平成15年 春の入選作
南 秋草子 選
拍手受け老いの完走息白し 洋司
遠足の弾み伝へてリュック行く 陽炎
げんげ編む土の匂ひを少し混ぜ 手毬
秀逸 恋猫の舌の届かぬ傷みかな 暖流
人住まぬ二階に音のして余寒 洋司
人はみな不揃いで良ししゃぼん玉 夕花
薫風に子と廻し居るフラフープ
初夏の光ごと飲む朝の水 暖流
蓬餅勝手口よりお福分け 静歩
薫風に糊きかせたるシーツ干す
佳作 川波の煌めきて今朝寒明けぬ 洋子
新薬に希望をつなぎ花を待つ 洋司
卒業子街に出づればただ笑ふ 洋城
春陰や棺に最後の釘を打つ 静歩
春光へ回転扉押して出る 夕花
幼子とつないだ手と手春めきぬ 志尾里
老眼鏡汚れ気になる余寒かな 244
手袋を失くして後の余寒かな 陽炎
硝子戸の今朝の余寒を拭ひけり あきこ
花の京今宵は時のゆるやかに 陽炎
鍬にぎる無骨な腕に春の風 まさき
偲びゐる亡父の半世春障子 久須夜
水温む昨日来し友今日尋ぬ 洋司
単線の八高線や山桜 静歩
伊予桜明治の男の息吹あり 和泉
春かもめ空あるごとく海もあり みずき
草摘むや観音詣での道すがら 久須夜
真新しリュクサックや遠足児 静歩
伸び縮み園児遠足保母の声 久須夜
今朝晴れて遠足の子の顔ゆるむ 洋子
囀りやようやく覚めし白馬岳 洋城
窓あけて心に五月を溢れさせ 夕花
道祖神並びリンゴの花明り パンの耳
退職の便りのとどく花の冷え まさき
濃き淡きみどり重なり五月来る 陽炎
つばくろも吾も安らぐ築十年 洋司
ハイウェー連なる車山笑う 和泉
睡き午後あさりしづかに砂を吐く 陽炎
春愁やついばむ鶏を見て居りぬ 244
こっぽりの通る茶屋街夕桜 洋司
満開の桜の下にゐてひとり 果林
知らぬ街知らぬ川沿ひ朧月 手毬
ゆったりと刻を知らせる鐘おぼろ パンの耳
つつがなく今日も終わりの鐘朧 244