平成15年 夏の入選作
南 秋草子 選
妻の掌の温もりうれし青嵐 洋城
手花火に見知らぬ顔のまじりをり 陽炎
炎天に残り少ない老い曝す 洋司
秀逸 窓を開け心も開けて大昼寝 洋司
今日もまた無事に暮れゆく冷奴 竹峰
草をとる夫に寄り添い草をとる 洋子
梅雨じめりたたいて開ける襖かな ポテト
贈られし風鈴その人の音で鳴りぬ 洋司
雨意のある風の重さや夏の夕 ポテト
この妻と一蓮托生冷奴 暖流
梅雨晴れて真一文字に傘を巻く 暖流
日傘さすほんの小さき別世界 陽炎
炎天や己の影を掘る工夫 晶子
佳作 老いたれば優しき目尻花あやめ ポテト
万緑に二つの訃報届きたる 和泉
走り梅雨くるりと回す万華鏡 夕花
青嵐白秋堀はすぐ曲がる 洋城
新茶点て久々迎ふる女客 春雪
迷ひ捨てさらりと明日へ更衣 夕花
通勤の目を養わす植田かな 和泉
妻の手を執りて行く橋杜若 洋司
かきつばた近江は水辺より暮るる 暖流
少年の手にデジカメや杜若 まさき
ゆるやかに緋鯉の波紋杜若 竹峰
吹く風にひとしく揺れてかきつばた 陽炎
仕事着のいつ乾くやら梅雨深し 静歩
梅雨寒や早朝の田に老農夫  和泉
朝顔や棒より先の空に伸び まさき
梅雨長しロッキングチェアの鈍き音 洋子
村ひとつ閉込めてゐる男梅雨 竹峰
カーテンを一気に開く夏の朝 ポテト
子に遺す物などなくて冷奴 夕花
ねじり花一輪残し芝を刈る まさき
扇子より団扇の似合う京女 春雪
ビール園にぎやかな顔つらなりて 和泉
青春の恋もビールもほろ苦き あきこ
ビール飲み俳諧談義声高に 春雪
夫に注ぐビールの手際慣れにけり 洋子
強力のビールの樽に道ゆずる まさき
片陰を母に譲れる娘となりぬ 洋司
夕端居母といふ字の重さあり 手毬
駒下駄の慣れぬ娘の盆踊り 静歩
はにかみて小さき手土産娘の帰省 洋子
茄子汁に今朝も健康祈りつつ 洋子
帰省子に部屋明渡し花活くる 春雪
炎天やヤヤのむずかる昼下がり ポテト
炎天を父より老いし母の行く みずき
炎天や泥に汚れしヘルメット 手毬
ハーケンの谺丁丁炎天下 竹峰
炎天や世の音までも焼き尽くし 陽炎
分譲地一軒建ちし炎天下 244
炎天の駐車ハンドル火の如し 静歩