平成14年2月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
4 一人だけ通れるほどに雪を掻く 洋子 京子 和泉 洋城 果林
4 一輌の半島列車冬ざるる 洋司 静歩 なぎさ 洋城 洋子
4 手火鉢に祖父の自慢の煙管痕 手毬 静水 まさき 久須夜 洋司
4 文旦を添へて句集の返さるる 手毬 静水 あきこ 弓子 和泉
2 こたつ出る子供は小さな穴作り 京子 おさむ 244
2 思い切りショートカットに春隣 洋子 手毬 244
2 寒紅梅一輪にして揺るぎなし 暖流 なぎさ 果林
2 淡雪を顔にうけつつ露天風呂 ポテト 京子 弓子
2 旅の夜蒲団に座しし明日何処 ハシケン 手毬 おさむ
2 ほろ酔へば胸に小さき雪崩かな 果林 あきこ 暖流
1 しまひ湯の足より伝ひ来る余寒 果林 久須夜
1 昨日今日厨明るき四温光 あきこ 洋子
1 反り返る鰰煮立ちたる土鍋 ポテト 静歩
1 暗闇の己が姿に豆を撒く まさき 暖流
1 凍雲の町早やばやと夕灯り 京子 まさき
1 赤札が目立つ商店春隣り 静歩 洋司
得点 兼題 「お降り」 作者 戴いた人
3 子の発ちて温もり残る蒲団かな 果林 手毬 まさき 和泉
3 むつかるを蒲団のままに抱き上げる 洋城 あきこ 静歩 久須夜
3 上席は花に譲りて蒲団干 ばぎさ 弓子 暖流 果林
2 腰かがめ引きずりて母蒲団干す まさき なぎさ 洋司
2 嫁ぐ朝に父の蒲団を干して出づ 暖流 静水 244
1 つかの間の晴れ間うれしく蒲団干す 京子 おさむ
1 息使い蒲団の動きにあらわれて 和泉 京子
1 居らぬ子の布団で猫の丸くなり 手毬 洋城
1 布団干す家はあったかそうに見え 雪兎 洋子
私の選んだ一句
むつかるを蒲団のままに抱き上げる 洋城 目覚めてむつかる児をよしよしと抱き上げる。寒いので掛け蒲団のままくるんで、いきいきと無理なく上手に詠んでおられます。蒲団が冬の季語 というのも効いていますね(あきこ)。
子育てに慣れてきた母親が目がさめて泣いている子を子供布団ごと抱き上げてあやしている光景が目に浮かびます、きっと寒い日だったのでしょう(静歩)。
つかの間の晴れ間うれしく蒲団干す 京子 待ちに待つたこの晴間 さぁ 干すぞ? 主婦の感覚ですな(おさむ)。
思い切りショートカットに春隣 洋子 爽やかですね。実に気持ちがいいです。女性にしかわからないかもしれませんが思い切りという出だしに惹かれました。春隣だからこそ、ショートカットなのです(手毬)。
息使い蒲団の動きにあらわれて 和泉 見たままを素直に句にしているのがいいと思います(京子)。
文旦を添へて句集の返さるる 手毬 俳句がとりもつ縁(えにし)でしょうか。さりげなく添えられた文旦の金色が、句集の素朴な色合いを偲ばせます。ケーキでもなく、高価な和菓子でもない、自然の恵みそのままの姿が、交情のこまやかさを語リ尽くしてくれました(弓子)。
手火鉢に祖父の自慢の煙管痕 手毬 生前、晩年の亡父が何時も凭れ掛かっていた長火鉢と、愛煙葉煙草の銘柄【霧島】とを彷彿とさせてくれて、他人事とは思えず、涙を禁じ得ない(久須夜)。
暗闇の己が姿に豆を撒く まさき 人は誰しも心の中に鬼を棲まわせてゐる。と同時に天使も宿している。両者の拮抗は果てしなく続き、人に依りてその優劣は覆る。作者は心の暗闇に立つ、己が姿の鬼を幻視して、豆を撒き、自らを浄化せむと願う。暗澹たる心象風景に、豆が軽快な音をたてて転がり落ちる。節分の節とは明と暗か。ともあれ、ここからは天使の領地。作者の魂が安寧の光に満たされることであろう(暖流)。
寒紅梅一輪にして揺るぎなし 暖流 一輪だけ挿された寒紅梅の凛とした姿。紅梅に寄する思い、作者の心模様、共に想像されて美しい句だと思います。このようにスッキリとした美しい句を詠めるようになりたいと憧れます(果林)。