平成15年 秋の入選作
南 秋草子 選
爽やかや孫の片言の電話聞く 洋子
狭山路に高き空あり鳥渡る 静歩
これからは二人の余生熟柿吸ふ あきこ
秀逸 サングラスして人妻のごとき妻 暖流
倒されてなお天を指す秋桜 静歩
家を売る騒ぐこころに虫の声 和泉
久々に訪ねし母の家涼し 244
三対二球児の礼の涼しさよ 竹峰
水割りのパチッと鳴りし夜長かな
縦横に水路ある町十三夜 夕花
嬰児の頬に秋の陽惜しみなく あきこ
1本の指でキーボード打つ夜長 洋司
土いじり妻と二人で秋惜しむ 春雪
佳作 棟上の鑿の光や天高し 竹峰
大西日座敷の遺影眩しかり 洋子
風の盆果てて八尾の坂明くる 洋司
殿(しんがり)は鉢巻の爺茸狩り 晶子
息はずみもぎたて胡瓜届ける子 洋子
世話人は二代目という夏祭り 静歩
畦道のイヤホーンはずす虫の夜 まさき
背に重き嬰児(やや)の眠りや稲の花 手毬
では又と跡絶えし文や秋の夜 竹峰
どの背にも秋風乗せて通し鴨 あきこ
球児去り残れるはただ秋の空 陽炎
一湾の風を集めて宿涼し 洋司
夕涼や味噌汁の味すこし濃く 陽炎
事務員の襟の白さや秋日和 竹峰
十三夜堰を落ちゆく光かな 暖流
人来ると人になびくや花芒 洋司
秋の空恋の行方を誰も知らず あきこ
ゐのこづちつけて戻りぬ散歩犬 陽炎
朝寒や二杯目は濃くカフェオーレ 手毬
吾ひとり秋桜と居る露天風呂 洋司
よーいドンちっちゃな靴も運動会 志尾里
この里を訪ふ人もなし柿たわわ 和泉
ペンションは窓の落ち葉も異国風 洋司
広場いま風の遊び場紅葉散る あきこ
柚子ごろり母のお手玉ひいふうみい 手毬
穴惑い影曳いてゆく哀れさよ みずき
散る紅葉背にして急ぐ道普請 洋子
芒原人も方位も失ひぬ 陽炎
残菊や古き暖簾の蝋燭屋 手毬
積丹の海慟哭す十月尽 夕花
秋晴や屈伸運動二三回 竹峰
秋惜しむこころを詰める旅鞄 暖流
ゆく秋や家々の灯のあたたかき 陽炎
紺屋来て上がりかまちに秋惜しむ 晶子
行く秋や微かに笑ふ仏たち あきこ
行く秋や小さき陽だまり老い一人 洋子
行秋にこころ侘しく膝をだく 志尾里
飼い犬の蚤を取りつつ秋惜しむ 244