平成16年1月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
7 棄て舟の浅きかたぶき初氷 竹峰 可不可人 陽炎 春雪 和泉 静歩
洋子 夕花
5 ランナーに触るるばかりに破魔矢振る 春雪 みずき おさむ 竹峰 手毬 ,紫
3 沖暗く古き障子を閉じる音 大上 あきこ 可不可人 244
2 ありがたくただありがたく日向ぼこ 洋司 まさき 晶子
2 雪吊りの縄緩みなし禅の寺 244 大上
2 水やればささやきもする桜草 さっちゃん まさき 洋子
2 大利根の真つ向に富士空つ風 夕花 手毬 244
2 初春の手話やはらかき二人かな 手毬 陽炎 静歩
1 就職の内定とどく旅始 まさき おさむ
1 言い足りぬ言葉に悔いて悴めり あきこ 和泉
1 荷を降ろす子の逞しく年暮るる 手毬 竹峰
1 着ぶれて着ぶくれた児の子守かな 静歩 洋司
1 兵派遣万葉妻に想い寄せ しおみ あきこ
1 注連縄も少しゆるみて三日かな 陽炎 大上
1 しがらみをまるく受け入れ賀状書く 洋司 春雪
1 初釜はウエッジウッドでモカブレンド 和泉 みずき
1 目隠しの冷たく小さき手を愛す 大上 夕花
1 老犬の足を刺しそな霜柱 洋子 晶子
得点 兼題 「初風呂 初湯」 作者 戴いた人
4 初風呂をあふれさせても一人の湯 244 竹峰 晶子 洋子
3 掌の過去を沈めて初湯かな 夕花 大上 手毬 244
2 出勤の子に立ててやる初湯哉 静歩 陽炎 夕花
2 変わりなくあることの幸初湯かな 陽炎 まさき 静歩
2 昼の日のなかに溢るる初湯かな 竹峰 和泉 洋司
2 幼子の祖父似喜ぶ初湯かな 春雪 あきこ 可不可人
1 金時山間近に見据え初湯かな  和泉 みずき
1 溢るたび朝日きらめく初湯かな 大上 春雪
1 デジカメにおさまり嬰の初湯かな あきこ おさむ
私の選んだ一句
    ランナーに触るるばかりに破魔矢振る 春雪 この頃思うに「俳句をはみ出さんばかりの俳句」に妙な新鮮さを感じてしまうのです。この句も何か元気を感じてしまって見過ごせないところに惹かれたのかも知れません(みずき)。

箱根駅伝の応援でしょうか? 触れるばかりに振る破魔矢が見えるようです。応援しようという気持ちがひしひしと感じられ活気ある句ですね。破魔矢を巧く小道具に使っておられます(手毬)。
    就職の内定とどく旅始 まさき 社会への旅立ちも決まった、この旅も実り多い、楽しい旅にしたいそんな思いが伝わる句です(おさむ)。
    注連縄も少しゆるみて三日かな 陽炎 元旦からの何とは無い気持ちの改まりを感じていたのが三日ともなれば、ややいつもの日々に戻って来る。その目で見ると注連縄さえどことなく緩んで来たように見える。自己の心の在りようが、投影された面白く俳味のある佳句だと思います(大上)。
    幼子の祖父似喜ぶ初湯かな 春雪 お孫さんの日々の成長をみながら誰に似てきたかしら、やっぱりおじいちゃん似ね〜なんて思っていらっしゃるのですね。似てくれる嬉しさよ、初湯とおさなごの取り合わせ、良くあっています(あきこ)。
    棄て舟の浅きかたぶき初氷 竹峰 万葉集の叙景歌を思わせる句です。どのように表現すればいいのか、私の心のどこかが反応しています。さりげない風景を見つめる俳人の作句に感動を覚えます(可不可人)。
    溢るたび朝日きらめく初湯かな 大上 文字通りの初湯に浸れる幸福感。浴場で確かめ得る初日。04年の元旦、三が日は、全国的にほぼ温暖だった(春雪)。
   ありがたくただありがたく日向ぼこ 洋司 日向ぼこを穏やかな心でただそれだけで受けとめる、と言うことがその姿勢が羨ましく美しいと思いました(晶子)。
    出勤の子に立ててやる初湯哉 静歩 兼題句、初湯ではやはり御家族、とくにお孫さんと初湯を詠まれた句が多くほのぼのしましたが、そんな中で新年なのに出勤する子に初湯を立てる、という句、親の細かい愛情が伝わってこちらまでご苦労様、と声をかけたくなりました。 お仕事頑張ってください(夕花)。
    沖暗く古き障子を閉じる音 大上 冬の日本海側の小さな人の気配すらない部落を歩いているとガタガタピシャリと障子窓の閉める音がした。息をひそめて生きている浦の風景が浮んできました(244)。