です(暖流)。
十三夜堰を落ちゆく光かな 暖流 今年の十三夜は素晴らしい月が見えました。月明かりであたりが明るくなったほどでした。私自身、この明るさをどう17文字にしようか悩みましたが、この句、お見事です。光が堰を落ちてゆく、想像しただけで、、参りました(夕花)。
駆け落ちの初の夕餉に秋刀魚焼く 腕白 この様な物語のある句を自分も作りたいとかねがね思っているのですが難しくて出来ません。生臭い駆け落ちでなく、南こうせつの唄う「神田川」の世界すら思わせてくれる清らかな駆け落ちを感じさせてくれました(244)。
これからは二人の余生熟柿吸ふ あきこ 熟柿吸ふ、ということ、両手で柿を持って唇をとがらせるしぐさは誰もが同じです。夫婦で同じしぐさをしているその光景を想像してみますと、二人の余生、であることが納得できます。説得力のある人生賛歌であると思いました(洋司)。