平成15年12月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
5 湯豆腐や角の取れたる妻の声 手毬 大上 竹峰 春雪 陽炎 静歩
4 食う家族なくて今年も柿を干す 244 手毬 春雪 洋子
3 恋鹿の逞しき影森に没す 大上 みずき 晶子 陽炎
2 心とは優しき字なり冬珊瑚 晶子 和泉 夕花
2 思ひ出の孫の手形や障子貼る 春雪 おさむ まさき
2 短日や栞はさみし日本地図 手毬 あきこ 夕花
2 もう少し待てば日の射す石蕗の花 陽炎 あきこ 暖流
2 今生の祈りは深きクリスマス あきこ 手毬 洋司
2 咳すれば揺り椅子ぎこちなく揺るる 暖流 晶子 洋司
1 ワイパーを目で追ひ助手席での秋思 洋司 竹峰
1 大根の干したる足を園児なで まさき
1 吹き割りの滝に流れる山紅葉 静歩 和泉
1 冬紅葉またすれ違う同じ猫 夕花 まさき
1 催促の声も昔と芋を刺す 瓢六 おさむ
1 みちのくの落葉は雪のごとく積む 暖流 可不可人
1 焼き芋をお手玉のごとして冷ます 洋司 暖流
1 一陣の落ち葉しぐれに打たれおり 大上 暖流
1 秋祭り女御輿の足揃い 静歩 大上
1 初冬やぴしりと打ちし足袋の爪 竹峰 静歩
1 喪の便りけふも一通師走月 春雪 可不可人
1 約束の二つは多し冬の霧 夕花 みずき
1 ボーナス日自分自身にありがとう 和泉 洋子
得点 兼題 「焼き芋」 作者 戴いた人
2 境内に芋焼く跡や禅の寺 洋子 手毬
2 手際よく新聞くるりと焼藷屋 手毬 春雪 夕花
2 焼き芋や父と拓きし畑浮かぶ 大上 おさむ 晶子
2 焼芋に笑みもこぼして湯気の中 陽炎 まさき 洋子
2 街角の焼き芋売りの無口にて 244 可不可人 陽炎
1 焼き芋の金髪の掌にすっぽりと 晶子 みずき
1 「焼芋」の声止まりけり路地の裏 あきこ 静歩
1 焼き芋屋故郷恋しく呼び止める みずき 洋司
1 売り声はテープにまかす焼芋屋 静歩 大上
1 焼き芋のにほひに子らの起き出づる 春雪 あきこ
1 石焼芋冷まさぬやうにひしと抱く 暖流 竹峰
私の選んだ一句
焼き芋や父と拓きし畑浮かぶ 大上 戦後の食料難の時、荒地を父が開墾して薩摩芋を植えて皆に食べさせてくれた飽食の今を鬼籍の父はどんな思いで見ているのかな(おさむ)。

父と拓いた畑はきっと沢山の苦労があったのでしょう。すらりと云っても芋の甘さのようなものではなかったと思いました(晶子)。
約束の二つは多し冬の霧 夕花 約束ごとをしても一年一年が当てにならない、歳になってしまった。二つの約束なんてとんでもない。冬の霧と相まってどんな約束なのか興味をそそられる。冬の霧が良く効いていると思います(みずき)。
街角の焼き芋売りの無口にて 244 都会の片隅で焼き芋を売る人の、これまでの来し方を想像させます。私は何故か露天商人が好きなんです(可不可人)。
湯豆腐や角の取れたる妻の声 手毬 湯豆腐の暖かさが心身に少しずつしみ渡り何か気難しいことが、あったのか言葉じりに突っ張ったものを感じさせた妻の声がマロ身を帯びてきた。こちらも酒が回り始めトロントしてきた。いつもの和の世界がうれしい(大上)。
焼き芋のにほひに子らの起き出づる 春雪 焼き芋の句ではみなその様子が目に浮かび面白いと思いました、この句は子らを起こしてしまった焼き芋の美味しそうな匂いが伝わってきます(あきこ)。 
境内に芋焼く跡や禅の寺 洋子 「焼き芋」の季題で、この句だけ視点が違っていたようです。禅寺の焚火跡に注目し、焼き芋の季語に持っていった。お見事だと思いました(手毬)。

昨年禅寺に行った折、修行僧が、寒い朝足袋も履かずにはだしで、庭を掃き清めるところを見て、あの落ち葉でお芋さんを、「焼いたらほっくりして、おいしいだろうね」とか言う会話になったのを、思い出させてくれた俳句でした(紫)。
吹き割りの滝に流れる山紅葉 静歩 吹き割の滝は、瀑布ではありません。水の重なりがテーブルの上をぬぐうように集められて流れ落ちます。水は装いの山を映し、山そのものが吸い込まれるようでしょう(和泉)。
食う家族なくて今年も柿を干す 244 解ります。抛って置けませんしね。それが、戦中派の根性なのです。少人数の家族となっていても。「勿体無い」が亡き母の口癖だったのですから(春雪)。
心とは優しき字なり冬珊瑚 晶子 本当にそうですね。 よく見ると心という字は心臓の形をした不思議な字ですね。あらためてながめています。 作者はいつ、どんな状況でこう思われたのでしょう。そして、この季語を選ばれた理由も聞いてみたいです(夕花)。
もう少し待てば日の射す石蕗の花 陽炎 石路の花というと儚げでなおかつ何かに毅然と耐えているような印象があります。 (もう少し待てば,日の射す) 今は何かに耐えているけれど、明るい日々は間近に近づいている。これは作者が自身に向けて励ます言葉かもしれませんね(暖流)。