平成14年3月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
3 大けやき囀空に放ちけり 夕花 手毬 京子 果林
3 春愁や一揆の里の濁り酒  みずき 洋司 静歩 あきこ
2  草萌や父似を恥じし日々のあり 果林 あきこ 暖流
2 春愁のほぐれてゆけり露天の湯 あきこ 手毬 洋城
2 石垣のすき間の春や若緑 京子 静歩 まさき
2 母に似しひなを終わりに納めけり ポテト 洋城 久須夜
2 春寒や田圃隔てて道問へり 244 京子 まさき
1 せせらぎに光有りけり蕗の薹 ポテト 洋子
1 笹鳴きや補聴器の音上げて聞き 静歩 夕花
1 薄化粧門出も近し雛納め まさき みずき
1 不器用に生きてきしひと梅咲けり 果林 夕花
1 啓蟄や息子に嫁の来る便り 洋司 おさむ
1 喜びはつくるものとし桜餅 あきこ 洋子
1 デジカメに囲まれている寒牡丹 静歩 洋司
1 わがために今日手作りの雛かざる 京子 おさむ
1 想ひ出は封印が良し桜餅 洋城 暖流
1 校門の高くてやさし卒業日 洋司 みずき
1 春の夕母娘の会話湯気のなか まさき 久須夜
1 別れ霜学生服の黒鈍く 手毬 果林
得点 兼題 「水温む」 作者 戴いた人
7 少しずつ遠出の母や水温む 果林 洋司 手毬 静歩 あきこ
まさき 洋城 洋子
2 水温む臥せたる友の目の光り 244 みずき 久須夜
1 蹲の音やはらかに水温む 手毬 夕花
1 今は昔源兵衛渡し水温む 洋城 暖流
1 主婦ならばこその嬉しさ水温む 洋子 おさむ
1 枯れ枝のかげを写して水温む 雪兎 京子
1 水温む釣竿肩に影不動 まさき 果林
私の選んだ一句
少しずつ遠出の母や水温む 果林 暖かくなり病気がなおって少しずつ遠出ができるようになった母親か、年を重ねた母親が暖かくなるに連れて遠出をするようになったのか。いずれにしても母親を見る暖かい子の目がうらやましい(静歩)。

春となり近所の庭にも花が見られるようになった。足の弱い母も手押し車を使い、一歩、一歩と足を進める。「転ばないで!」...。そっと母の動きを見つめる。そんな情景が浮かぶ。母への思いがうかがえる良い句である(まさき)。
主婦ならばこその嬉しさ水温む 洋子 いくら 全自動洗濯機が出来ても 主婦は水仕事が多い 水暖かくなれば 手の荒れもなくなり 人前でも手を出せる嬉しさよ(おさむ)。
薄化粧門出も近し雛納め まさき 何かの形の門出が待っているのでしょう。お目出度いことに違いはありませんですね。感慨に耽りながら雛を納めている。初々しいお嬢さんの薄化粧・・・・何ともいい風景ですね(みずき)。
春愁のほぐれてゆけり露天の湯 あきこ 愁い事を露天風呂が癒してくれる様子をさらりと見事に表現しておられます。春愁という季語が上手くマッチしていると思いました(手毬)
笹鳴きや補聴器の音上げて聞き 静歩 補聴器を使われていらっしゃるのですね。春の来る音はどれも小さい。笹鳴きを聞くためにボリュームを上げるのですね。何気ない仕種なのでしょうが、ハッとしました(夕花)
枯れ枝のかげを写して水温む 雪兎 池に小さなさざなみが立っていて、暖かい陽射しが感じられる句です。枯れ枝というのが、早春の様子です(京子)。
春愁や一揆の里の濁り酒  みずき 一揆の里と濁り酒のとりあわせ、、、好きな句です。お酒の香りに誘われました(あきこ)。
草萌や父似を恥じし日々のあり 果林 僕には僕にそっくりの一人娘がいる。その娘にもきっと、僕に似たことを恥じた日があったに違いない。思春期の少女の傷つきやすい心は、鏡の中の自分を嫌悪し、その原因である父親を憎悪したのだろう。そんな娘に父親はとまどい、かなしみを禁じ得なかったのだ。父と娘のきずなは柔らかく切ない。いつか大人になった娘は、父を思い出すたびに胸を痛めているはず。僕もまた、あと3日で20才になる娘を思い出した。遥かなる国で、ひとり懸命に生きる娘を思い出した。まったく、何という句だろうか。・・・蛇足に一言。「恥じし」は「恥ぢし」と表記する方がいい。終止形は「恥づ」(ダ行上ニ段)なのだから。(暖流)。
水温む臥せたる友の目の光り 244 病臥する人にこそ、春の陽射しは、万薬に勝る(久須夜)