平成14年 冬の入選作
南 秋草子 選
一県の水貯えて山眠る 洋司
豊作の藁の青さの注連をなう 244
信楽の狸の粋な赤マフラー 洋子
秀逸 煮凝りや言葉少なき老夫婦 244
水鳥や呉越同舟餌をあさる 静歩
着膨れて尖りたる風まるく受く 暖流
算盤の九が並ぶごと吊るし柿 洋司
熱燗や言葉しだいにほぐれゆく あきこ
マフラーの一目一目のあたたかさ 暖流
マフラーも思いも風に翻す あきこ
わだかまり消えて長湯の冬至かな まさき
病む心妻に隠して障子貼る 洋城
親に似し妻の猫背や冬日向 洋城
駆ける子の風より軽し早春賦 夕花
佳作 取り入れし毛布担げば日の重さ 手毬
朝の茶を両手でつつむ十二月 ポテト
喘息の発作苦るしき夜寒哉 静歩
身に降りしもの諾ひて聖誕祭 あきこ
白壁をさらに白くし冬陽さす 洋子
マフラーを解くや笑顔のあらはるる 陽炎
襟巻きの別れ行く人足早に ポテト
襟巻きに寡黙さ包み父帰る 洋司
マフラーに気持ち半分埋めゆく 手毬
颯爽の二文字が好きマフラー巻く 夕花
転職の数ごと賀状の数増えて 洋司
紅をさす緩きむなもと柚湯の香 竹峰
年賀状手書きの言葉ひろい読む 洋子
子に破魔矢抱かせて高く肩車 暖流
園児バス見送るママの着膨れて すずらん
枯野きて手に暖かき缶コーヒ
母の味受け継ぐ義姉の雑煮かな 洋司
初喧嘩雑煮レシピに妥協あり しおみ
はなれ住む子等がそろいし雑煮椀 ポテト
初孫の名も書き祝う雑煮箸
初孫の分も揃えし雑煮椀 すずらん
三世帯いつしか雑煮嫁の味 静歩
鎌形の月を昇らせ雪祭り 和泉
旅終へて外すつめたきイヤリング 陽炎
悴みし手に鉛筆の硬さかな 手毬
軽装の足かろやかに四温晴れ 洋子
はいどうぞちいさき手にもお年玉 志尾里
いのちあるもの抱きつつ山眠る 陽炎
山眠る分校の鐘聞きながら 洋司
地の温みふところに山眠りけり あきこ
鉱脈を蔵して深き山眠る 夕花
高速道いだきて山の眠りけり 洋子
杣が炊く煙一筋山眠る 244